三笠フーズの事故米問題について

 
三笠フーズが、発がん性のあるカビ毒や基準値を超える残留農薬が検出された事故米を食用に転売していたことが明らかになった。古米を新米だと言って売る程度ならまだしも、毒性の残るものをそれとわかって売っていたのだから、もはや偽装のレベルを超えている。

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三笠フーズ社長の話によると、なんでも5~6年前から不正転売をしていたという。まったく飽きれる他ない。

また、事故米の転売は他の複数の業者も行っていたとも供述していることから、相当に根の深い問題であることが窺える。

農水省も昨年当初から転売の情報を得ていたにも関わらず、なんら有効な対策を打たなかった。問題が発覚した途端に、売却先を工業用のりメーカーに限定するだとか、事故米に色を着けるとか、抜き打ち検査するとか矢継ぎ早やに対策を出してくるところを見ると、やれるのに放置した、と批難されても仕方ない。それどころか、農水省自ら、業者に事故米の購入を持ちかけていたという。

5~6年前から本当に残留毒米が流通しているのであれば、かなりの量が多くの人の口に入ってしまっていることになる。具体的な健康被害の報告はまだないとのことだけれど、いつ発生してもおかしくない。だけどもはや原因の特定は難しい。

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これでますます食の安全性への関心が高まる。消費者としては、安全な米が欲しいのは当たり前。だけど、事故米を普通の米に混ぜられてしまったら、もうどうしようもない。区別がつけられない。

消費者防衛といっても、米の素性と流通の履歴を表記するくらい。だけど肝心要の履歴を偽造されようものなら、完全にお手上げ。

だから、家庭や地域共同体といった小さなレベルで完全自給自足社会があるならまだしも、そうでなければ、こうした人の命にかかわるもの、ライフライン関連のものは、ある程度以上の国家レベルでの管理が必要になる。元栓部分で管理するということ。

元栓の部分での対策、すなわちMA米の全面輸入禁止か、輸入しても全数廃棄などして、流通させないようにしないといけない。

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世の中は、よく小さな政府にすべきだともてはやすけれど、なんでもかんでも小さくしてしまうと、こうした安全を求められる食のことでさえ、責任は消費者が自己防衛しろということになってしまう。

過ぎたるは及ばざるが如し。なんでも行き過ぎは良くない。

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画像汚染米転売は10年前から、三笠フーズ顧問認める

 米穀加工販売会社「三笠フーズ」(本社・大阪市北区)が、発がん性のあるカビ毒や基準値を超える残留農薬が検出された工業用の「事故米」を食用と偽って転売していた問題で、同社の非常勤顧問(76)が6日、福岡市内で読売新聞の取材に応じ、約10年前、冬木三男社長からカビの生えたコメの販売について相談されて不正転売を勧め、自ら主導して始めたことを認めた。

 そのうえで「事故米の転売は他の複数の業者も行っていた」と話した。業界で不正が横行していた証言が出たことで、農林水産省のチェック体制のあり方も問われそうだ。

 この顧問は、冬木社長が同日の記者会見で、不正転売を提案した一人と指摘していた。不正転売が始まった時期について、冬木社長は「5~6年前から」としており、顧問の説明と食い違っている。

 顧問はもともと福岡県内で別の米穀飼料製造販売会社を経営していた。この会社は1997年ごろに三笠フーズに買収され、顧問は98年ごろから2006、07年ごろまで、福岡県筑前町の三笠フーズ九州工場の責任者を務めた。

 「(買収される前の)85年ごろから、カビの生えた事故米の中からきれいなコメだけを選び、食用に転売していた」と証言。「悪いと思っていないのか」との質問に対して「カビのある部分だけを取り除いて食べるのは、食料不足の時代には当然で、工業用と食用を厳格に分けるシステム自体に問題がある」と政府を批判した。

 さらに、約2年前、有機リン系殺虫剤「メタミドホス」が残留するコメについて、「冬木社長から『どうにか、食用で販売したい』と持ちかけられた」と話した。検査機関で残留農薬を測定したところ、国の基準値を下回っていたため、1年半前から販売を始めたという。顧問は「農薬の残留状況を確認しており、健康に問題はなかったはず。購入業者も薄々気づきながら、値段の安さを優先して買ったのではないか」とし、謝罪を避けた。

(2008年9月7日 読売新聞)

URL:http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20080907-OYS1T00187.htm



