名医の条件
「たらたら飲んで、食べて、何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」
11月20日の経済財政諮問会議での麻生総理の発言。
平成18年版高齢社会白書によると、国民医療費は国民所得の伸びを上回っていて、平成15年度の老人医療費は、国民医療費全体の36.9%を占めている。今後、急速な高齢化が進むことを考えると、医療費の増大はまず避けられない。
今の3割負担が5割、6割となるときがくるかもしれない。
冒頭の麻生総理の発言もその趣旨は「努力して健康を保った人には何かしてくれるとか、そういうインセンティブ(動機づけ)がないといけない」ということであって、その発想自体は正当なもの。
しかし、高額になってしまう医療費を、保険という形でみんなに広く負担してもらうことによって、個々の医療費負担を安く抑えるという仕組み自体は、それほど悪いものとは思えない。それによって助かっている人も沢山いる。
ただ、民間の生命保険とか、ナントカ保険とかのように、保険そのものに種類があったり、年齢によって補償額が変わるとかしないから、そうした選択の余地がない部分が不公平感に繋がっているのかもしれない。
たとえば、自分は病気にならないと言い切って、日々健康に注意して、その年全然医者に掛からなかった人は、毎年支払っている健康保険額から半額なら半額還付したりするなんてのは、インセンティブの一つにもなるだろう。
ただ、毎日毎日血の滲む努力を重ねていてもなお、病と闘わなければいけない境遇の人だって当然いる。そうした人とたらたらと自堕落な生活をして病気になる人とをどう峻別していくか、といった難しい問題もあることは確か。
インセンティブもそうなのだけれど、「健康外食」のエントリーでも触れたように、普段の生活の中に、健康管理とリンクした仕組みも必要なのではないかとも思う。
篇鵲(へんじゃく)という古代中国の名医の故事にあるように、予防医学へ重心を移すときかもしれない。
皇帝が篇鵲の名声を聞き、彼に尋ねた。
「お前は三人兄弟で皆、医者だそうだが誰が一番有名か?」。
篇鵲が答えて言う。
「長兄は皆に、今のような生活のしかたではいずれ病気になるから生活を改めなさい、と養生法を説いてまわっています。ですからちっとも有名ではありません。
次兄は病気を軽いうちに治して大事に至る前に治療してしまいます。ですからこれまた有名ではありません。
ところが私、篇鵲は死にかかかった病人に刃を用い、強力な薬、時には毒薬さえもうまく使って治しますから世間では一番有名です」
首相、何もしない人の分なぜ払う 医療費で発言 11月26日午後10時18分
麻生太郎首相が20日の経済財政諮問会議で、「たらたら飲んで、食べて、何もしない人(患者)の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と発言していたことが26日に公開された議事要旨で分かった。
首相は全国知事会議で「医師は社会的常識がかなり欠落している人が多い」と発言し、陳謝したばかり。病気になるのは本人の不摂生のためとも受け止められる発言で、波紋が広がりそうだ。
20日の諮問会議では、社会保障制度と税財政の抜本改革などを議論した。首相は同窓会に出席した経験を引き合いに出し「(学生時代は元気だったが)よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる」と指摘した。
その上で「今になるとこちら(麻生首相)の方がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているからだ。私の方が税金は払っている」と述べ、努力して健康を維持している人が払っている税金が、努力しないで病気になった人の医療費に回っているとの見方を示した。
さらに「努力して健康を保った人には何かしてくれるとか、そういうインセンティブ(動機づけ)がないといけない」と話した。
URL:http://www.fukuishimbun.co.jp/modules/news4/article.php?topicsid=1&pack=CN&storyid=170552
首相の医師をめぐる発言要旨 全国知事会議
麻生太郎首相の全国知事会議での医師をめぐる発言の要旨は以下の通り。
(出席知事の医師不足に関する発言に対し)医者の確保をとの話だが、自分で病院を経営しているから言う訳じゃないけど、大変ですよ。はっきり言って、最も社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値判断が違うから。それはそれで、そういう方をどうするかという話を真剣にやらないと。全然違う、すごく違う。そういうことをよく分かった上で、これは大問題だ。
小児科、婦人科(の医師不足)が猛烈に問題になっているが、これは急患が多いから。急患が多いところは皆、人が引く。点数が入らない。点数を変えたらいいんです。これだけ激しくなってくると、医師会もいろいろ、厚生省も、5年前に必ずこういうことになりますよと申し上げて、そのまま答えがこないままになっている。
これはちょっと正直、これだけ激しくなってくれば、責任はおたくらの話ではないですか。おたくってお医者さんの。しかも、お医者の数を減らせ減らせと言ったのはどなたでしたか、と申し上げて。党としても激しく申し上げた記憶がある。臨床研修医制度の見直しについてはあらためて考え直さなきゃいけない。
URL:http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111901000918.html
この記事へのコメント
美月
少し気になったのが、毒ギョーザや事故米のようなケースで健康を損なった場合は、どうなるのだろうか?という事でした(この類の取り決めをきっかけに、有毒食品の発生も一石二鳥で抑制できれば良いのですが…)
ともあれ関係者には、是非真剣に議論していただきたいテーマでありますね…
日比野
>毒ギョーザや事故米のようなケースで健康を損なった場合は、どうなるのだろうか?
輸入停止もしくは情報開示がきちんとなされない限り、一般消費者がいくら酒用にも限度があります。
たばこは、自己責任だなどということも可能かもしれませんが、意図せず健康を損ない、その分の医療費負担を発生させるというのは、国策として避けるべきかと思われます。