市場経済原理主義の限界(麻生総理考 その4)

 
「市場経済原理主義みたいな形でいくとリーマン・ブラザーズの話とかエンドレスで出てくる話がいっぱいある。」

総裁選の最中、米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を受けて、9月16日の自民党青年局主催の討論会での麻生新総理のコメント。

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原理を純粋に適用したことで、不都合が起こるということは、原理そのものが間違っているか、原理の解釈を間違って、誤った使い方をしたかのどちらか。

前者を解決しようと思えば、原理を修正または放棄して、別の原理や新しい考えに切り替えることになるし、後者を解決しようと思えば、原点回帰して本来の原理を取り戻すしかない。

市場経済原理主義を放棄するのであれば、それに代わるものを持ってくるしかないのだけど、今の時点でこれといったものは見当たらない。そうすると別の原理、たとえば、半ば社会主義のような統制経済的なやり方を持ってくるしかなくなってしまう。現にアメリカは空売り規制にみられるように統制経済を適用し始めている。

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日本はこれまで、やれ構造改革だ、市場開放だ、グローバル化だなんて言われてきて、それに対応してきたけれど、完全に市場原理主義に染まっているというわけじゃない。まだまだ統制経済な部分と市場原理主義なところが混在している。昨年解禁された三角合併と、ブルドックソースの買収防衛策の容認にその一端が垣間見える。

麻生新総理も景気刺激政策をとると言っているから、これまでの改革開放路線からある程度の路線変更もあるのかもしれない。

「自由と繁栄の孤」のあとがきには、20世紀のアメリカの宗教家、ラインホルト・ニーバーが祈りに使った言葉を引用して、締めくくられている。

 -神よ、

 変えることのできるものについては、
 
 それを変える勇気と力を与えたまえ。
 
 変えることのできないものについては、

 それを謙虚に受け入れる心を与えたまえ。

 そして願わくば、

 変えるべき者と、変えるべきものでないものとを

 見分ける知恵を与えたまえ。


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画像リーマン破綻、自民総裁選の争点に=「市場原理主義」批判-麻生氏

 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)問題が16日、自民党総裁選の新たな争点に浮上した。米国発の金融ショックが日本経済に及ぼす影響が懸念され、次期首相は待ったなしの対応を迫られるためだ。
 リーマン破綻のニュースは総裁選を戦っている候補者にも衝撃をもって迎えられた。麻生太郎幹事長は同日昼、都内で記者団に「影響が大きすぎる」、小池百合子元防衛相も「状況は非常に厳しい」と相次ぎ表明。与謝野馨経済財政担当相は閣議後の記者会見で、状況によっては総裁選の遊説を取りやめる考えを示した。
 一方で経済財政政策でのスタンスの違いが改めて浮き彫りとなった。麻生氏は午後の党青年局主催の討論会で「市場経済原理主義みたいな形でいくとリーマン・ブラザーズの話とかエンドレスで出てくる話がいっぱいある」と指摘。町村派の麻生選対本部では「日本経済への影響は極めて大きく、今は景気対策が短期的に要る」と財政出動による景気浮揚策が急務との持論を展開した。
 市場経済原理主義批判には、石原伸晃元政調会長も討論会で「札束を抱えてそれを使うものだけが太っていく今の経済の仕組みは納得できない。その良い例は米国」と同調した。これに対し、構造改革派の小池氏は都内で記者団に「日本の構造改革が試されている。こういう時こそ埋蔵金をフルに使うスピーディーで的確な対応が求められている」と主張した。(了)
(2008/09/16-19:52)

URL:http://www.jiji.com/jc/zc?k=200809/2008091601057


画像最高裁はブルドックの株主判断を重視、「持ち合い」復活の懸念 2007年 08月 8日 13:29 JST

[東京 8日 ロイター] 最高裁がスティール・パートナーズの差し止め請求を退け、ブルドックソース(2804.T: 株価, ニュース, レポート)の買収防衛策の発動を容認したことで、日本企業の「持ち合い」復活が進むのではないかとの懸念が広がっている。

 防衛策を発動するために3分の2以上の株主の賛成が条件になるならば、安定株主を増やすことだけを目的にした安易な持ち合いが加速する可能性があり、海外からの投資意欲をそぐ要因になるとの声が出ている。

