定額給付金は有効か (定額給付金についての雑考 前編)
連日マスコミを賑わせている定額給付金について。前後編の2回に分けてエントリーする。
麻生内閣の不支持率が急増している。一説には、景気対策のひとつである、定額給付金が不要な政策だと否定的見方が多数を占めていることもその一因だと言われてる。
果たして定額給付金は有効なのか、はたまた、そうでないのか?
普通に考えてみれば、定額給付金を誰一人貰わないことはありえないし、貰った給付金を1円も使わない人が一人もいないこともありえない。
だから、効果あるかないかをYesかNOかで問われれば、当然、Yesで「効果は有る」。だけど、どれくらい「実効」があるかは分からない、というしかない。
巷のマスコミで散々叩いているのは、もちろん後者の「実効」がないだろうというもの。だけど、どれくらいの経済効果を持って効果があるとするのかが定義できない限り無意味な議論。
政府は経済対策を行うことで、景気を刺激して内需を拡大したい。その目的に叶うかどうかの検証こそ大切。
政府の追加経済対策と予算規模は大きくは、以下のとおり。
1.生活者対策(定額給付金) :規模2兆円
2.中小企業金融対策(緊急信用保障枠) :規模20兆円に拡大
(政府系金融の緊急融資枠) :規模10兆円に拡大
3.地方対策(高速道路料金を大幅引き下げ) :休日一律1000円
(道路特定財源の一般財源化に伴う地方委譲):規模1兆円
定額給付金がどうのこうのと騒いでいるけれど、追加経済対策全体の中でみれば、2兆円なんて1割もない。
定額減税なり、定額給付で消費を拡大したいのであれば、それによって消費者が消費を増やそうと思うかどうかが肝心なこと。
麻生内閣、不支持率が上昇 各世論調査 2008/11/17
フジテレビ「新報道2001」(2008年11月16日放送)が08年11月13日に実施した世論調査で、麻生内閣の支持率が32.6%となり、内閣発足後初めて40%を切った。また、不支持率は58.4%で初めて5割を超えた。
時事通信が2008年11月7~10日に実施した世論調査では、麻生内閣の支持率は前月比0.2ポイント増の38.8%と横ばい。不支持率は前月比2.4ポイント増の36.5%で、こちらも不支持率が上昇した。
URL:http://www.j-cast.com/2008/11/17030448.html
定額給付金「不要な政策」63% 本社世論調査 2008年11月11日0時4分
朝日新聞社が8、9の両日実施した総選挙に関する連続世論調査(第4回、電話)によると、麻生首相が景気対策の目玉として打ち出した定額給付金について、「必要な政策だと思う」は26%にとどまり、「そうは思わない」が63%と、否定的な見方が圧倒的だった。内閣支持率は37%、不支持率は41%で、前回(10月25、26日)の支持41%、不支持38%から逆転した。
定額給付金は、麻生首相が「暮らしの不安を取り除く」としているのに対し、野党などから「ばらまきだ」と批判がある。20代では「必要だ」41%、「そうは思わない」45%と接近したが、30代以上はすべての世代で6割以上が「そうは思わない」と答え、50代では75%に達した。自民支持層も「必要だ」34%、「そうは思わない」55%と否定的な見方が強い。
一方、景気回復などを前提に3年後の消費税引き上げの考えを表明した麻生首相の姿勢に対しては「評価する」45%、「評価しない」44%と二分された。景気対策を優先するとして衆議院の解散・総選挙を先送りした判断については、「評価する」46%が「評価しない」37%を上回った。
麻生内閣の支持率が40%を割ったのは初めて。男性の支持が36%(前回42%)と落ち込みが目立った。年代でみると、30代から60代で不支持が支持を上回っている。
「いま投票するとしたら」として聞いた衆院比例区の投票先は、自民30%(同33%)、民主33%(同30%)など。麻生内閣発足直後に自民が優勢となり、その後も互角か自民やや優勢の状況が続いていたが、民主が逆転した形だ。
麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいかでは、麻生首相49%(同52%)、小沢代表23%(同20%)で、麻生首相がリードを保った。望ましい政権の形は「自民中心」は29%(同33%)とやや下がり、「民主中心」が40%(同37%)だった。政党支持率は自民30%(同32%)、民主24%(同19%)など。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/1110/TKY200811100246_01.html
麻生首相の経済対策に関する会見(全文) 「ザ・選挙」編集部2008/10/30
麻生太郎首相は30日、追加経済対策について首相官邸で記者会見を行った。発言の全文を掲載する。
今回まとめさせていただきました国民のための経済対策を発表させていただきます。
