グリッドコンピューティングな2ちゃんねる(毎日新聞問題について考える その7)

コンピュータの情報処理方式の中で代表的なものに、集中処理と分散処理というのがある。

集中処理とは、1台の大型コンピュータに複数のクライアントを接続し、クライアントからの要求処理をすべてそのコンピュータで行う処理形態のこと。

集中処理では、全ての情報および処理が1台の大型コンピュータに集まるから、運用管理やセキュリティ対策がしやすい。その反面、すべて1台で処理しないといけないから、同時に多くの処理をした場合、パンクする危険がある。その場合はぶら下がっている端末は全部使えなくなる。

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それに対して分散処理は複数のコンピュータやプロセッサを利用して、分散して計算処理を行なう方式。遺伝子解析や気象予測、暗号解読などの超々大規模な計算なんかをやろうとすると、高性能のスーパーコンピュータが必要になるし、処理そのものにも莫大な時間がかかる。だから、処理を分割して複数のコンピュータを並列動作させることで処理時間を短縮しようというのが、分散処理方式。

最近では、インターネットなどを通じて膨大な数のパソコンやサーバのCPU空き時間を集めて、少しずつ処理を分担することで巨大な計算環境を構築する「グリッドコンピューティング」と呼ばれる分散処理方式も登場している。

この集中処置方式と分散処理方式の差は、丁度、既存マスコミと、ネット住民、通称「2ちゃんねらー」の関係に相当している。

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既存マスコミは、普通記者が集めて、記事にしたものを編集・選択して一本のニュース番組や新聞にして報道する。情報を本社編集部に全部集めてから「編集」という名の集中処理をする。

それに対して、2ちゃんねるやミクシィのような大規模なネット掲示板では、個人が掲示板に情報、時には意見募集やOFF会などのリクエストを出して、それに賛同した人が次々とそのリクエストに答えたり、必要な情報を付け足したりしてゆく。

これは、個々の端末から、情報処理のリクエストを出して、それに賛同した別の端末、個人がその処理の一部を行っていくという分散処理のプロセスと同じ。分散処理を行う個々人は自分の空いた僅かな時間をそれに当てることしかできないけれど、全体としてみれば、個々のCPU空き時間を集め、少しずつ処理を分担するグリッドコンピューティングシステムにとても良く似ている。

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唯一違うとすれば、分散処理方式では、全体の処理を分割してそれぞれのプロセッサに割り当てる、メインプロセッサがあるのに対して、ネット掲示板にはそれがないこと。

リクエストされた処理にたいして、処理してもいいよと思った個人だけがそれぞれ勝手に処理を始めるから、複数の個人が互いに同じ処理をしてみたり、逆にまったく処理されないプロセスも出てきたりもする。

だから、ネットでの分散型情報処理って、実は物凄く非効率な処理システムではあるのだけれど、何せ、端末の数にあたるネット使用者が何千万人の単位でいるから、多少の非効率など物ともしない。壮大な無駄を数の力でカバーしている。

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