事故米の背景

昨日のエントリーで終わるはずでしたが、追加エントリーします。

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農水省が「事故米」を、工業用糊や、木材の合板や集成材の接着剤の原料使用に限り販売を許可してると説明していた件で、そんな事実は殆どないことが明らかになった。

J-CASTニュースが工業用糊メーカーの大手ヤマト、不易糊工業、住友3Mに取材したところ、糊の原料には、タピオカやコーンスターチを使っていて、米を原料にすることはないと答えたそうだ。さらに、米を原料に使うメーカーなんて聞いたことがない、と。

どうも「事故米」なるものは扱いに困るらしく、穀物業者も手をださない。そこで、農政事務所から直接業者に買ってくれと要請があるようで、まるでババ抜きのババ。

そんなに嫌なら輸入そのものを止めるか、検査をしっかりやって事故米は買取拒否すればいいのにとも思うのだけど。

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これから農水省の立場は、ギョーザ事件での各食品メーカーのような立場に追い込まれることになるだろう。

MA米輸入とその汚染、そして市場からの事故米の拒否。事故米をそのまま中国産毒ギョーザに当てはめると、安全性をキーワードに、輸入事故米と市場の拒否との板ばさみになっているという全く同じ構図。

農水省は各食品メーカーが陥っている苦しみと同じ苦しみを味わうことになるだろう。

事故米をそうと知りつつ流通させていたという政治的責任が問われる。ギョーザは民間企業のせいにできたかもしれないけれど、こっちはそんなことはできない。因果応報。

食品メーカーは毒餃子を理由に中国産食品の輸入をどんどん減らしていった。MA米はどうするのだろうか。

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画像「工業用糊に限り販売」 農水省の説明は大ウソだった 2008/9/11

農薬や毒カビに汚染された「事故米」が食用として出回っている事件で、農林水産省の説明に大きな疑惑が浮上している。農水省は「事故米」を、工業用糊や、木材の合板や集成材の接着剤の原料使用に限り販売を許可していると説明していたが、実は、国内では接着剤などの原料に米を使用することは殆どないことがわかった。使い道のない米を穀物業者に販売していた形になり、今後農水省の責任が厳しく追及されるのは必至だ。

糊に使うのは「事故米」でなくタピオカや小麦

問題を起こした三笠フーズの場合も「工業用糊加工品」に用途を限定することを条件に販売したという。しかし、工業用糊メーカーの大手ヤマト、不易糊工業、住友3MにJ-CASTニュースが取材すると、いずれも、澱粉糊のうち「米を原料にしているものはない」という答えが返ってきた。また、「米を原料に糊を作っているメーカーがあるという話は聞いたことがない」のだという。ちなみに澱粉糊はヤマトがタピオカ、不易糊工業はコーンスターチを原料にしている。

また、森林総合研究所によれば、合板を作る際や、集成材に使う接着剤の原料に小麦を使う例はあるものの、米を使ったものは見たことがないそうだ。工業用糊や接着剤に使われないとなると、「事故米」を工業用糊などに使用を限定、という農水省の「前提」が全く崩れてしまう。

「三笠フーズ」を発端とする今回の「事故米」の食品使用問題では、2008年9月10日に、新たに食品・資料販売会社「浅井」(名古屋市)、肥料製造会社「太田産業」(愛知県小坂井町)が米穀の仲介業者に転売していたことが発覚。食用に転用されている可能性が強まっている。

今回の「事故米」は、日本政府が世界貿易機関(WTO)のルールで輸入を義務づけられたミニマムアクセス(MA)米で、年間約77万トン輸入している中の一部。農水省のホームページには、

「MA米によって国産米の価格・需給に影響を与えないよう、加工用中心の輸入・販売を行うなどの措置を講じている」
と書かれている。

「何でも工業用に回すというわけではありません」
08年9月10日のテレビ朝日系「報道ステーション」では、東北の穀物業者が匿名でインタビューに応じていた。

「農政事務所からカビの生えた270キロの米があるという話があり、食用以外なら何でも処理していいと。それで、堆肥にするということで私が買った。(事故米は)手を出す人がいないので、お金にならない」
穀物業者に直接の依頼があるのは驚きで、それだけ「汚染米」の使い道は少なく、在庫が膨らみ、農水省は頭を痛めていた様子がうかがえる。

