《不気味の谷》とは、日本のロボット工学者、森政弘東工大・元名誉教授が1970年に提唱した、ロボット工学上の概念。
森・元名誉教授は、人間がロボットに対する感情的反応は、ロボットがその外観や動作がより人間らしくなるにつれて、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。さらに人間の外観や動作と見分けがつかなくなると、再びより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考え、この概念を提唱している。
現に愛知万博では、人間そっくりのロボットが登場した。東西南北の入場ゲートのインフォメーションセンターに立っていた、株式会社ココロが開発した受付ロボットがそれ。
「アクトロイド」と名づけられたそのロボットは質感や動作はもとより表情さえ、人間そっくりで遠目でみたら全然区別が付かないほど。YOUTUBEなんかにも、動画がアップされているけれど、驚くくらいにそっくり。
最近の脳科学の進歩で脳のしくみがだんだん明らかになってきたけれど、自分自身の動作に関する細胞に「ミラーニューロン」という神経細胞群が発見された。
本来、ミラーニューロンは脳の中で自分自身の動作を司る細胞なのだけど、対象の動作を見たときにも反応するという不思議な特徴を持っている。
他人の動作を鏡のように頭のなかに映し出す反応を示すから「ミラー」ニューロン
なんでも脳のなかでは、自分の動作だけではなく、それに近いものを見たときにも反応するようにできているらしい。たとえば、誰かが目の前で食べ物を手でつまむ。すると、自分が自分の手で、食べ物を手でつまんだときに反応する脳内の部位が、同じく反応を示すことがわかってきた。
つまり、人間そっくりのロボットが食べ物をつまむ動作と、そうでないロボットが食べ物をつまむ動作とでは、それを見た人の脳内の反応が違うかもしれないということを意味してる。換言すれば、人間はその「動作」をみて「何々らしさ」を検知して、判断している可能性があるということ。
だとすると、人間そっくりのロボットであるアクトロイドの、その表情も含めた動作をみて、それが人間だと誤認したとしても、少しもおかしくはないのかもしれない。
だけどこれだけでは、不気味の谷現象を全て説明することはできない。ミラーニューロンで説明できるのは誤認の可能性までであって、それを不気味と思う感情との因果関係はまた別の話。

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