 <防衛策発動、株主の支持を強調>

 買収防衛策をめぐる初の最高裁判断は7日、東京高裁の決定を支持して、ブルドックの防衛策の発動を容認した。最高裁が重く見たのは、ブルドックの防衛策が6月24日の株主総会で出席株主の88.7%(総議決権の83.4%)の賛成を得た点だ。最高裁は「ほとんどの株主は、スティールの経営支配権の取得が企業価値を毀(き)損すると判断した」と指摘した。法曹関係者は、株主の支持を強調している点で「東京高裁よりも東京地裁の判断に近い」との見方が多く「株主が80%超もいいと言ったのだからよい、とも読める」(弁護士)との見解も出ている。

 <乱用的買収者、肯定しないが否定もせず>

 一方で、最も注目された「乱用的買収者」の認定については、最高裁は踏み込まなかった。東京高裁がスティールを「乱用的」と断定したのに対し、最高裁の決定では「高裁のいう乱用的買収者に当たるか否かに関わらず、法令に違反しない」とだけ言及してスティールが「乱用的」かどうかの判断は避けている。

 スティールは果たして乱用的買収者か――。最高裁が否定しなかったため、この認定を覆そうとしたスティールのねらいは外れたといえる。ただ、ブルドック防衛策の発動について、スティールが「乱用的」であることを理由にした高裁に対し、最高裁が「株主の支持」を挙げて容認したことで、法曹界からは「最高裁は、東京高裁の判断の枠組みをとらなかった。これは実質的に『乱用的買収者』と決め付けるのはおかしいとの判断とも言える」との見方が出ている。

 一方で、元判事のTMI総合法律事務所の高山崇彦弁護士は「スティールが乱用的であるか、最高裁は肯定も否定もしていない。ただ、東京高裁が乱用的と判断したことは残る」と指摘して、「レッテル」は残るとの見方を示す。高裁がスティールを「乱用的」と断じた事実をどうみるかについては議論が分かれるが、一度は「乱用的」と決め付けられたことで、スティールの投資行動を鈍らせることになりそうだ。

 <安定株主対策に拍車か>

 最高裁が、ブルドック防衛策の発動を認めるにあたり最も重視したのは「83.4%の株主の支持」との見方は共通だ。TMIの中川秀宣弁護士は「お金を払ってでも出て行ってほしいという株主の意見を重く見た」と解説する。野村証券金融研究所の西山賢吾ストラテジストも「株主総会の特別決議で承認を得た点が重視されている」と解釈している。

 総会の特別決議は、出席株主の3分の2以上の賛成が必要になる。ただ、西山氏は「特別決議を取るのは容易ではない。このため安定株主を増やすことだけを目的とした安易な持ち合いを増やす動きが広がる可能性がある」との懸念も示している。

 また、スキャデン・アープス法律事務所の神谷光弘弁護士も、最高裁の決定を受けて「こういう形で防衛策が認められるなら、企業価値を上げるのではなく、困っている会社同士で持ち合いをすればよいということになってしまう」との見方を示した。

 さらに、大和総研経営戦略研究所の藤島裕三主任研究員も「安定株主を増やすための持ち合いが進む可能性は出てくると思う。純投資の投資家の権利を阻害することになるなら資本市場の発展にとってはマイナスだ」と述べている。

 野村証券金融経済研究所の調べによると、2006年度の「持ち合い比率」(上場企業が保有している上場企業株の市場全体の時価総額に対する比率)は、集計を始めた1990年度以降16年ぶりに増加に転じた。大和総研が、2007年6月時点で報告された事業会社の大株主構成からの概算で持ち合いを調査した結果でも、他の事業会社による保有分が前年比1.3兆円の増加となった。

 前述の西山氏は、持ち合い比率が高い業種として、鉄鋼、紙・パルプ、陸運業が挙げられるが「これらは、買収防衛策の導入比率の高い業種でもある」と指摘している。

 買収防衛策の導入とともに、安定株主を増やす目的で株式を持ち合った可能性も考えられる。ブルドックの防衛策の発動を裁判所が認めたのを機会に、こうした動きに拍車がかかれば「せっかく日本の資本市場が変わってくるとの期待が海外投資家にある中で、投資の意欲を削ぐことにもなりかねない」(西山氏)との懸念が広がっている。

(ロイター日本語ニュース 村井 令二)

URL:http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-27274720070808


画像【経済コラム】米国はアメリカ社会主義合衆国に変身か-W・ペセック

9月22日(ブルームバーグ):米国の金融危機の火消し役として、ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は適役のようだ。

ここに、10年前に米財務省チームが書き残したかもしれないメモがある。ガイトナー総裁は当時、このチームの一員だった。メモのあて先はアジアの金融当局者で、要件は悪化するアジア危機。経済が不安定な状況下で動揺し、投資を引き揚げる動きが出ているとして、アジアの政策当局者に以下の10項目に留意することが重要だと指摘した。

