こうしてみると福田総理の最大の功績は、世界の禍から日本を守ることにあったのかもしれない。
もっとも、外交的に福田前総理が大過なく過ごせたのは、多分に他国の情勢に恵まれたということもある。同盟国アメリカはもとより中国もロシアも日本の技術力をアテにして対日融和政策をとっていたから、それほど強硬にでることはなかった。福田型全方位外交はそれにうまくハマっただけだとも言えなくもない。
福田前総理の全方位融和型外交には、国内からの批判が沢山集まったけれど、結果としてみる限り、戦争に巻き込まれることもなく、戦場になることもなかった。長野での聖火リレーは、国民意識的には、戦争だったといえるかもしれないけれど。
ただし、なにも自分で発信しないというそのやり方は誤解されやすかったのは確か。その功績を云々するのはもう少し後になってからのほうがいいのかもしれない。
今のタイミングでの辞任を天意とみるかどうかは難しいところだけれど、私見を述べるならば、ほぼその使命は果たしたのではないかと思う。
「福田総理の使命(新世界秩序について考える その4)」のエントリーの中で、福田総理の使命は資源分野での安全保障ではないか、と述べたけれど、この資源分野の安全保障という面からみても、食料安保以外は大体の目処がついたのではないかと思うから。
国内報道では、何もしなかったといわれている洞爺湖サミットでの福田総理の評価は、実はとても高かった。
G8サミットの構造、論点、メンバー国について情報分析、研究を専門的に行う世界でも数少ない研究機関である、トロント大学G8リサーチ・グループは、歴代3位という相当高い評価を与えている。
その中の福田総理の采配に至ってはA(85点)という高評価を得ている。
世界的には洞爺湖サミットは成功したことになっていて、日本は議長国としての役割は十分に果たしたといっていい。
今回の福田総理の辞任について、マスコミなどは、二代続けての短命政権だとか、政権投げ出しの無責任だなんて言っているけれど、そのときそのときの国益に対して一番必要とされるものを最も得意とする人が、総理になって、個別に使命を果たし、役目を終えたらさっさと交代する。そんなやり方があってもいいのかもしれない。

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