はじめに現在の経済の状況について、私の認識を申し上げさせていただきたいと存じます。現在の経済は100年に一度の暴風雨が荒れている、金融災害とでもいうべきアメリカ発の暴風雨と理解しております。米国のサブプライム問題に端を発しました今回の金融危機というものは、グリーンスパン元FRB議長の言葉を借りるまでもなく、100年に一度の危機と存じます。
証券化商品という言葉がありますが、これに代表されます新しいビジネスモデルが拡大をした。しかしその中で、金融機関がそのリスクを適切に管理できず、金融市場が機能不全に陥ったと存じます。ただし日本の金融システムは、欧米に比べ相対的に安定をしております。日本の土台はしっかりしてるということです。
しかしながら、全世界的な金融システムの動揺というものは株式とか、債券市場を経て、世界のまた日本の実物経済、実体経済にも影響を及ぼしてくることは確実であろうと存じます。
こうした状況の中でなにより大事なことは、生活者の暮らしの不安というものを取り除くことだと確信しております。すなわち国民生活の安全保障であります。暴風雨を恐れて萎縮してはなりませんし、台風が通り過ぎるまでじっとしているだけでもダメです。今回の対策はこうした認識を背景に作成させていただきました。
対策は大きく分けて2つです。
1つ目は国内でできること。それは、生活者の安全保障であり金融の安定です。考えられる限りの大胆な対策を経済対策としてまとめさせていただきました。
2つ目は、国際的にしなければならないことであります。金融の安定化のために国際協調を進めます。
まず、国民の経済対策について説明をさせていただきます。概要は配布していると思いますが、その資料の通りです。今回の経済対策は、国民の生活の安全保障のための、国民の経済対策です。ポイントは、スピード、迅速にという意味です。これまでにない大胆なもの。重点を絞り、ばらまきにはしない。そして、財源は、赤字国債を出さないこと。
策定にあたっての、主な考え方を説明します。
まず、日本の経済は全治3年という基本認識のもとで、今年度から直ちに日本経済の立て直しに取り組みます。当面は景気対策。中期的には財政再建、中・長期的には改革による経済成長、という3段階で経済・財政政策を進めて参ります。
また、今回の景気対策の意義は、単なる一過性、その場だけの需要を創出することではありません。自立的な内需拡大による、いわゆる確実な経済成長につなげる必要があります。そして、経済の体質を転換し、日本経済の底力を発揮させることであろうと存じます。さらに、財政規律維持の観点から安易に将来世代に負担のツケを回すというようなことは行いません。経済成長と財政健全化の両立を目指して参ります。こうした考えに基づき、対策の財源は赤字公債に依存しません。
今回の対策の主なものを紹介します。
まず第1は、生活者対策です。定額減税については給付金方式で全世帯について実施します。規模は約2兆円。詳細は今後詰めてまいりますが、単純に計算すると4人家族で約6倍になるはずです。雇用につきましては、雇用保険料の引き下げ、働く人の手取り金額を増やしたいと存じます。また年長フリーター、ロストジェネレーションともいいますけれども、正規雇用をするように奨励します。最後、子育てについても力を入れます。住宅ローン減税、これは控除可能額を過去最大に拡大したいと思います。
第2に、中小企業金融対策であります。これから年末にかけて中小企業の資金繰りが苦しくなります。第1次補正で緊急信用保障枠を6兆円としましたが、その後の国際金融情勢がより厳しいものとなっております。中小企業、小規模企業の資金繰りをより万全なものとするために、私の指示で20兆円までこの枠を拡大します。
また政府系金融のいわゆる緊急融資枠を3兆円と前回しましたが、これを10兆円まで拡大します。合わせて約30兆円の対策となります。省エネ、新エネ設備を導入した場合に即時償却、すなわち初年度に全額償却できるようにします。金融対策につきましては金融機関への資本参加枠の拡大を行わさせていただきます。株式に対する配当課税など、現行10%としております軽減税率を延長させていただきます。
第3は地方についてです。高速道路料金を大幅に引き下げます。休日はどこまで行っても一律1000円、というわけではなくて1000円以下に、最高1000円。平日は昼間も3割引きにさせていただきます。また、道路特定財源の一般財源化に際しましては、1兆円を地方に移します。以上のようなことを行い、その際にできるものから順次実施させていただきます。法律予算の伴わないものは出来次第直ちに、次に20年度補正予算と関連法律、その次に21年度の当初予算と関連法律を順に実施をしてまいります。
次に財政の中期プログラムについて申し上げさせていただきます。今回の経済対策の財源は赤字公債を出しません。しかし、日本の財政は依然として大幅な赤字であり、今後、社会保障費も増加します。国民の皆さんはこの点について大きな不安を抱いておられます。その不安を払しょくするために財政の中期プログラム、すなわち歳入歳出についての方針を年内に取りまとめ国民の前にお示しします。その骨格は次のようなものであります。
