トヨタショックとその思惑(日本の経済対策についての雑考 その1)

 
世界恐慌に対応する日本の経済対策についての雑考を。全3回シリーズでエントリーする。

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トヨタがとうとう1500億円の通期赤字損益を計上した。あのトヨタが、と驚きの声も上がっている。またホンダも下半期の営業損益が約1900億円の赤字という。自動車業界が軒並み崩れている。

その一方、トヨタをはじめとする日本を代表する大手製造業16社の利益から配当金などを引いた内部留保合計額は、約33兆6000億円になるという。

日本の国家予算は約80兆円(一般会計)だから、国家予算の半分くらいの貯金が民間大手企業にあるということ。
※もっとも日本政府には特別会計というへそくりが200兆円あると言われているけれど、ここでは除外する。

中でもトヨタの内部留保は約13兆円にもおよび群を抜いている。そんなに内部留保があれば、派遣切りとかしなくてもよいように思えるし、実際、共産党はトヨタに対して雇用を守るように要請したけれど、「内部留保を取り崩してまで期間社員を守ることはできない」と突っぱねた。

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一方、赤字決算発表は破たんが懸念されるアメリカ自動車業界の救済要請を突っぱねるためのものではないか、という観測もある。

赤字決算を計上し、非正規社員のリストラを進めている状態で、他社の救済をやっている余裕はない、自分も崖下に落ちそうなんだ、と。

こういった、自身の危機をアピールして、負担を回避するのはそれなりに巧いやり方ではある。

ただ、いつまでもこうしたやり方が通用するのかどうかまでは分からない。

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画像トヨタ、営業赤字1500億円 09年3月期見通し2008年12月22日19時58分
トヨタ、営業赤字1500億円 09年3月期見通し2008年12月22日19時58分

 トヨタ自動車は22日、09年3月期連結決算の業績予想を大幅に再下方修正し、通期の営業損益が1500億円の赤字になるとの見通しを発表した。赤字転落は83年6月期の連結決算開示以来初めて。ホンダも下期の赤字転落を予想しており、日本の自動車メーカーも世界的な景気後退の波にのまれ総崩れの様相を見せ始めた。

 単体決算も創業後間もない38年3月期以来71年ぶりとなる2200億円の営業赤字(前期は1兆1086億円の黒字)と予想する。

 前期の営業損益は2兆2703億円の黒字で、わずか1年での赤字転落となる。世界的な自動車販売の落ち込みと過度な円高で下期の営業利益予想は7320億円もの赤字となり、上期に稼いだ5820億円の黒字を完全に吹き飛ばす見込みとなった。

 連結売上高の見通しは21兆5千億円(前期比18.2%減)に下方修正する。

 日米欧を中心とした販売不振で、連結販売台数見通しも824万台から754万台に下方修正。販売減は同比1兆1800億円の減益要因になる。「経済市場の変化が激しい」(渡辺捷昭社長)として、毎年末発表してきた翌年(09年)の世界生産販売計画の発表は見送った。

 急激な円高で下期の想定為替レートも1ドル=100円から93円、1ユーロ=130円から123円に変更する。為替変動で、営業利益は前期から8900億円も減る見込みだ。

 トヨタは、販売減に伴い減産態勢を強化する。来年1月以降、全世界に75ある車両生産ラインのうち16ラインで2交代制勤務を半分に短縮する。国内では工場の一斉稼働停止日を設定し、1月には3日間設ける。11月末に4700人在籍した期間従業員数は、期間満了による自然減で3月末に3千人まで減らす方針だ。

 また、利益確保のため、今期1兆4千億円を見込む設備投資も来年度以降1兆円以下に減らす。工場新設や能力増強の実施時期も延期し、生産規模を縮小する。10年後半としていたハイブリッド車プリウスを生産する米ミシシッピ工場の稼働を翌年以降に延期するほか、10年稼働予定のインド第2工場の生産規模を縮小。いすゞ自動車と進めるディーゼルエンジンの共同開発は凍結を検討する。赤字転落を受け、今期の役員賞与はゼロとする。

