文字記号(思考と伝達について その3)

世界中や日本国内でもネットブログで様々な記事がアップされているけれど、その媒体はもちろん文字。文字記号。

文字は記号として伝達媒体として働くけれど、揮発しないし、他の記号にも容易に変換できるから、昔から情報伝達の主役だった。

画像

[Asagi's photo]より


文字は形あるものや、形のないものを文字「記号」に置き換えることで、コミュニケーション媒体の主役を担っていた。

だけど、最初に触れたように、コミュニケーションを行うには、心のかたちを五感で検知できるデータに変換して相手に届けて、その相手がまた五感で受信して心のかたちに逆変換して受け取るプロセスがある。間に文字記号の変換処理が入る。

たとえば、ある人が心に[りんご]を思い浮かべたとする。それを文字として記事に書いたとすると、心に思い浮かべた[りんご]は、言語的知性の働きで文字情報としての「リンゴ」に置換される。

文字情報の「リンゴ」は記事として送信され、その文字をみた人は文字情報としての「リンゴ」を視覚によって捉え、言語的知性の働きで文字情報の「リンゴ」を、その人のコンテクストに基づいた[りんご]として認識する。

双方の変換処理において、そのベースとなるのが、個人個人のコンテクスト。

画像


「リンゴ」という文字情報を見て、赤い林檎を思い浮かべる人もいれば、青林檎を思い浮かべる人だっている。

発信する側が赤い林檎をイメージして「リンゴ」という文字を伝達したとしても、受け取った側のリンゴに関するコンテクストが「青りんご」しかなかったとしたら、当然「青りんご」として認知される。

リンゴという情報が、伝達において、「赤い」リンゴから「青い」リンゴに変容してる。

これでコミニュケーションが成立するかどうかは、文脈とか、話す内容による。

沢山ある果物の中のひとつとしての「リンゴ」であれば、「赤く」ても「青く」ても余り齟齬はないかもしれないけれど、どのリンゴが美味しいのかとかなんて話題であれば、赤リンゴや青リンゴ、はてはリンゴの品種まできちんと区別したほうがいい。

だから文字情報だけでのコミュニケーションにおいては、双方のコンテクストをデータベースにした、変換・逆変換のプロセスが入るから、それぞれのコンテクストにズレが生じないように、なるべく文章には気をつけるべき。

画像



本シリーズエントリー記事一覧
思考と伝達について その1「知性と五感」
思考と伝達について その2「指向性と置換性」
思考と伝達について その3「文字記号」
思考と伝達について その4「日本語は論理的か」
思考と伝達について その5「日本語の表現」
思考と伝達について その6「会話におけるキャラ設定」
思考と伝達について その7「概念の伝達」
思考と伝達について その8「ソムリエの表現能力」
思考と伝達について その9「哲学の文章」
思考と伝達について その10「たとえ話の利点と欠点」
思考と伝達について 最終回「菩提と救済」