ランチェスターの法則と科学技術 (覇権について考える その4)

近代戦争は、昔に比べて兵器の性能差が大きく戦果に影響を及ぼす。大量破壊兵器を除外しして、通常兵器レベルで考えてもそう。

なぜかというと、どんどん機械化や自動化が進んで、兵器の運用や使用に、人が介在する余地がなくなってきたから。

戦闘機の照準を人が目視で合わせる時代じゃなくなった。機械による自動照準や自動追尾ミサイルのほうが絶対当たる。

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戦争における戦果で理想的な姿というのは、こちらの被害が最小限で、相手の被害を最大限にすること。

これまでは自軍の圧倒的な兵力差、または兵力差をがおきるシチュエーション化での戦場設定を考えればよかった。有名なランチェスターの法則が働く戦争。

ランチェスターの法則とは、英国人ランチェスターが第一次大戦における飛行機の損害状況を調べて得た法則。

一騎打ちの法則と呼ばれる、一対一の戦闘では必ず武器の優秀な側が勝利するという第一法則と、集中効果の法則と呼ばれる、攻撃力は兵力の自乗に比例するという第二法則からなる。

一言で言ってしまえば、「武器の性能が同じであれば、必ず兵力数の多い方が勝つ」という法則のこと。

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だけど、この法則はきちんと戦闘が成り立つ世界での話。

イラク戦争で見られるように、圧倒的な兵器の性能差がある場合は全然別。

イラク軍がいくら100万の兵力を揃えて、兵力自乗の法則を利かそうとしても、この法則は、

・「相手を目視または補足」できて、
・「こちらの攻撃射程内に相手がいない」と無意味なもの。

イラク戦争では、連合軍の精密誘導爆弾が威力を発揮した。爆撃機はイラク軍の射程外からミサイルを射出して、離脱し飛び去っていった。誘導された爆弾は寸分違わず目標に命中し、イラク軍は一方的にやられるだけだった。

アメリカは空軍力において、ほとんどランチェスターの法則の外にいる。

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だけどイラクをさんざん空爆したあげく、いざ占領してイラク駐留してみると、今度は苦しむことになった。イラク駐留軍はテロの脅威にさらされ続けている。陸軍として、直接派兵された兵士はいくら最新兵器で武装したとしても、テロの標的として補足されることには変わりない。透明人間にでもなれない限り。

陸軍は、まだランチェスターの法則の中にいる。今のままでは、いつまでたってもイラクで陸軍は勝てない。

兵器の性能や新兵器を開発する技術力が、戦場の勝敗の殆どを決める近代戦では、武器弾薬そのものを売却することはそれほど怖くはない。兵器開発技術や技術情報を売り渡す方がよっぽど怖い。

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