独立の代償 (チベットについて その2)

チベットは独立を訴えている。無論その意思は尊重すべきであるし、支持すべきものではあるのだけれど、仮に独立できたとして、本当に独立を維持できるのかという問題はまた別にある。

独立国というのはなにも完全な自治を行っているというだけじゃない。外部に対する備えと窓口がなくちゃならない。軍備と外交がそれ。

チベットは天然資源が豊富だし、なによりヒマラヤを擁した水源がある。それは中国にとって、長江の水源にもなっているから、常に水に苦しむ中国にとっては宝の山。

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中国から北朝鮮にかけては、石油パイプラインが走っている。そのおかげで中国はパイプラインを閉めるぞ、と言っていつでも北朝鮮を脅せるようになっている。

それと同じ様に、チベットが独立してしまうと、今度は中国が、チベットに水源を塞き止めるぞ、と脅される立場になってしまう。

もちろん元来穏やかなチベット人がそんな脅しを使うとは思えない。だけど中国はそう思ってはくれない。敵国にされてしまう。

遠交近攻の原則に基づけば、中国は自身の武力からみて、相対的により弱い周辺国は敵国として「勝手に」侵略対象に設定する。

これでは、チベットが仮に独立を果たしたとしても、水源を巡って、やっぱり中国と対立してしまう。潜在敵国としていつも狙われる。

それを防ごうとすると、強力な軍隊が必要になるし、諜報活動も含めた強力な外交組織も要る。経済的負担はいまよりずっと重くなる。

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また、中国ではなくて、心理的に近いインドと協力関係を結んで対抗しようとしても、インドからみたら、チベットは対中国の最前線。国境警備にインド軍を借りるにしても、相応の対価は払わないといけないし、場合によっては、インドの核ミサイルを配備することになるかもしれない。当然中国を今より遥かに刺激するし、返って危険は高まるかもしれない。

だからダライラマ14世のチベット独立ではなくて、高度な自治を求めるというのは実に現実的な考えだと思う。

肝心なのは中国による弾圧を止めさせること。命も文化も。

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