景気回復期間中は減税を時限的に実施します。経済状況が好転したあとに財政規律や安心な社会保障のため、消費税を含む税制抜本改革を速やかに開始します。そして2010年代半ばまでに段階的に実行させていただきます。本年末に税制全般につきまして抜本改革の全体像を提示します。簡単に申し上げさせていただけるなら、大胆な行政改革を行ったあと、経済状況を見た上で3年後に消費税の引き上げをお願いしたいと考えております。
私の目指す日本は、中福祉、中負担です。福祉に関して。中福祉でありながら、低負担を続けることはできません。増税は誰にだって嫌なことです。しかし、多くの借金を子どもたちに残していくということも止めなければなりません。そのためには増税は避けて通れないと存じます。もちろん、大胆な行政改革を行い、政府の無駄をなくすことが前提であります。
次に国際的な金融・経済問題について申し上げます。まず金融機関に対する監督と規制の国際協調態勢についてであります。今回のサブプライム問題に端を発した金融危機を見ると、次のような問題が挙げられると存じます。
1つ、貸し手側の方が行ったずさんな詐欺的な融資。2番、証券化商品の情報というものが不透明。3つ目、格付け会社の格付け手法に対する疑問。このような証券化商品のあらゆる段階において不適切な行動が見られたということだと思います。さらにこうした証券化商品が世界中の投資家の投資の対象になったことで危機が全世界に広まったと思います。金融機関という本来、厳格な規制が必要とされる分野におきまして、ここまで大きな問題点を見過ごした監督体制については、大いに反省すべき点があると思います。
特に現在のような各国当局が各々監督を行う仕組みでは不十分だと思います。金融機関を監督規制する際に、いかに国際協調を構築するかについて現実的な仕組みを、来月15日にワシントンで開かれる財政に関するいわゆる首脳会議において議論したいと思います。
2つ目には格付けについての在り方です。格付け会社は債権市場発展には不可欠なインフラ、いわゆる社会的基盤であります。しかし、サブプライム問題において証券化商品に関する格付けの在り方などに深刻な問題点があったことは否めないと思います。このことが世界的な金融不安を増長したという面がありました。こうした影響力を有する格付け会社に対する規制のあり方がどうあるべきか、またアジアなどローカルな証券の格付けを行う地場の格付け会社を育成する必要があることを、首脳会議で議論をしたいと思っております。
3つ目には会計基準のあり方についてです。今回のような金融市場が大きく乱高下するような状況において、すべからく時価主義による評価損益の計上を要求することが果たして適切であろうか。時価主義をどの範囲まで貫徹させるべきか、さらに有価証券を売買するか、また満期まで保有するのかによって、いかなる評価方法が適切であるのか、国際的な合意を目指して首脳会議で議論を行わせていただきたいと思っております。
これが国際金融問題に関する私の問題意識と改革案です。
以上、国民の経済対策と金融問題の対応についてその骨格を申し上げさせていただきました。かつてない難しい舵取りであります。日本政府の総力を挙げて取り組んで参ります。国民の皆さんのご理解とご支援をお願いを申し上げて説明に代えさせていただきます。
【質疑応答】
――追加経済対策の柱となっている給付金の支給について、平成11年に実施された地域振興券と同じように、財政負担の割には景気浮揚への効果が薄いのではないかということで、野党側からはばらまきじゃないかという批判も出ている。総理は一貫して政局より政策と主張されてきているが、この中身を見ると、生活対策よりも選挙対策という声も出ている。この批判について総理はどうお考えか。もう一つ、この一部を実施される第2次補正予算について今国会に提出し、会期を大幅に延長してでも成立を期すというお考えはあるのか。
麻生 給付方式はばらまきというご批判なんだと思いますが、私は減税方式に比べまして、少なくとも今年度内に行き渡るということが第一。税金を払っていない、あるいは納付額が少ないという家計にも給付される点において、より効果が大きい方式だと私自身はそう思っております。また補正予算等々の話を第2次補正にするか、これは今後の国会の運営の中で考えていくべき段階であって、今これを今臨時国会中に出すか出さないかということを今の段階で決めているわけではありません。
――衆議院の解散総選挙の時期について。今後の国会は、早期解散を求める民主党が抵抗を強めて政策の実現は難しくなることが予想される。党内には選挙で直近の民意を得て本格的に政策を実現すべきという声もあるが、総理は解散総選挙をいつ断行するつもりか。
麻生 解散の時期につきましては、しかるべき時期に私自身が判断をさせていただきます。
――公明党も早期解散を主張しているが、先ほどの公明党太田代表との会談、解散についてどのようなやりとりがあったのか。