 F1からの撤退表明など収益改善に努めるホンダも、09年3月期の下期は営業赤字に転落する見通しで、減産に伴い今年度内に期間従業員を3割近く削減する。日産自動車も年度内に派遣社員と期間従業員を全員削減。カルロス・ゴーン社長が自動車業界に対する政府支援の必要性を訴えており、日本の自動車各社も抜本的な立て直しを迫られ始めている。(福田直之)

URL:http://www.asahi.com/car/news/NGY200812220016.html



画像ホンダ、赤字転落へ 投資も縮小…自動車産業総崩れに
 
ホンダは17日、販売不振と急激な円高で、2009年3月期連結決算の業績予想を発表し、下半期(08年10月―09年3月)の営業損益が約1900億円の赤字に転落すると発表した。1990年3月期以降で、下半期の営業赤字は初めて。経営戦略を全面的に見直し、新工場の稼働開始時期の延期などで設備投資を圧縮するとともに、国内での減産を拡大する。

 日産自動車も追加減産を実施し、10月末には2000人が働いていた国内工場の派遣社員を来年3月末までにゼロにすることを公表。トヨタ自動車も09年3月期の下半期は営業損益ベースで赤字となる公算が大きい。

 米国発の金融危機を受けた深刻な消費不振により、日本経済をけん引してきた国内自動車各社の業績は総崩れとなった。生産縮小の動きは加速しており、雇用情勢の悪化は避けられない情勢だ。

 東京都内で記者会見したホンダの福井威夫社長は「わずかな経営判断の遅れが企業存続の命取りになる緊迫した状況だ」と述べた。役員報酬を来年1月から一律で1割カットすると表明した。

 ホンダによると、今年9月以降、主力の北米市場のほか世界的に販売が落ち込んだほか、円相場の大幅な上昇で収益を圧迫。この結果、09年3月期の通期見通しで売上高を従来予想より1兆2000億円減の10兆4000億円、営業利益を3700億円減の1800億円に修正した。

 08年度の自動車の世界販売計画も401万5000台から365万台に引き下げ、国内の生産拠点で5万4000台を追加減産。来年2月上旬までに期間従業員450人を追加削減する。

 設備投資の圧縮に向けては、埼玉県寄居町に建設している新工場の稼働開始時期を2010年から1年以上延期するほか、子会社の八千代工業が三重県四日市市に建設する軽自動車の新工場の本格稼働も1年余り遅らせる。10年をめどに予定していた高級車ブランド「アキュラ」の国内販売開始を白紙撤回し、投資額を従来より計600億円削減する。

 日産は、子会社を含め国内4工場で合計約7万8000台を追加減産し、日産の国内工場に来年1月時点で約500人いる派遣社員すべてを順次削減する。

(2008年12月17日20時22分 スポーツ報知)

URL:http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20081217-OHT1T00182.htm



画像2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」トヨタ内部留保13兆円 正社員化 財源は十分

 金融バブル、住宅バブルによって演出されたアメリカの好景気のもとで、アメリカむけ輸出を急増させてきたトヨタや日産など日本の自動車メーカーが、輸出が不振になるといって、いっせいに非正社員の「首切り」計画を発表しています。

非正規8万人超
 これまでトヨタなど自動車メーカーは、非正社員を低賃金で酷使し、大もうけしてきました。たとえば、トヨタ本体の正社員の平均賃金は八百三十万円です。期間社員は、二百二十~二百五十万円です。期間社員は正社員と同じ生産ラインで働いています。

 トヨタが期間社員などを大々的に導入したのは二〇〇三年からです。〇八年までに、トヨタ本体で八千人から一万八千人へと二・二倍以上に増やし、トヨタグループ全体でも、四万人から八万七千人へと、二・一倍以上になっています。

 そのなかでトヨタグループは、経常利益を大幅に伸ばしました。内部留保(隠し利益)は、〇三年度の九兆五千億円から〇七年度の十三兆九千億円へと、一・五倍近くも増やしています。非正社員の汗と涙で積み増しした内部留保です。

 こんなに内部留保を増やしながら、その最大の“源泉”となってきた期間社員を減益が見込まれるといって、放り出すようなやり方は許されるものではありません。

 派遣や期間社員などの非正社員を正社員化すれば、雇用が安定・拡大し、内需を拡大することにつながります。それは、「内需主導での経済成長」にとって不可欠の課題です。労働総研の試算では、正社員になりたいと考える派遣社員など三百六十三万人の非正社員を正社員化すれば、五兆円近くの消費需要を増やし、GDP(国内総生産)を0・8%押し上げます。選挙目当ての二兆円のばらまき「定額給付金」のGDP押し上げ効果は0・1%といわれていますから、その八倍もの効果があります。

