縁起の縦糸と横糸(縁起のレイヤーが結ぶ世界 その3)


縁起のレイヤーでは、縦糸が時間軸で繋がる縁だし、横糸は空間軸で繋がる縁になる。これを国に当てはめれば、縦糸の長さは国の歴史になるし、横糸の長さは国土の広さにあたる。

この縁起のレイヤー構造を作っている縦糸と横糸で通信されるデータには違いがある。

縦糸は時間軸の縁起の糸だから、後世に伝えるべきもの、伝統とか風習とか後世に残さなければならないと思っているものを代々伝えていく。それによって歴史と伝統が伝えられ、残されていく。

これに対して、横糸は空間軸の縁起の糸だから、これが切れると国の秩序が維持できなくなる。だから横糸で伝えられるものは、人間関係の調整とか、国内法とか、秩序を維持するための情報が伝達される。

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国が国として成り立つためには、縁起の縦糸と横糸がしっかりと編みこまれて繊維をつくって、簡単には破れない織物にしなくちゃいけない。

横糸は国の秩序を支えるもの。だから政府は国民の生命と財産を守ることで、税金を払ってもらう、いわゆる「社会契約」を結ぶことで、国としての統制を保とうとする。

だけど、あくまで「社会契約」だから、たとえば福祉政策や公共事業なんかがうまくいかないと、国民の意識は国家からどんどん離れてゆく。

昨今の社会保険庁の年金問題なんかは、上位レイヤーの横糸のつながりをどんどん弱くする。あれが続けばだれも、年金積立を払おうとは思わなくなる。年金という社会契約を国が反故にしていると思うから。

それに対して、社会契約ではない方法で国への帰属意識を持たせる、うんと「安上がり」な方法がある。それは縦糸を使うやり方。

縦糸の一方の端をぎゅっと縛ってしまえば、多少横糸が緩んでいても、繊維がほどけることはない。さらに縦糸同士を絡ませてしまえば、横糸すらいらなくなる。

たとえば、建国の精神の崇高さを訴えて、縦糸の一方の端を縛ってみたり、民族の独自性、優位性を強調することで、縦糸同士を絡ませてみたり。

ただし、縦糸同士を絡ませる方法は丈夫ではあるのだけれど、行き過ぎると、ある意味選民思想的になることもある。

だから、成熟していない国や、政治・経済がうまくいっていない国ほど縦糸に頼ることが多い。

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特に歴史のない国が縦糸に頼ろうとしても、建国神話は「神話」なんかではなくて、ただの昔話。「神話」と比べたら求心力には今ひとつ欠ける。どこかから独立しただの、新天地を開拓しただの、といった歴史的事実の羅列は、神話と比べれば安っぽいもの。

ともすれば宗主国だった国を無理やりにでも悪者に仕立て上げて、ナショナリズムを煽ってでも求心力を高めることさえある。極悪非道の悪魔の国から、我々は独立を勝ち取ったのだ、とかなんとか言って。

要は、国民に国への帰属意識を持たせて、国の形状を維持する方法として、縦糸を使うか横糸を使うかの違い。

縦糸を使って、愛国心を持たせることで帰属意識を持たせたり、横糸の政策によって、国家や政府への信頼を勝ち取ったり、国の維持って結構大変。

縦糸も横糸もしっかりしてきめ細やかな繊維は強くて丈夫。だけど世界の国の全部が全部そんな繊維構造で成り立っている訳じゃない。縦糸でも横糸でも国への帰属意識をしっかり持たせることはどの国も望むもの。でもそれは理想形。

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