画像【事故米不正転売】農水省が三笠フーズを売却先として住友商事に紹介 2008.9.9 01:05

 大阪市北区の米粉加工会社「三笠フーズ」による事故米転売問題で、政府発注のミニマム・アクセス(最低輸入量)米として輸入したタイ米の一部にカビが生えたため、事故米145トンを国から買い戻した住友商事(東京都中央区)に対し、農水省が売却先として三笠フーズを紹介していたことが8日、わかった。農水省は全国の農政事務所で事故米の入札がある度に三笠フーズ側に連絡しており、流通実態を確認しないまま事故米の「大口得意先」として扱っていた同省の対応が問われそうだ。

 また、三笠フーズが熊本県や鹿児島県の酒造メーカーに販売した殺虫剤アセタミプリドに汚染されたベトナム米は、大手商社の双日(東京都港区)が約600トンを購入した一部が食用として不正転売されたことも、同省の調査で判明。三笠フーズが国から直接購入した事故米1779トン以外に商社から購入した事故米は計740トンに上り、汚染米の流通量がさらに膨らむ恐れも出てきた。

住友商事によると、同社は平成17年8月、関税・貿易一般協定(ガット)のウルグアイ・ラウンド合意に基づき一定量の輸入が求められているミニマム・アクセス米として、タイ米7000トンを輸入。このうち145トンが船便で運ぶ際に雨に濡れてカビが生えたため同省から買い取った。

 その後、農水省が9月ごろ、住友商事に売却先として三笠フーズを紹介。同社の九州工場がタイ米が荷揚げされた沖縄県に近く、大量の米を工業用のりの原料に加工できる処理能力の高さが理由だったという。

 一方、双日はアセタミプリドに汚染されたベトナム米を国から買い取り、19年8月に工業用として九州の米穀卸会社に売却、さらに三笠フーズに転売された。一部が同社から食用と偽り、福岡、鹿児島、熊本の焼酎メーカーに転売されたという。

URL:http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080909/crm0809090103002-n1.htm



画像政府保管の事故米、すべて廃棄も検討 農水省次官が表明 2008年9月8日21時29分

 農林水産省は8日、政府が保管する事故米をすべて廃棄することも含め、現行の売却制度を見直すことを明らかにした。売却自体を継続する場合も、食用米を扱う業者は入札に参加させない方針だ。

 白須敏朗事務次官が定例会見で明らかにした。当面の予防策として、
(1)売却先を、工業用のりメーカーに限る
(2)食用米に混ぜられてもすぐ分かるよう、売却前に事故米に着色する
(3)購入業者が粉末にする場合、現行の作業当日に職員が立ち会う検査方法から、事前の抜き打ち検査に改める――などを検討中という。

 農水省はこの日、政府から事故米を購入している17社のうち、奈良県と福岡県の各1社と三笠フーズを除く14社に対し、食用への転用の有無を調べる点検に着手した。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0908/TKY200809080314.html



画像有害米転用―農水省の感度が鈍すぎる

 カビ毒や農薬で汚染された有害米が食用に転売されていた問題の波紋が広がっている。この米を使っていた焼酎メーカーは回収に動かざるをえなくなった。一方で、農林水産省は昨年初めに転用の情報を得たのに、事実を突き止められなかったことがわかった。

 問題の米は政府が輸入したが、毒性のあるカビや基準値を超す農薬成分が検出され、工業用のりの原料などにしか使えないとされた「事故米」だ。仕入れた大阪の米販売会社「三笠フーズ」が食用と偽って転売していた。その結果、焼酎などとなって、何も知らない消費者の口に入ってしまった。

 安い事故米と食用米の価格差は大きい。三笠フーズの社長は、その利ざやを稼ぐために、何年も前から転売を続けていたことを認めた。

 不正は社長が指示し、発覚を防ぐため二重帳簿も作っていた。おまけに取引先にばれないよう正規米に混ぜて売っていたらしい。食べものを扱う業者としては、信じがたい背信行為だ。

 九州の焼酎メーカー数社が、この米を仕入れて焼酎にしていたことを公表したり、出荷停止や自主回収の措置を取ったりした。

 また、三笠フーズは事故米を政府からだけでなく、商社からも買いつけていた。それも食用として不正に流れていたという。

 さらに今回、浮き彫りになったのは、農水省の対応のお粗末さだ。食の安全を揺るがす事件が相次ぎ、食品業界への監視を強めていたはずなのに、健康被害を及ぼしかねない不正を長く見過ごしていた。