 非正社員の正社員化は、経営者がやる気になればできることです。段ボールメーカーのレンゴーが千人の派遣労働者を正社員化する方針を打ち出しました。レンゴーの経営指標をみると、経常利益は、百億円、内部留保は千二百億円です。社員(一万人)一人当たり内部留保は千二百万円です。派遣社員(千人)を正社員化することによって、社員一人当たり内部留保は千百万円に減少します。

 レンゴーは、「安定生産継続に向け正社員にすることで要員を確保する」として、「人件費は年間数億円増える見通しだが、士気向上で生産効率向上につなげる」としています。

経営の危ぐなし
 トヨタの連結子会社レベルで非正社員の正社員化をしても、レンゴーと比較して、経営になんの問題もないことは、経営指標が示しています。トヨタグループ全体の内部留保は十三兆九千億円です。社員(三十一万六千人)一人当たり内部留保は四千四百万円です。レンゴーの四倍近くです。派遣・期間社員など非正社員(八万七千人)全員を正社員化しても、社員(四十万三千人)一人当たり内部留保は三千四百五十万円もあります。経営が危うくなる危ぐはまったくありません。

 非正社員の正社員化をはかる財源は、トヨタの例にも見られるように大企業には十分あります。

 労働総研の試算では、三百六十三万人の非正社員を正社員化するために必要な賃金増加額は、八兆円ですが、大企業の内部留保二百二十八兆円の3・5%をはき出せば可能です。日本の大企業は今こそ、雇用を守る社会的責任をはたすべきです。(日本共産党国民運動委員会労働チーム 藤田宏)

URL:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-20/2008112005_01_0.html



画像共産党、トヨタに非正規労働者らの解雇中止を要請

 共産党の志位和夫委員長は24日、党本部でトヨタ自動車の古橋衛専務ら幹部と会談し、非正規労働者らの解雇を中止するよう申し入れた。志位氏は「内部留保や中間配当を取り崩せば雇用は守れる」と主張。トヨタ側は「内部留保を取り崩してまで期間社員を守ることはできない」と述べた。(24日 21:35)

URL:http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20081224AT3S2402L24122008.html



画像大手製造業、株主重視で人員削減 内部留保、空前の33兆円

 大量の人員削減を進めるトヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社で、利益から配当金などを引いた2008年9月末の内部留保合計額が、景気回復前の02年3月期末から倍増し空前の約33兆6000億円に達したことが23日、共同通信社の集計で明らかになった。

 過去の好景気による利益が、人件費に回らず巨額余資として企業内部に積み上がった格好。08年4月以降に判明した各社の人員削減合計数は約4万人に上るが世界的な景気後退に直面する企業は財務基盤の強化を優先、人員削減を中心とするリストラは今後も加速する見通し。

 08年度の純利益減少は必至の情勢だが配当水準を維持、増やす方針の企業が目立ち株主重視の姿勢も鮮明だ。

 派遣社員などで組織する労働組合は「労働者への還元が不十分なまま利益をため込んだ上、業績が不透明になった途端、安易に人減らしに頼っている」と批判している。

 集計によると内部留保の合計は01年度末の約17兆円から08年9月末に98%も増加。この間に米国の金融資本主義が広がり「株主重視」の経営を求める風潮が日本でも強まった。増配や自社株買いなどで市場での評価を高める経営手法がもてはやされた。

URL:http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008122301000451.html



画像S氏の相場観:トヨタ赤字転落の思惑 【経済ニュース】2008/12/24(水) 09:02

マーケットの羅針盤!人気ブロガーS氏の市場展望

◆トヨタ赤字転落の思惑

  連休谷間の22日に発表されたトヨタ1500億円の赤字というニュースがありましたが、昨日のお休みの間はこの事ばかりを考えておりました。完全に憶測ではあるのですが、今後の日本経済を予測する上で重要なニュースだったと思いますので、これから起こりうる事を想定するためにこのニュースの意味するところを考えてみたいと思います。

  まず、自動車業界世界一であり、堅実経営で知られるトヨタが、米のバブル崩壊の影響から利益を6000億円に下方修正してしまった事から起こった株式の大暴落が10月後半に起こりました。世界中の株価がトヨタに連動する形で大暴落し、それは正にトヨタショックといった感じでありました。それから僅か2か月足らずで更に下方修正をして1500億円の赤字という事を発表したのですが、いくら急激な変動があったとは言え、トヨタショックから2か月も経たないうちにこれほど下方修正しなくてはならないほど経済環境が悪化しているでしょうか?

