日中首脳会談引き分けと晒し者になった胡錦濤主席(胡錦濤主席の訪日について 前編)

何しに日本にやってきたのか判らない観のある、胡錦濤主席の訪日。

福田総理に対して、パンダ外交だの、腑抜けだの、色々批判があるけれど、中国サイドからみた、今回の訪日の成否を考えてみたい。全2回シリーズでエントリーする。

画像



『今回の訪日は「暖かい春の旅」だ。両国国民の友情が花開くことを心から望む。訪日は、信頼を増進し、友好を強化、協力を深め、戦略的互恵関係を全面的に推進することが目的だ。』


訪日前の記者会見での胡主席の言葉。

表向きの発言にせよ、これだけでは何がいいたいのか良く分からないので訪日スケジュールを見てみる。


5月6日火曜日
 ・17:30 専用機にて羽田空港到着。
 ・19:00 福田康夫首相主催の夕食会=松本楼(千代田区日比谷公園)にて。


5月7日水曜日
・09:00 皇居にて歓迎式典。天皇陛下への謁見
・10:30 首相官邸にて日中首脳会談
・12:00 日中共同記者会見。日中共同声明署名式
・13:00 御手洗冨士夫日本経団連会長主催の昼食会
・15:00 ホテルニューオータニにて各党幹部と会談
 ・ 15:35 伊吹自民党幹事長
 ・ 16:05 太田公明党代表
 ・ 16:35 小沢民主党代表
 ・ 17:05 志井共産党代表
 ・ 17:35 福島社民党代表

・19:30 天皇陛下主催の宮中晩餐会


5月8日木曜日
・09:00 ホテルニューオータニにて中曽根康弘元首相ら首相経験者との朝食会
・10:00 議長公邸にて衆参両議院議長と会談
・12:00 日中友好団体主催の歓迎パーティー=グランドプリンスホテル赤坂
・15:00 早稲田大学大隈講堂にて講演。
       日中青少年友好交流年日本側除幕式に出席。
・18:00 創価学会の池田大作名誉会長と会談
・19:30 首相官邸にて福田康夫主催の晩餐会


5月9日金曜日
・09:00 ホテルニューオータニにて在日チャイナ大使館員や留学生、駐在員らと朝食会
・10:00 天皇、皇后両陛下にホテルニューオータニへ訪問して頂く
・11:20 JFEアーバンリサイクル施設(神奈川県川崎市川崎区水江町)を視察
・12:30 松沢成文神奈川県知事主催の昼食会
・14:00 横浜中華街や横浜山手中華学校を視察
・16:00 羽田空港より専用機で伊丹空港へ移動
・18:40 橋下徹大阪府知事と会談。関経連、関西経済同友会ら主催の歓迎レセプション=リーガロイヤルホテル


5月10日土曜日
・09:00 リーガロイヤルホテルから奈良に向けて出発
・09:50 法隆寺、唐招提寺、平城京跡を視察
・12:30 荒井正吾奈良県知事主催の昼食会=奈良新公会堂
・14:40 大阪へ移動
・16:00 松下電器産業尼崎パネル工場を視察
・19:00 在阪チャイナ総領事館員や留学生、駐在員らと夕食会=リーガロイヤルホテル
・21:00 専用機にて伊丹空港出発


そして5月7日に交わされた共同声明

 ・日本国政府と中華人民共和国政府との気候変動に関する共同声明
 ・「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明

の二つ。


画像



これだけを見ると、めちゃめちゃ乱暴に言えば、中国側からみた、今回の訪日の目的は
 
 A)日中間の懸案事項の解決および日本の環境技術の提供。
 B)台湾は中国領だと今度こそ認めさせる。
 C)チベット問題を発端として四面楚歌にある北京五輪の窮状を助けてくれ。

なのではないかと思う。

海外のチャイナ叩き報道について」と「胡錦涛国家主席訪日の目的」のエントリーで言った内容とほぼ同じ。

これらに対して、福田総理は、A)にはYesB)にはNoC)は保留と回答した。

台湾の帰属問題は、今回の声明の第五条で、『(72年の)共同声明で表明した立場を引き続き堅持』として突っぱねた。

また、北京五輪開会式の出席についても、まだ先の話だとして明言を避け、天皇陛下や皇太子の出席についても触れることは無かった。
 
画像


日本が得たものは、第4条の二項の『日本の国連における地位と役割を重視、国際社会で一層大きな建設的役割を果たすこと望む。』の部分とガス田共同開発の合意。前者は国連常任理事国入りを匂わすものであるし、後者は、これまで中国が頑として認めてこなかった、日中中間線付近の中国側にある白樺ガス田(中国名・春暁)を含めた海域での共同開発の合意。

ガス田は議題にもならないと思っていただけに少々意外だった。皇室の五輪開会式出席はまだどうなるか予断を許さないけれど、これまでの交渉だけでみると五分五分といったところのようにも思える。

だけど、こうなったのも国民によるフリーチベットの抗議デモの後押しが物凄く影響しているように思う。

あれだけの抗議を受ければ、おいそれと五輪開会式出席なんて言えるものではない。そのせいか胡錦濤主席も宮中晩餐会で陛下に五輪開会式出席を口に出せなかった。

この時点だけでみると今回の外交交渉は引き分けといっていいかもしれないけれど、将来を考えると少し注意しておくべきことがある。

画像