マージンを削る社会


先ごろ、農林水産省などは、加工食品の原材料が賞味期限切れであっても、安全性を確認できれば原材料に使っても問題ないとするガイドラインの改正を行うことを決めた。

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食品の期限には「消費期限」と「賞味期限」があるけれど、前者はこれこれまでに食べないと安全でなくなる期限。後者は美味しく食べられる期限で、その性質は異なる。「賞味期限」が切れても食べられないことはない。美味しい美味しくないは別として。

以前、「期限切れリスクの適正化(食品偽装問題について 後編)」 のエントリーの中で賞味期限を緩和して、グレード分をして販売したらどうか、と言ったことがあるけれど、今回のガイドラインの改正は、実質賞味期限の緩和。

平成17年の兵庫県でのアンケート調査では、賞味期限が過ぎたら捨てると回答した人が過半数を超えたそうだから、適正な賞味期限を設定することは良いこと。食糧自給率云々を考えても、無駄に捨てられることが無いだけマシ。

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デフレ社会になってから久しいけれど、食料品やなにかでもコストダウンを追求されて、いろんなところがケチられるようになってきた。竹輪の穴が大きくなったり、スナック菓子の中身が少し減ってみたり。こんどは賞味期限にまでメスが入った。

いままで安全のために取っておいたマージンをどんどん削っていって、ギリギリの妥協点を探していくようになってきた。

もったいない社会の再来。次にくるのは、どうしても捨てなくちゃならないものをどうにかして生かすやり方。コンポストして堆肥にするとかして、それを買い取る業者も出たりして。

ちり紙交換屋も古新聞・古雑誌を集めるだけじゃなくて、コンポスト堆肥を集めてみるというのはどうだろうか。

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画像「賞味期限切れ」も原材料に 10月14日 19時22分

加工食品を作る際、捨てられてしまう原材料を減らすため、農林水産省などは、賞味期限切れであっても安全性を確認できれば原材料に使っても問題ないとするガイドラインの改正を行うことを決めました。

これは、農林水産省と厚生労働省が14日に開いた会議で決めたもので、加工食品に使う原材料の消費期限と賞味期限についてガイドラインに新たな項目が設けられることになりました。品質が急速に劣化する食品に「安全に食べられる期間」として表示される『消費期限』については、期限切れの原材料の使用を認めていませんが、品質の劣化が比較的緩やかな食品に表示される『賞味期限』は「おいしく食べることのできる期限」であり、「安全性を合理的に確認できれば、期限が切れても加工食品の原材料として使うことは問題がない」としています。14日の会議で、委員からは、食品メーカーに社内基準や記録の保管などが求められることをあわせて明記するよう求める意見が出されました。今回のガイドラインの改正は、原材料としてまだ使える食品が捨てられている現状を変えるねらいで行われるもので、農林水産省は「去年、菓子メーカーの『不二家』が賞味期限の切れた原材料を使って問題になっただけに、使う際の条件などについてメーカー側に十分な説明をしていきたい」と話しています。これについて、主婦連合会、副会長の和田正江さんは「食品のむだをなくすという考えはあると思う。しかし、企業が期限切れの原材料も再利用できるという安易な考えをしかねず、食の安全が問題になっているなか、消費者にとっては大きな不安につながる」と話しています。

URL:http://www3.nhk.or.jp/news/t10014719191000.html


画像賞味期限前に返品する商慣行見直し…農水省、大量廃棄を抑止

流通界に要請へ 公取に通報も

 農林水産省は、食品を賞味期限切れ前に返品する商慣行が大量廃棄の一因となっているとして、流通業界の関係者に見直しを促す方針を固めた。

 小売店が卸業者に対し、契約にない引き取りを求めるなど特に不当なケースは公正取引委員会に通報する。賞味期限を極端に短く設定している食品メーカーにも是正を求めていく。食品・流通業界の商慣習を改め、食品の大量廃棄に歯止めをかける狙いだ。

 農水省は、菓子関連の団体や企業で作る「全日本菓子協会」と共同でアンケートを実施し、流通業者からの返品と賞味期限の設定方法の実態を調べている。

 その調査結果を7月中にまとめ、農水省が食品メーカーや流通業者に対し商慣行の見直しを強く要請する。法的な強制力はないものの、悪質なケースについては公取委と連携して取り締まりを強化する方針だ。

 小売店は賞味期限切れが近くなると卸業者や食品メーカーに返品することがある。新しい賞味期限の商品と店頭に並べても消費者は手を出さないためだ。小売店側も賞味期限がそろっていた方が在庫管理しやすいという事情もある。

 納入業者との間で返品の契約がないのに返品を求めた福岡県の小売店が今年5月、公正取引委員会から独占禁止法違反(不公正な取引方法)として排除措置命令を受けている。

 一方、小売店側が商品を仕入れる際、製造日から賞味期限まで例えば3か月ある商品なら3分の1の1か月が過ぎた商品は納入を受け付けない慣行もある。食品業界の関係者によると、返品されたり納品されなかったりした商品は安売り店に卸すほか、自社内で販売し、売れ残った場合は廃棄する。中には返品はすべて捨てる企業もあるという。

 読売新聞のアンケートでは2割弱の消費者が「賞味期限が来たら捨てる」と答え、短い賞味期限が食品の大量廃棄を生んでいる可能性がある。国内の食品廃棄物は年間約1900万トン。うち600万トン程度が、食べられるのに捨てられていると推定されている。