 昨年1月に三笠フーズの不正を指摘する情報が農水省に寄せられたときには、立ち入り調査までしていたにもかかわらず、転用の事実をつかめなかった。取引台帳を確かめたというが、販売先の業者を調べていれば、食用に転売していることがわかったはずだ。

 農水省は今後、事故米に色をつけて見分けられるようにしたり、廃棄したりするなどを含め、売却方法を見直すことにした。当然のことで、対策は遅すぎたぐらいだ。

 事故米の販売を続けるなら、抜き打ちで調査をするなどのチェック態勢を強める必要もある。

 三笠フーズについて、農水省は食品衛生法違反の疑いで警察に告発する方針だ。「健康に影響はない」というだけでは、消費者に不安が残る。せめて流通経路の解明と出回った商品の回収も、徹底して進めてもらいたい。

 政府から事故米を買っていたのは、三笠フーズのほかに16社ある。不正がほかの業者にも広がっていなかったか、その確認も急いでもらいたい。

 こんな事件がいつまでも絶えなければ、政府が掲げる「安全・安心」のかけ声が何ともむなしい。

URL:http://www.asahi.com/paper/editorial.html



画像三笠フーズが全従業員解雇 2工場も操業停止、事業は継続 2008年9月9日 21時47分

 農薬やカビ毒で汚染されたコメを不正転売していた米粉加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市)は9日、社員、パートを含む全従業員計約100人を同日付で解雇したことを明らかにした。

 財務担当者は「混乱の中で、従業員の経済的な保障のめどがたたなくなった」と説明。解雇した社員の一部を契約社員として採用し、事業は継続していくという。

 汚染米を出荷していた福岡県筑前町の九州事業所の工場と、大阪府豊中市の炊飯工場も9日、操業を停止した。

 財務担当者によると、解雇されたのは、2工場のパート従業員計約60人と、グループ会社を含めた社員計約40人。9日までに退職金を支払う準備ができたという。

 不正が明らかになった5日から、同社には取引先から「汚染米が混入しているかもしれない」「不正をした会社と取引はできない」などの声が相次いでいた。

(共同)

URL:http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008090901000853.html



画像事故米「農水省が購入打診」 複数の業者明かす 2008年9月10日15時7分
 
 大阪市北区の米販売会社「三笠フーズ」が工業用の事故米を食用に転用した問題で、農林水産省が事故米の購入・販売先として公表した18業者に朝日新聞社が取材したところ、複数の業者が、事故米の購入を農水省側から持ちかけられていたことを明らかにした。また、回答しなかった1業者をのぞく17業者が食用への転用を否定した。

 「国から頼まれて買った米。とても迷惑な話だ」。奈良県の工業用のり製造販売業者は04年11月、水害に遭った事故米の購入を農水省側から勧められたという。だが、買った米は相当傷んでおり、のりの原料としても使えず、結局、焼却処分したという。

 山形県内のコメ油製造業者は、農水省側から「何とか有効利用を考えてくれ」と頼まれ入札に参加した。約140キロを買い、発酵有機質肥料の原料として商品化を試みたが失敗。今も大半が余っているという。「恩を売っておけばという考えで入札に参加していた」と打ち明けた。

 中国産もち米で工業用のりをつくっていた富山県内の業者は「国は『知らなかった』では困る。入札前に業者の信頼性をチェックすべきだった。はっきり言って農水の怠慢だ」と不満をぶつけた。

 転用を疑われ、農水省の調査まで受けた各業者は、三笠フーズの不正に憤りを隠せない。「寝耳に水。とばっちりだ」。秋田県内の運送会社幹部は、リサイクル事業の一環として07年、県内の豪雪でつぶれた倉庫のカビ米約1200キロを買いとった。スーパーで集めた野菜くずなどに事故米を混ぜ、肥料にして無料で農家に配ったという。

 松山市の肥料製造卸会社でも3年前まで、菜種油や魚粉を事故米に混ぜて肥料をつくっていた。社長は「うちは水にぬれて使えなくなった事故米を利用しただけだ」。

焼酎の原料となるサツマイモの肥料として34トンを買ったという鹿児島市の商店の社長は「間違った使い方をした業者のために、しっかりやっているところまでが迷惑する」と話した。

 新潟県の工業用のりの製造販売会社の幹部は「客から問い合わせが相次ぎ、いちいち説明している。会社イメージに傷がついてしまった。国が慎重になり、事故米の流通が減る懸念もある」と困惑している。

 事故米の購入を促したと指摘されたことについて、農水省消費流通課は「現在、各地の農政事務所を通じて事実関係を調査中」としている。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0910/OSK200809100030.html