日本語で誤解されにくい文章を書こうとした場合、気をつけるべきは、論理の繋がりもさることながら、意味の限定をきちんと行うこと。日本語はSOV型言語だから、S(主語)とV(述語)の間に位置するO(目的語)がそれぞれ、どの言葉に対して掛かっているか明確にしないと混乱を招くことになる。
たとえば、以下の例文を考えてみる。
「僕は昨日美しい日本の山々を眺めてきた人に出会った。」
さて、この文で修飾関係で不明確な部分が二つある。「僕」と「美しい」の対象が何かというふたつ。
①僕が出会ったのは、今日なのか、昨日なのか?
②美しいのは、日本なのか、山々なのか、はたまた人なのか?
この二つに対してどれを修飾しているかの場合分けを次にしてみると、
① 僕が出会ったのは、美しい「日本の山々」を「昨日」眺めてきた人
①’僕が出会ったのは、「美しい日本の」山々を「昨日」眺めてきた人
①”僕が出会ったのは、「日本の山々」を「昨日」眺めてきた「美しい人」
② 「昨日」僕は、(美しい「日本の山々」を眺めてきた人)に出会った
②’「昨日」僕は、(「美しい日本」の山々を眺めてきた人)に出会った
②”「昨日」僕は、(日本の山々を眺めてきた「美しい人」)に出会った
と、なる。
とはいっても、実際に日本語の文では、直後の単語を修飾するのが普通だから、可能性が高いのは、①か②だろう。①’、①”や②’、②”は少し斜に構えたような解釈の仕方になるのだろうけれど、論理的には、こういう解釈もできなくはない。
難しいのは、「昨日」がどこに掛かっているか。ここは、”「昨日」眺めてきた人”と取るか、”「昨日」僕は”と取るかは人によって違うように思われる。
ここで、試みとして、この文を機械翻訳で英文にしてみる。ネット上ではいろんな会社から機械翻訳サービスが提供されている。当たり前のことだけど。原則として機械翻訳は「機械」が行う翻訳。だから、何がしかの規則、法則をプログラミングして、それに基づいて翻訳している筈。よって、この例文のように、修飾語がそれぞれどこに掛かっているか分かりにくい文を「機械」がどう解釈しているかを見ようという少し意地の悪い実験でもあるのだけど。
機械翻訳ツールとして、Infoseek、GOOGLE、Excite、Yahoo、nifty、So-netなどを使ってみる。
結果は次のとおり。
・Infoseekマルチ翻訳:http://translation.infoseek.co.jp/
I met the person who looked at the beautiful Japanese mountains yesterday.
・Google翻訳:http://translate.google.co.jp/translate_t
Yesterday I view the beautiful mountains of Japan to have been met.
・excite翻訳:http://www.excite.co.jp/world/english/
I met the person who had been looking at mountains in beautiful Japan yesterday.
・yahoo翻訳:http://honyaku.yahoo.co.jp/transtext
I met the person who looked at the beautiful Japanese mountains yesterday.
・nifty翻訳:http://tool.nifty.com/globalgate/
I met those who have looked at the mountains in Japan beautiful yesterday.
・So-net翻訳:http://www.so-net.ne.jp/translation/
I met the person who looked at the beautiful Japanese mountains yesterday.
・SYSTRAN :http://www.systran.jp/
I encountered the person who watches the yesterday beautiful Japanese mountains.
Infoseek、yahoo、So-netは②の解釈で翻訳し、exciteは②’に傾いたようだ。
Googleは②の”「昨日」僕は、”と解釈したまでは良かったけれど、そのあとはだいぶ苦しい翻訳になってしまった。
それに引き換え、日本の会社の機械翻訳はそれなりに日本語をきちんと解釈できているようだ。餅は餅屋か。
ただ、”「昨日」眺めてきた人に出会った”という、①、①’、①”の解釈にはあまりならないようだ。


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