国家におけるアジャストメント(適応力について考える その2)

 
『アジャストメントを噛み砕いて考えていくと、3つの段階に分けられる。まず最初に必要なことは、「自分の欠点が分かる」ことだ。
次に大切なことは、自分の欠点を克服するための対策、つまり「自分への処方箋を書くことができるか」、ということになってくる。
そして最後に、アジャストメントを完成する上で必要なのは、これがいちばんしんどいことなのだが、対策を実行することである。「自分で書いた処方箋を、自分の力で実行する」。それがアジャストメントが完成する、適者が生存する瞬間である。』

長谷川滋利 「適者生存」より

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確かに変化に対応できるというのは大切なこと。これは、国単位でみても同じ。

たとえば、国土に資源が豊富にあって、それらを採取するだけで富を得るような国があったとしても、いつまでもその資源に頼っていて、環境の変化を読み取り、適応していくことができなければ、やがて没落してゆく。持って生まれた才能だけで未来永劫勝ち続けることは難しい。

仮に、エネルギーで考えてみると、産油国は、わざわざ原子力や太陽光といった代替エネルギーを研究開発しなくても、石油があるという「才能」だけで生きてゆける。だけど、その価値に頼り切って、その「才能」にすべてを委ねるような国家を作ってしまったとしたら、イザその「才能」が役に立たなくなる環境が訪れたら、途端に没落してしまうことになる。

変化に対応して、アジャストするためには、長谷川氏の言うようにまず、自分の欠点が分からないといけない。そして対策を考えて、自分で実践できないといけない。

その時大切になるのは、今まで自分の強みであったものを捨てて、新しい環境で求められるものに向って行ける勇気。

そしてできれば、そうした時代の変化に柔軟に対応できるだけの社会的な底力を前もって養っておくこと。

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変化ということは、時代時代で求められるものが異なってくるということ。それらに柔軟に対応できる底力とは何かといえば、下記4点になるのではないかと思う。

1.次の時代に求められるものを予測できる。    (先見力)=「自分の欠点が分かる」
2.その予測に基づいて行うべき対策が立てられる。 (対応力)=「自分への処方箋を書くことができる」  
3.成功の元になっていた自分の強みに拘らず、その対策を実践できる。(無執着・実行力)=「自分で書いた処方箋を、自分の力で実行する」
4.今は殆ど役に立たなくても、自由に研究開発できる環境があり、かつそれを次の新しい時代を切り開くかもしれないとして許容する社会的余裕    (無用の用)

今現在の利益や効率だけを求めて、マージンをギリギリまで削っていって、社会的余裕を無くして現在の環境だけに完璧にフィットさせすぎると、急激な変化についていけなくなる。


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画像ドバイ経済に変調 金融危機・原油急落…

 ここ数年で飛躍的成長を遂げてきたアラブ首長国連邦(UAE)ドバイの経済に変調が生じている。金融危機と原油価格急落の影響で成長をけん引してきた株式相場、住宅・不動産相場がいずれも下落に転じている。信用収縮により資金調達も難航し始めており、新規プロジェクトへの影響は不可避との見方が強い。天を突く高層ビルや巨大開発事業をてこにヒト、モノ、カネを吸い寄せてきたドバイの「ビジネスモデル」は転機を迎えている。

 「かかってくる電話は売りたいという話だけ」――。不動産コンサルタントのオミド・ゴルジ氏は投げやりに語った。ゴルジ氏が勤務する仲介会社はドバイ郊外の「マリーナ地区」にある。何10棟もの高層ビルを同時に建設し、世界中のクレーンの3割が集まるとされたドバイの活況を示す象徴の場所だ。

 ここで異変が起きている。10月に入ってから物件価格が下がり、大手不動産仲介業者によると「値下がり率は建設中の物件で10%。完成済みの物件でも下がっている」という。 (09:06)

URL:http://www.nikkei.co.jp/news/main/20081107AT2M3103506112008.html


画像狂い始めたプーチンの成功方程式

 1998年に世界経済を震撼させた「ルーブル危機」の悪夢が再びロシアで首をもたげてきた。ロシア経済を支えてきた原油価格がピーク時の半分まで急落、資金の海外流出が加速して金融機関の信用不安にまで発展してきたためだ。ウラジーミル・プーチン首相(56)は20日、「ロシア経済に外からのショックへの備えはできている」と熱弁をふるった。が、強気のプーチン政治を支えてきた経済成長の方程式が狂い始めたとの見方は消えない。

 「国際金融市場で流動性が足りなくなると、発展途上国への資本流入が不十分になるだろう。その場合、ロシアでは資本流出が起きる」

 ロイター通信によると、プーチン首相は、外国企業の経営トップらを集めた席上、経済用語を使いこなしながら、世界金融危機がロシアに与えている影響を分析してみせた。

 そのうえで、欧米金融当局の対応が遅れたことに触れ、「ロシアは不測の事態など許しはしない。われわれは潜在的な脅威をきちんと計算している」と言い切り、金融危機を乗り越える自信を示した。

 <「ルーブル危機」再び>

 ロシア経済の落ち込みは、あまりに急激だ。逆流の出発点は、原油の値崩れにある。

 エネルギー輸出による収入は歳入の3分の1を占め、ロシアの軍事力や経済力を支えてきた。共同通信によると、ロシア原油の代表銘柄ユラルスは1バレル=65ドル台となり、ピークだった今年7月の142ドル台から3カ月で半分以下に下落。2009-2011年の3カ年予算は1バレル=70ドルを想定しており、2000年以来の財政赤字に転落する恐れもある。

 ロシアの株式市場は、5月のピーク時から70%以上も急落、時価総額で約1兆ドル(約101兆円)が失われた計算だ。

 ロシアからの資本流出は、8、9月で330億ドルに上る。急落する通貨ルーブルを買う市場介入のため、外貨準備は今月3-10日だけで155億ドル減少、8月から11%も落ち込んだ。1-9月の国内総生産(GDP)成長率は7%以上を維持したが、ロシア紙コメルサントは「9月のGDPの伸びは事実上、止まった」と伝えている。

 政府はこれまでに資金繰りが行き詰まった中堅の4銀行を救済。市民の間では、外貨への両替が制限されるとのうわさが飛び交い、預金の引き出しなどの動きが広がっている。

 1998年のルーブル危機は、アジア通貨危機が広がるなか、原油価格の下落が財政を直撃してロシア政府の債務支払い停止(デフォルト)に発展、ヘッジファンドの倒産など世界市場を大混乱に陥れた。現在、世界第3位の外貨準備を持つロシアで、10年前の事態がそのまま再現されることは考えにくい。ただ、世界的な金融危機と原油価格の急落という、当時とよく似た悪循環の加速は、いかにも不気味だ。

URL:http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/188822/