「勝ち」を奪う国
先頃、中国政府が外国企業に対し、デジタル家電などの中核となる製品情報を中国当局に開示するよう命じる新制度を2009年5月から導入するとの報道があった。対象となる製品は「ソースコード」開示して、検査に合格しないと中国で販売出来ないとするものだそうだ。
在中の日米欧の経済団体は、連名で中国当局に懸念を表明する方針とのことで、日米欧の反発は当然といえる。
反発の程度やその後の交渉過程でどうなるかは分からないのだけど、言うことを聞かないと売らせないぞ、というやり方は典型的な「利」の国の交渉方法。
他との差別化、優位さを生み出す価値は、弛まぬ研究と努力の果てに生み出してくるもの。その価値が「勝ち」を呼ぶ。
その「勝ち」の源泉をいくら自国で醸成する難しいからといって、安易に他所から奪えばいいという発想のままでは進歩するのは難しい。これではいつまでたっても先進国のメンタリティは持てなくなる。
本当にこんなことをやることになったら、欧米企業は勿論、日系企業ですら撤退を考えるようになるだろう。外需依存の中国経済にあって、こんな行動は自分で自分の首を絞めているとしか思えない。
ただ、単に撤退するだけで済めばよいのだけれど、もっと怖いのは、以前「中国の覇権主義と価値を生む力」で指摘したように、軍事力によって他国を侵略・併合して強制的に価値を奪い取ってしまうこと。
中国政府が軍を掌握して抑えられている間は良いのだけど、そうできなくなって、暴走するようなことになると恐怖のシナリオが現実のものとなる。
そうならない為には、相手の横暴を抑えられるだけの軍事力か、相手の要求の呑んで敵対しなくてもやっていけるだけの圧倒的な開発力、潜在力や経済力が必要になる。
もう、のんびりと構えていられる時代じゃない。
「IT製品の機密開示せよ」…中国が外国企業に要求へ
「暗号筒抜け」日米猛反発
中国政府が外国企業に対し、デジタル家電などの中核となる製品情報を中国当局に開示するよう命じる新制度を2009年5月から導入する方針であることが18日わかった。
対象はICカードやデジタル複写機のほか、薄型テレビなども含まれる可能性がある。開示を拒否すれば、その製品の対中輸出や中国での現地生産、販売が一切禁止される。企業の知的財産が中国企業に流出するおそれがあるほか、デジタル機器の暗号技術が中国側に筒抜けとなる安全保障上の懸念もある。経済産業省や米通商代表部(USTR)などは制度の撤回を強く求める構えで、深刻な通商問題に発展する可能性がある。
中国は、新制度を「ITセキュリティー製品の強制認証制度」と呼んでいる。具体的には、対象となる製品について、デジタル家電などを制御するソフトウエアの設計図である「ソースコード」の開示を外国企業に強制する。対象製品は、開示されたソースコードに基づく試験と認証機関による検査に合格しないと中国で製品を販売出来ないという、国際的に例のない制度だ。
新制度の対象としては、ソニーが開発した非接触ICカード技術「フェリカ」や、デジタル複写機、コンピューターサーバーなど、暗号機能が含まれる製品が有力。
中国政府は、ソースコードの開示を求める狙いについて、ソフトの欠陥を狙ったコンピューターウイルスや、コンピューターへの不正侵入を防ぐためと説明している。
しかし、開示内容が中国政府を通じて中国企業に漏れる恐れはぬぐえない。そのうえ、日本製デジタル機器の暗号情報も見破られやすくなり、中国の諜報(ちょうほう)活動などに利用される懸念も指摘されている。
業界団体の試算によると、日本企業の対象製品は、現在の中国国内での売上高で1兆円規模に上る可能性がある。在中の日米欧の経済団体は、連名で中国当局に懸念を表明する方針だ。
ソースコード
コンピューター言語で書かれたソフトウエアの設計図。企業の重要な知的財産で、マイクロソフトは基本ソフト「ウィンドウズ」のソースコードを機密情報として扱い、巨額の利益につなげた。ソースコードが分かると、ソフトの欠陥を突いたウイルスの作成などが容易になるため、ハッカーなどに狙われてきた経緯もある。
(2008年9月19日 読売新聞)
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