職業選択を行うのに、自分のやりたいことをやれて、それがそのまま十分な収入になるのは理想だけれど、そんなにうまい話ばかり転がっているわけじゃない。みんなどこかで妥協したり、我慢したりしているもの。
新社会人になって、希望に燃えて就職してはみたけれど、こんなはずじゃなかった、と後悔したりするのもまた良くある話。
2008年3月大学卒業予定者の大学生の就職意識によると、会社選択のポイントとしては「ゼッタイに大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」が合わせて53.4%に上った。特に近年は「大手企業志向」と「安定している会社」や「一生続けられる会社」といった安定志向が上昇しているという。
過去17年間の大手志向推移:【「ゼッタイに大手企業がよい」+「自分のやりたい仕事ができるのであれば」】
また、就職観としては、1990年に同項目の調査開始以来、理系男女で17年、文系女子で16年、文系男子で13年連続で「楽しく働きたい」がトップとなった(全体37.0%、文系男子30.3%、理系男子32.3%、文系女子41.8%、理系女子37.8%)。
これらのことから、会社選択のポイントとして、大手企業志向で、自分のやりたい仕事ができることが相変わらず上位を占め続けている実態が浮かび上がってくる。
また、新卒派遣での就労を希望する新卒・第二新卒者の就労意識を調査する目的で、2002年3月に行われた調査によれば、「派遣社員」として働きたい理由として「スキル・専門性を磨くことができる」(18%)がトップに挙げられ、「時間に融通がきく・プライベートを充実させたい」(16%)がそれに続いたそうだ。
これらのことから、日本の中での就職に対する考え方として、大手・安定志向(できればやりたい仕事がしたい)の就職観と、スキル・専門性を身につけて自由に働きたいという2つの就職観があることが分かる。
前者は日本の伝統的な終身雇用制度を背景に、細く長く地道に勤め上げる農耕民族的な考えで安定収入確保重視派だし、後者は自分の腕一本で世の中を渡ってゆく職人的・狩猟民族的な考えで自分の好きな職につきたい派になろうかと思う。
本シリーズエントリー記事一覧
格差について考える その1 「格差とは何か」
格差について考える その2 「職業選択と職業観」
格差について考える その3 「職業の格付け」
格差について考える その4 「職業威信と収入の関係」
格差について考える その5 「健全な日本社会」
格差について考える その6 「年収300万円の世界」
格差について考える その7 「市場原理が働くプロの世界」
格差について考える その8 「主観的職業威信」
格差について考える その9 「職業の魅力」
格差について考える その10 「派遣会社の職業威信」
格差について考える その11 「中途採用と専門性」
格差について考える その12 「自己評価と他己評価」
格差について考える その13 「わが道を行く栄光なき天才たち」
格差について考える その14 「好きこそものの上手なれ」
格差について考える その15 「今を変える、未来を変える」
格差について考える 最終回 「祝福のこころ」
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