今の評判と未来の理想(マスコミの役目と責任について 最終回)



世論に基づいた政治は今を統べる。ビジョンを掲げて世論を惹起するのは国家百年の計。

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国家を安寧せしめるにはどちらも大切なこと。メディアは前者を行うために、その時代、国や民族としての価値基準をしっかりと持って、正しい民意を吸い上げないといけないし、後者を進めるためには、国民が良し悪しを判断できるだけの正しい情報を広く提供する必要がある。

前者を間違うと国益が損なわれ、後者が機能しないと時々刻々変化する世界の潮流に流されるままのクラゲ国家になってゆく。

もしも、これらのどちらか、または両方が機能していない国家があったとき、時の政府が選べる道は二つある。

ひとつは、世論の声を無視し、将来に向けての世論の惹起も行わず、ただひたすら、政府と官僚ですべてを決めてゆくやり方。

もうひとつは、すべてを完全にオープンにして、たとえ亡国すると分かっていたとしても、完全に民意に委ねてしまうやり方。

前者は民主国家の皮を被った社会国家になる可能性があり、後者は民主国家の美名を掲げた衆愚国家に成り下がる危険を孕む。

どちらも極端な例だけれど、マスメディアが正常に機能しないとこうなってしまう危険があるということ。

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ここでさらに、メディアの機能を世論の代弁と世論の惹起の二つに分け、それぞれが正常・異常の場合を整理してみると

A)世論の代弁は正常+世論の惹起も正常
B)世論の代弁は正常+世論の惹起は異常
C)世論の代弁は異常+世論の惹起は正常
D)世論の代弁は異常+世論の惹起も異常

の4通りに分けられる。

このそれぞれの場合において、時の政府が国家運営を誤らないようにしようとすると、どういう方針を取りうるべきかといえば、以下のようにならないだろうか。


A)世論の代弁も世論の惹起も共に正常なので、国民自身が一定以上の良識を持っている限りにおいて、政策に対する民意の反映が正しいものになる。必然的に情報開示をどんどんオープンにすることで、民意=政策となる理想的な状態になる。

B)世論の代弁はマトモで世論の惹起がマトモでないから、今の政策に対する民意には従うことができるし、修正にも応じる。だけど将来の政策に対する正しい民意の形成が成されないので、将来に行う政策はその時がくるギリギリまで隠すことになりがち。イザその時がきて政策を実行するときもなるべく知られないように地味に行う。

C)世論の代弁が異常だから、原則世論の声は無視する。ただし世論の惹起は正しく行われるからもっぱら将来の事を強調して喧伝することになる。

D)世論の代弁も惹起も共に異常だから、基本的に政府が全てを決めて国民には知らせない。この場合は政府の能力がそのまま国全体の能力のボトルネックになる可能性がある。


今の日本がこれらのどの状態にあるかは一概には言えないのだけれど、少なくともAが理想であることは確か。そのためのマスコミの責任は重い。


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本シリーズエントリー記事一覧
マスコミの役目と責任について その1 「ニュースの意味付け」
マスコミの役目と責任について その2 「国民世論の代弁」
マスコミの役目と責任について その3 「世論を惹起する目的」
マスコミの役目と責任について 最終回 「今の評判と未来の理想」