麻生 解散につきましては、公明党の方々のご意見、何も公明党に限らず党内でもいろいろなご意見がありましたのはご存知の通りです。したがって私自身としては、いろいろなことを勘案して、この解散の時期というのを決めさせていただくということで公明党の方々と綿密な意見を交換させていただき、十分に意思の疎通が図られたと思っております。
――公明党は11月30日総選挙という前提で本格的に準備を進めていたのではないかと思う。この点について、今後、選挙の時期に関する考え方の違いが、連立を運営していく上で何か影響があるのではないかということと、ここに至る経緯について、意思疎通に何ら問題がなかったということでよろしいか。
麻生 いろいろ特定の新聞社に面白おかしく書かれた例を知らないわけじゃありませけれども、私どもの間で、太田代表との間に、いろいろな意味で意思の疎通によって連立関係がおかしくなるというような関係はありません。
――この3年間、国民の審判を得ないまま三代に渡って総理大臣が替わった。麻生総理ご自身も文藝春秋の論文で国民の審判を最初に仰ぐのが使命だとお書きになっていたと思うが、その政権で政局より政策をずっと実現することに対する正当性についてどうお考えか。
麻生 うちは大統領制じゃないということは、よくご存知の通りだと思います。ここは議員内閣制ですから、したがって議員内閣制によって運営されているのであって、大統領制とは全く違うということであって、その正当性ということに関しては全く問題がないと思っております。また今、少なくとも世の中において政局よりは政策、何より景気対策という世論の声の方が圧倒的に私は高いと思っております。
――2次補正については今国会で出すかどうか決めていないということだったが、民主党の協力が得られるようであれば、今国会に提出することは当然考えていくということか。
麻生 私どもとしては、これは国会の運営上の話と密接に関係をしますので、それが本当に得られるのかどうか、それを見極めながらでないと何とも答えが出せない。もうご存知の通りです。そういったことでありますので、今国会にしゃにむに出しますとも出さないともきちんと言えないというのは、そういうことであります。
――地方への1兆円のことについて。現在、国の道路特定財源の中から約7000億円を地方に交付する地方道路整備臨時交付金というのがある。今回、一般財源化に当たって、臨時交付金というのは無くした上で、新たに1兆円を交付する仕組みを作るのか、それとも7000億円を地方に交付する制度は維持した上で、これに加えて1兆円を交付する制度を作るのか。
麻生 これはまだ詳細に決めているわけではありません。しかし基本としては1兆円というものを地方にということが基本です。
――解散総選挙に関連して、政局よりも政策、景気対策を求めるのが国民の声だと言った。確認になるが、現在のところは当面は解散はないと受け取っていいわけですね。
麻生 当面という言葉の定義は詳しく分かっていないので、うかつなことは言えないのですが、当面と言ったじゃないかと言われて、どの程度が当面なのかよく分からんからお答えしようがありませんけれども、少なくとも今の段階において、この補正予算というものが通るか通らないか、これは国会の対応等々を見た上で、解散の時期等々はそれに関連してくる。当然のことだと思いますが。いずれにしても私どもとしては、この政策というものをぜひ実現して、結果として国民の生活不安に答える必要があるというのが、僕は優先順位からいったら一番なんだと、私自身はそう思っています。
――総理は100年に一度の危機だと言った。そしてアメリカの大統領選挙があって、アメリカもしばらく政治空白になることが予想される中で、やはり日本が解散によって政治空白を作ることがあるのかどうか、それについての率直な麻生総理の今の考えは。
麻生 アメリカの場合は11月の4日から1月の20日までいわゆる移行期間の間がなかなか難しい。これは4年にいっぺん必ず訪れる話ではあります。そういった時期に世界第一の経済大国と第二の経済大国の日本とともに、それがかなり選挙等々でごちゃごちゃしているという状況は極めて好ましくないと、たぶん世界は思っている。事実言われたこともありますけれども、そういったことは確かに考えておかねばならぬ大事な所だとは思います。
しかし、一番大事なのは、この政治空白という言葉がどういう意味で言っておられるのかよく分かりませんけれども、少なくとも選挙になったからといって、突如、行政が無くなるわけでもありませんし、政府はそこに存在をしておりますので、議員内閣制としては、アメリカのように一挙に何千人もお役人が代わるということもありませんし、そういった意味での政治空白というのは、ちょっとこの種の話の定義は難しいところですけれども、そういった意味で、直ちに政治空白が起こると考えているわけではありません。
URL:http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_news/0810/0810300531/1.php
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