1. 政策金利を引き上げて通貨を支える。

2. 歳出と債務を削減する。

3. 投機家やヘッジファンドを責めない。

4. 不動産の値下がりは急落ではなく調整のため、放置する。

5. 誤った決定を行った者を救済しない。モラルハザードこそ悪だ。

6. 企業セクターの透明性を向上させる。

7. いかなる補助金も悪だ。

8. 金融機関には直ちに不良債権の評価損を計上させる。

9. 問題の責任をマスコミになすりつけない。

10. 米国の繁栄をもたらす自由市場主義に従え。

しかし、財務省はこのところ、上記のすべてを無視せよというメッセージを発している。エマージング・アルファ・アドバイザーズのディレクター、マーシャル・メイズ氏は先週マニラで、「この戦略の変更に慣れるにはかなりかかる」と語った。


・構造的な変化

その他の金融変遷も構造的な変化にほかならないようだ。例えば、1997年のアジア金融危機後に不良資産の整理を支援した韓国資産管理公社(KAMCO)。現在は米国の不良債権最大9億ドル(約960億円)の買い取りを目指している。また、多くの米企業が韓国に資本参加を仰ぎ、米証券大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスも破たん前に韓国産業銀行(KDB)に出資を求めた。

KAMCOの李哲徽(イ・チョルフィ)最高経営責任者(CEO)は「世界ではこの10年であまりにも大きい変化が起きた」と語る。

この変化は先週、アジア開発銀行(ADB)がマニラで開催した会議でも中心的な話題だった。その基本的な考え方は、米国は処方せんに自ら従うよりも途上国に押し付ける方がうまいことが証明されつつあるというものだった。

米国が自国の金融危機に対応するやり方については議論の余地があろう。財務省と米連邦準備制度理事会(FRB)の行動には依然として自由主義を唱えた経済学者ミルトン・フリードマンの思想が影響を与えているだろうか。それとも、共産主義思想を打ち立てたカール・マルクスが入り込んできているだろうか。

アジアの一部投資家やエコノミストのヌリエル・ルービニ氏からは、アメリカ合衆国(USA)がアメリカ社会主義合衆国(USSA)に姿を変えつつあるとの冗談が聞かれる。


・炎に包まれるウォール街

もちろんこれは誇張表現だ。ウォール街が炎に包まれている時に、米国版の暴君として君臨したい人間はいない。バーナンキFRB議長もガイトナー総裁も違う。ただ、自由市場こそが繁栄へ続く道と米国から再三にわたって説教されてきたアジアにとって、このところの展開は混乱を招く。

英スタンダード・チャータード銀行のアジア調査責任者、ニコラス・クワン氏(香港在勤)は「アジア危機以降、安定するまでには多くの資金と試行錯誤が必要なことをわれわれは学んできた。米国はこのプロセスを開始したばかりだ」と述べた。

アジアにとって、現在手本とすべきモデルは何だろうか。欧州か、それともトップダウン方式と市場開放を混ぜた中国方式か。はたまた日本式の金融管理だろうか。世界でも成長著しい経済を複数抱えるアジアにとっての問題はこれだけではない。アジアにとって最大の問題の一つが市場開放ペースに付いていけない政治動向だ。

政局不安を抱えるタイから管理の厳しい中国、政治が機能不全に陥っている日本から停滞するマレーシアまで、アジアは迅速に対応できない政府だらけだ。米国が市場の信頼回復策をまとめ直すなか、アジアはこれまで以上に自らの今後を考える必要がある。


・信頼感低下

米国の信頼感がいかに低下したかは、米国とアジア各国の富の比較でよく分かる。貯蓄率の高いアジアが政府系ファンド(SWF)を設立して将来に備えるなか、米国は過去の問題を修復するため不良債権の買い取りファンドを立ち上げようとしている。米国が2000年以降、国際テロ組織アルカイダとの戦いを繰り広げるなか、中国は世界に通用する都市や空港建設を進めた。

騒ぎがいったん収まれば、経済政策担当者は「一段と適切な規制環境」を見いだす作業を始めねばならないと、ADBのラジャット・ナグ事務総長は指摘する。

米証券リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんや米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的管理下に置かれたことを受け、米金融規制当局やニューヨーク州などの一部州当局、米3大公的年金基金は空売り規制に動いた。

10年前にアジア各国が同様の措置を取れば、米当局者はぎょっとしたに違いない。自国が危機を迎えた時に自分自身の処方薬を飲むのがいかに困難であるかを思い起こさせる展開だ。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

更新日時 : 2008/09/22 14:56 JST

http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=ageZEjtl0rp0