理の国の弱点(国家の性格について考える その8)


それぞれの行動基準の特徴とその組み合わせで考えてみると、民主主義な理の国、あるいは民主主義な和の国の方が、まだ衆愚に陥いる可能性はより低いようにみえるけれど、それでも理は理なりの、和は和なりの弱点がある。

画像


理の弱点は理に縛られること。理を奉じて理によって成立している国は、その理が守られないとその存立基盤を失ってしまう。しかも、その理が崇高であればあるほど、現実とは乖離しがちになって、必然的に国家運営における国としての選択権が限られてゆく。

フランスは今、移民問題で悩まされているけれど、フランスは国家として人権尊重という理を掲げて興った国だから、おいそれと移民を排斥するわけにはいかない。それこそ人権侵害となって、国家存立基盤が揺らいでしまう。

また、アメリカなんかでも自由の精神を掲げ興した国だから、これも自由と求めてやってくる人を拒むことはできない。たとえ建前だけであったとしても。

画像


何がしかの理が確固としてある個人同士が集まった国家が民主主義である場合は、民主を奉じるが故に、個々人の意思は尊重され、その集積である民意に従う原則がある。

だから、国家意思を定める場合でも、互いに互いの理を全面に押し出し、討論し、結論を出すというプロセスを得る。時には時間のかかることもあるけれど、一度民意が定まったら、それは実行に移される。ここにおいて、民意と国家意思は理のレベルで合意がなされているから、国家もその理を安易に覆せない。そのとおり行うしかない。そこに縛りがかかる。路線変更には再度民意を問わなければならない。


画像