影な総理の威力(胡錦濤主席の訪日について 補追1)

胡錦濤主席の訪日についてのシリーズエントリーの補追として、日本側の対応について検討してみたい。

今回の日中首脳会談で、一部からパンダしか成果は無かったとさえ揶揄される福田総理。なにをしたい、というビジョンもないように見え、はっきり語ることもない。どうしようもないようにさえ見えることもある。

だけど、そのキャラが逆に絶大な威力を発揮している面がある。

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今回の胡主席の訪日に先だって、福田総理はロシアを訪問し、日ロ共同油田開発に合意している。また、多弾頭迎撃MDシステムの導入も決定している。

この二つはとても重要な意味を持つ。もちろん中国に対してのもの。

日ロ共同油田開発は、石油パイプライン問題で日本に有利、中国に不利な合意であるし、多弾頭迎撃MDシステムは、多弾頭大陸間弾道弾(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に対抗するもの。

そこにきて、チベット問題に端を発する中国への人権改善への世界各国からの圧力。

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以前、「中国の世界覇権戦略」のシリーズエントリーの中で、中国の人口攻撃に触れ、日本の対策として、

・エネルギー戦略としてロシアと関係改善を進め、中国と大きく対立しないで、多少の貢物を捧げつつ、EU、アメリカなどの自由主義国家と協調して、中国内部から民主化させていく戦略

・武力攻撃させない為に、圧倒的技術優位を確立する象徴的な兵器を開発・配備する。

の二つをあげたことがあるけれど、今回の日ロ共同油田開発と、多弾頭MDシステムは、ドンピシャにこの戦略と合致している。

中国はソフト、ハード両面から、じわじわと包囲網を形成されつつある。

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今の中国は、食料高騰、環境汚染、エネルギー問題などを抱えていて、それらをなんとかしないと、国が持たないようなところまで来ている。その解決の鍵はみんな日本が持っている。だから日本に泣きついて、すがりつくしかない。

中国からみれば、暗黒の小泉・安倍路線が終わって、ようやくにして日中間の対話ができる環境になった。日本の相手は親中派と目される福田総理。対話のタイミングは今しかない。

実際、今回の訪日にあわせて、中国国内では日本に学べと低姿勢の大量報道をして、事を荒立てないようにしてる。

それなのに、日本は表向きの笑顔の裏で、着々と包囲網を形成してくる。

中国はその動きを非難したくても、相手が福田総理なものだから、表立って口にだせないし、嫌がらせもできない。まったく憎たらしいったらありゃしない。

中国は、福田総理のことを実は「隠れ反中」なのではないか、と疑っているのではないかとさえ。

しかも、福田総理のキャラと日本国内の環境が、また中国にとって最悪。

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福田総理のキャラとその対応は、外から見ていると、何をしたいのかさっぱり分からない「暖簾に腕押し」。日本国内の支持率は政権維持できるかどうかの危険水域。それに加えて自国の官僚からさえ半ば見放され、統制もできていない

いったい全体、福田総理は、本当に日本の権力者なのか。まるで影を相手にしているかのよう。

中国からみれば、国家主席が出て行って日中間のトップ会談をしたいのに、日本から出てくるのは「影な総理」。でも影は所詮影。本当の実力者・権力者と会って打開策を協議したい。影と話をしても仕方がない。いつ退陣するか分からない相手といくら口約束しても、いつ反故にされるか分かったものじゃない。

5月8日に行われた歴代総理との朝食会は、中国にしてみれば、本当の日本の権力者が誰なのかを見つけ、直接交渉をしたかった、もしくは、歴代総理に諸々の合意事項について本当に守って欲しい、とお願いしたのではないか。

中国崩壊要因にもなりえる3大問題、食料高騰、環境汚染、エネルギー問題のうち、今回の訪日で目処が立ったのは、環境汚染とエネルギー問題の半分くらい。

毒餃子がらみで日本向けの食料品輸出が減っているけれど、その分を中国国内に回して急場をしのぐのだろう。いずれにせよ、中国の人口が減るか、食料の増産ができないと厳しい。それも汚染されたものではなくて。

今の中国に必要なのは、独裁者ではなく、真の意味での賢帝なのかもしれない。

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