無為無策の効用(中国産毒餃子事件について再考 その2)


今の段階でも、日本政府は中国産食品に対して、輸入禁止措置をとることもなく、抗議もなく、対外的には特になにもしない、無為無策の状態にある。

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[Asagi's photo]より


仮にこの無為無策になんらかの効用があるとすれば、国民の自衛意識を促したことと、中国の実態を国民に明らかにしたことだろう。

国民の生命が危険にさらされた、という事態にあって政府レベルでなにもしないということは、国民に自分の命は自分で守れ、と言っているに等しい。現に冷凍食品のみならず、中国産食材や中華料理そのものが敬遠されるという風評被害が起きている。

国民は政府に非難の声をあげることなく、黙々と自衛行動に出ている。このまま無為無策が続けば続くほど、「中国」と名がついただけで、すべて敬遠されていくだろう。

また、この無為無策行動は中国の選択肢を狭める。逆説的に聞こえるかもしれないけれど、今回の事件で、相手にフリーハンドを持たせたことで、かえって中国を追い詰めることになっている。

なぜかといえば、既に日本国内の問題ではないということをほぼ確定させたから。この問題を解決しようとすれば、中国側から解決のための原因の特定と今後の対策を提示しないといけなくなったから。

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[Asagi's photo]より


一説には、今回の犯人は、天用食品を解雇された元従業員ではないかとも、天洋食品側の杜撰な衛生管理だとも言われているけれど、どれにせよ、中国当局は自分の国の問題であることを明らかにして、謝罪し、再発防止策を公表しなくちゃいけない。でなければ日本の消費者は安心して買うことができない。

だけど、中国は自国の食の安全に問題があることを世界に公表したくない。特にオリンピックを控えた今の時期にそんなことが明らかになったら、五輪開催も怪しくなってくる。

となると中国はなにがなんでも、今回の問題について自国の責任を認めるわけにはいかない。日本の責任にして、自分は悪くないと言いたいのだけれど、もうそんなことは、科学的にありえないことが分かってきたから、逃げ道は塞がれている。

中国当局がなにか言っても、そのたびに日本側から科学的・客観的に検証されて否定されるものだから、言い訳すればするほど、自分の首を絞めることになってしまっている。

もう、ごく一部の個人の犯罪だったとして矮小化して処理するしか手がなくなってきた。

ただこの手を使ったとしても中国はまだ苦しい。長年、反日教育をしてきて「愛国無罪」も事実上認めてきたものだから、中国人民は犯人にしたくない。たとえ事実だったとしても。

中国人が犯人だったと公表して刑罰を科して事を収めるにしても、その行為自体が国内感情を強く刺激する。人民の不満が政府に向かうリスクもある。だからたぶん刑を科しても国内には一切報道させないだろう。

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また、千葉県で健康被害を起こしたものと同じ製造日の冷凍餃子を日本生活協同組合連合会が、検査を行わないまま、来日した中国の調査団に譲渡していたことが判明して、中国側での証拠隠滅の恐れも懸念されているけれど、今回の事件に纏わる中国当局の対応ぶりと状況証拠がここまで揃っていれば、かえって不信感をますばかり。

中国も内心はとても苦しい立場にある。アクションを起こすたびに自分の首が締まる。だから、「日本の政府とメディアは、国内の世論をコントロールするように」と、横柄に泣きを入れてきた。もちろん日本のせいじゃない。

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