  為替に関しては当時の数字を出したころは1ドル100円近辺でありましたから、そこから1割以上も円高になっているので為替差損という意味では損益が増えるということも分かりますが、私にだって容易に予想できている円高ですから、トヨタに読めないわけがないと思うのです。絶対に読めていたはずだと思うのです・・・。

  では、何故にここで赤字転落なのかということになりますが、おそらくではありますが、米の自動車業界救済や、国内の派遣切りや、社員の解雇に対しての布石ではないかという感じがするのです。トヨタは黒字だとなれば、米自動車業界や米国民の感情は日本排除の感情を爆発させかねず、それこそ日本車に火をつける様な行動に出かねません。国内にしても黒字なのに雇用は守らないのかという話に成りかねず、微妙だが赤字に転落してしまえばその風当たりも軽くなるという判断ではないか・・・。

  あくまでも3月末の業績予測であり、もしかすると更に赤字が増えるのかもしれませんし、本当に完全な読み違いの結果による連続下方修正かもしれません。ただ、6000億円の黒字よりは、1500億円の赤字の方が、断然首切りはやりやすいし、米からの風当たりも弱いと言うのも事実であります。

  死んだふりをするほどしたたかな企業かどうかは分かりませんが、世界一を守り抜くにはこんな事も必要なのかもしれません。真相は分かりませんが、結構的を得ている可能性は高いのではないかという感じはしております。

◆為替予測

  年末のドル決済の手当てが進んでいるために円安傾向にあるように感じますが、年明けに一気に反動が出そうであります。今回は85円~88円位までの円高を予測しております。そして、90円は相当重い水準へと変わり、当分80円台での動きになるように予測しております。

  輸出産業は相当苦しい状況が続きそうですし、トヨタ赤字転落の影響も手伝ってトヨタの周辺銘柄は悲惨な状態となりそうです。自動車、精密、電気には近づかないという方針は、こういった状況がまだまだ続くという予測からです。

  ただ、どこかで必ず大規模な為替介入があるはずですので、為替はどこかで一気に反転する可能性があります。必ずしも円高がどこまでも続くということではありませんので、常に固執すること無く臨機応変に対応して行きたいものです。(執筆者:S氏<日本株第1号、カリスマブロガー>)

URL:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=1224&f=business_1224_008.shtml



画像2008年の環境レポート「地球は今・・・」日本国の品格(国家予算を見る) 2008年6月号

ほんの数年前まで、日本の国家予算についてほとんど知られていませんでしたが、一般会計だけでなくガソリン税などの特別会計の存在や、その不明瞭な使われかたがクローズアップされるようになって来ました。今、「日本」はどこへ行こうとしているのでしょうか?国家予算というものを元に日本という国を考えてみましょう。  事務局・渡辺裕文


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● 日本の一般会計の歳出総額(2007年)

 歳出総額 82.9兆円
※日本には900兆円の負債があります

社会保障      21.1兆円(25.5%)
公共事業      6.9兆円( 8.4%)
文教及び科学振興  5.3兆円( 6.4%)
防衛        4.8兆円( 5.8%)
その他       8.8兆円(10.6%)
地方交付税交付金  14.9兆円(18.0%)
国債費       20.9兆円(25.3%)

★毎月40万円の収入しかないのに、借金総額4600万円、毎月18万円の追加借金をしなければならない家庭は、どうなるのでしょう?

★国家予算には一般会計と特別会計があり、おかしなことに特別会計のほうがはるかに大きいのです(一般会計約83兆円、特別会計約200兆円)。


URL:http://www.chikyumura.org/environmental/report/2008/06/03105917.html

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