格差とは何か(格差について考える その1)

2008年6月8日に起きた痛ましい秋葉原連続殺傷事件。そして先日おきた八王子殺傷事件。一部には格差社会の生んだ悲劇であるという声もある。今回は、格差について考えてみたい。連続16回シリーズでエントリーする。

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[Asagi's photo]より


Wikipediaによると格差社会とは次のように定義されている。

『「格差社会」とは、ある基準をもって人間社会の構成員を階層化した際に、階層間格差が大きく、階層間の遷移が不能もしくは困難である(つまり社会的地位の変化が困難、社会移動が少なく閉鎖性が強い)状態が存在する社会であり、社会問題の一つとして考えられている。

学問的には、社会学における社会階層研究や、教育社会学における不平等や地位達成研究(進学実績、教育志望、職業志望研究)、経済学における所得や資産の再分配研究と関連している。』


つまり、社会に階級差ができ、かつ相互間の遷移が著しく困難な状態が格差社会。昔でいえば、士農工商のような身分制度に近い社会が格差社会であるということ。

日本で良く言われる、格差社会といえば、その収入による格差であるとか、正社員・派遣労働・フリーターといった雇用形態での格差が焦点になることが多い。

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収入格差を論じるときによく使われるものにジニ係数というものがある。これは、イタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案された社会における所得分配の不平等さを測る指標のことで、経済活動の成果である国全体の所得が各世帯にどのように分配されているのかを調べるときに、最もよく用いられる指標。

係数としては、0から1までの値をとる。0に近いほど格差が少ない状態で、1に近いほど格差が大きい状態であることを意味していて、0のときには皆同じ所得を得ている状態を意味する。

一般的には0.2~0.3の間にあるのが普通で、0.5を超えると社会的歪みが大きいとされる。

日本のジニ係数はといえば平成11年全国消費実態調査によると、0.275となっていて特に酷い収入格差があるとはいえない。また、他の先進諸国と比較しても、特に格差があるともいえないようだ。

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何を格差と捉えるかで当然議論は変わってくるのだけれど、中央大学の山田昌弘教授によると、格差は「就職」「出産・育児」「高齢化」の3つの段階で発生するという。

確かにどこに就職するかは生涯収入に大きな影響を与えるし、出産・育児期間の労働が困難なのは明らか。更には定年退職後の収入は激減してしまうのが殆ど。

これらに共通しているのは、収入および如何にして収入を確保するかという点。だから格差問題とは、収入を得る手段としての、職業選択と職業流動性(中途採用)および雇用形態と収入の関係をどう考えるかという問題になる。


本シリーズエントリー記事一覧
格差について考える その1 「格差とは何か」
格差について考える その2 「職業選択と職業観」
格差について考える その3 「職業の格付け」
格差について考える その4 「職業威信と収入の関係」
格差について考える その5 「健全な日本社会」
格差について考える その6 「年収300万円の世界」
格差について考える その7 「市場原理が働くプロの世界」
格差について考える その8 「主観的職業威信」
格差について考える その9 「職業の魅力」
格差について考える その10 「派遣会社の職業威信」
格差について考える その11 「中途採用と専門性」
格差について考える その12 「自己評価と他己評価」
格差について考える その13 「わが道を行く栄光なき天才たち」
格差について考える その14 「好きこそものの上手なれ」
格差について考える その15 「今を変える、未来を変える」
格差について考える 最終回 「祝福のこころ」



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