 賞味期限 品質の劣化が比較的遅い加工食品を一定の状態で保存した場合においしく食べられる期間。国の指針では、食品メーカーが微生物検査など科学的根拠に基づいて安全性や品質に問題がないと認定した期間に「1未満の係数」(安全係数)をかけて決める。係数は0・7~0・8が通例だが、新鮮さを好む消費者ニーズに応じるとして低い係数をかけて短い賞味期限を設定するメーカーもある。

(2008年7月5日 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20080705gr01.htm


画像食のもったいない運動

 世界的な食糧不足が深刻化する中で、わが国では売れ残った食品や食べ残した食品が多量に発生し廃棄されています。
そこで、兵庫県消費者団体連絡協議会では、消費者、事業者双方の「もったいない」意識を高め、食品の廃棄削減や有用なリサイクルを進めていくことを目的として、消費者の意識や食品販売店の廃棄の実態を調査し、消費者と事業者のフォーラムを開催するなど、「食のもったいない運動」を地域住民や事業者とともに展開しています。

 
食べずに捨てたことがある消費者が7割も
 平成17年8~9月に消費者を対象とした「食品の廃棄についての消費者行動等アンケート(消費者アンケート)」を、同年12月~18年1月に県内のスーパー等の食品販売店を対象に、「販売食品の廃棄・リサイクルアンケート(販売店アンケート)」調査を実施し、消費者2,585人、販売店85店舗から回答を得ました。
消費者アンケートの結果では、「食品を食べずに捨ててしまうことがある」という問いに対し、「たまにある」「よくある」と答えた人があわせて全体の約7割を占めていました。これは、消費者が買い過ぎたり食べ忘れたりして、賞味期限切れや、変色・異臭がする状態になってしまい捨てているためです。消費者は、買い過ぎないよう計画的な買い物をする必要があります。


販売期限が切れるとゴミとして廃棄される
 消費者アンケートでは、「食品販売店で販売期限の切れた食品は廃棄される」と思う人は72.5%でしたが、販売店アンケートでは、92.9%(79店舗)が「ごみとして廃棄している」と答え、そのうち72.2%(57店舗)は100%ゴミとして廃棄していました。一方、「飼料として利用している」などリサイクルへの有効利用は、きわめて限られていました。
また、「店舗でよく捨てられていると思う食品」は消費者アンケートでは「弁当」が65.5%、「そうざい」が55.4%でした。一方、販売店アンケートによると実際によく廃棄するのは、「魚介類」(55.3%)と「そうざい」(51.8%)が特に多く、「弁当」は23.5%と消費者の予想に反して少ないことがわかりました。


みんな「もったいない」と思っている
 家庭で、食品を食べずに捨てることについて「もったいない」と回答した人は非常に多く全体の86.6%を占め、年代別では一番割合の低かった20代の若者でも78.8%が「もったいない」と思っていることがわかりました。 
また、「店舗で食品が廃棄されている」ことについて「もったいない」と思うのは、消費者アンケートでは71.8%、販売店アンケートで75.3%とほぼ同じであり、消費者も販売店も多くが「もったいない」と感じていることがわかりました。


消費者意識と行動を変えよう
 販売店側から消費者に対して、「賞味期限に近い食品から購入するよう消費者の意識が変わらないと食品廃棄は減らない」、「消費(賞味)期限のみを鮮度の基準とする消費者が増えている」などの意見があり、消費者意識と購買行動が食品廃棄を生む原因の一つにあげられています。
消費者アンケートでは、「食品を食べずに捨てるのは賞味期限が過ぎた時」と答えた人が過半数を超え、賞味期限を食品廃棄の目安にしている人が多いことがわかりました。しかし、賞味期限はおいしく食べられる期限の目安で、期限を過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではないので、神経質になりすぎず無駄なく消費するようにしたいものです。
また、家庭での食品の捨て方は、市町のごみ回収に出すのがほとんどで、コンポスト(※)に入れたり庭や畑に埋めると答えた人は約3割と少なく、もっと堆肥化を図るなど廃棄物を有効活用するよう心がける必要があります。
「もったいない」と思う気持ちを、消費者一人ひとりが具体的な行動に移すことが大切です。
例えば「賞味期限に近い食品から購入する」ことで、店舗での廃棄は確実に減らすことができます。
また販売店には、「期限切れまでに値引き販売する」など廃棄削減への取り組み以外にも、効果的なリサイクルシステムを作っていくことが望まれます。

※一口メモ(コンポスト)
 コンポストとは、野菜の皮や食べ残しなど有機物を含む廃棄物を微生物の力で分解し、堆肥にする仕組みです。有機性の廃棄物には、窒素、リン酸、カリウムなど肥料として重要な成分が含まれているので、肥料や土壌改良材として利用されています。
 家庭向けのバケツ状のものから、自治体や企業が設置する大がかりなものまで、形態や規模は様々です。

運動を全国に広げていこう
 同協議会は、3月7日(火)に神戸市内で「食のもったいないフォーラム」を開催しました。
県立大学環境人間学部教授岡田真美子氏による「“もったいない”は古来から日本人が生き物のいのち、もののいのちを大切にしてきた証」の講演の後、消費者、事業者(食品販売店)、行政関係者によるパネルディスカッションで食品廃棄・リサイクルの現状を確認しあい、消費者と事業者相互の今後の具体的な取組みを始めるきっかけになりました。
同協議会の幡井政子会長は「今後は、さらに学校給食等の食品廃棄・リサイクルの実態を調査するとともに、消費者のための具体的な行動提案を行うほか、多数の団体に参加を呼びかけ、この“食のもったいない運動”を一層広く展開していきたい」と話しています。

 一人ひとりが「もったいない」という意識を大切に育て、行動することが求められています。
(神戸生活創造センター)

URL:http://www.hyogo-intercampus.ne.jp/syouhi/0605tokushuutekisuto.html