農水省の報道担当はJ-CASTニュースに対し、「三笠フーズ」に「事故米」を販売したのは「三笠フーズ」が工業用穀物も扱っていたため、契約通りに加工すると考えたからだと話した。しかし、「事故米」が工業用糊としては需要がないのでは、と指摘したところ、これまでの農水省の発表やJ-CASTニュースの取材に答えたこととニュアンスが一変した。

「台風で水に浸った事故米は食用としてすぐに出荷するように、事故米も臨機応変に、何でも工業用に回すというわけではありません」
という理解不能の説明だった。食用に転売される可能性にうすうす気が付いていた、といわれても仕方がないような対応だ。

URL:http://www.j-cast.com/2008/09/11026863.html


画像MA米の輸入義務は政府のウソか? 

※この記事は5月24日に書きだしたものですので情報が古いかも知れません。

最近、こんなニュースがありました。

コメ不足のフィリピンに20万トン支援検討 政府(5月19日) (魚拓)
日本政府にコメ支援要請、比側は否定 (5月21日) (魚拓)
食糧危機に日本のMA米を活用 フィリピン支援で米政府と合意(5月24日) (魚拓)
MA米というのはミニマム・アクセス米の略で、GATTやWTOの交渉で日本が輸入を義務づけられたとされるお米のことです。
このニュースは、アメリカから(嫌々)輸入しているMA米を、フィリピンに支援することに、米国が同意したという意味です。
フィリピン政府は、日本へ要請したという報道を公式に否定しているようですが、今回は触れずにおきます。

Wikipediaを見ると、ミニマム・アクセス=輸入義務ではないとはっきり書かれています。よくある、官僚の言葉のマジックのようです。

この記事を書きだした24日当時に、英語圏のニュースを検索してみました。すると、少ない報道の中で興味深い記事が見つかりました。(現在は、数百の英語報道があります)。

訳はいつもの通り、記事の抜粋の下手な意訳ですのでご勘弁下さい。

U.S. Backs Japan’s Planned 200,000 Ton Rice Sale to Philippines (Bloomberg 5月23日)

「WTOによって日本はアメリカから米を輸入する義務を負っていますが、日本はアメリカの許可無しでは、その米を輸出することはできません」

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U.S. in Difficult Position Over Japan’s Rice Plan (New York Times 5月23日)

日本とWTOの合意書では、日本が輸入した米を再輸出を禁止するかどうかには触れていません。WTOの弁護士は、日本が再輸出できるかを今週、精力的に議論していますが、まだコンセンサスは得られていません。WTOは、今回の件についてのコメントを辞退しました。

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政府は以前から、日本はMA米を毎年70万トンを輸入する義務があるというようなことを言っていました。しかしその義務が無いとしたら、毎年70万トンも輸入し、一部を輸出するだけで何故、わざわざアメリカのご機嫌伺いに行く必要があるのでしょうか。

ネット新聞を調べた限り、未だに全てのメディアが輸入義務があるような書き方をしています。

参考記事をリンクしておきます。

輸入米はどこの管理下?米国の“圧力”表面化 (赤旗 2008年6月1日)
MA米輸入未達で農相/WTOに違反せず (日本農業新聞 2008年5月14日)
穀物高騰で70万トンの輸入もままならないようですが、WTOに違反しないと農水大臣が自ら言っております。アメリカは表向きは今回の輸出を支持するといってますが、米国通商代表部の腹の中は違うでしょうね。

農業政策の根本的な転換が必要でしょう。

今回は中途半端な記事になってしまいたがご容赦下さい。右上の画像の本は、600円の値打ちはあると思いますので宜しかったらどうぞ。

URL:http://scrapjapan.wordpress.com/2008/06/03/ma_rice/