集合知という市場(文章の格調について考える その3)
集合知という言葉もだんだん使われるようになってきた。集合知というのはその名のとおり色んな知が集まった状態を指すのだけれど、そこには「量」と「質」の二つの意味がある。
「量」の集合知というのは、その名のとおり知の量そのもの。何にも処理しない大量の生データとか、それらを処理して統計的なデータにしたものとか。
たとえば何かのアンケートを取ったときの回答用紙の束やそれらの集計結果なんかがそう。データの集積と蓄積、そして整理と分析。
「質」の集合知というのは、多数の人の見解の集合から導きだされるより良い「知」のこと。みんなが納得できる高い見識を指す。すなわち、アンケートの結果を結果として、そこから何を導きだすか、何が起こっているのか、何を行えばよいのか、といった的確で高度な見識と判断を導きだせるような知のこと。三人寄れば文殊の智慧。
Web2.0を迎えたネットの世界では、多くの人が双方向で繋がり、情報が共有されてゆくから、おのおのが持ち寄った知識の蓄積が「量」の集合知として堆積してゆく。そして人々同士の繋がりの広さによって、よりよい知恵が導かれ、「質」の集合知が醸成されてゆく。
あたかも、市場にくる人がおのおの自分の畑や山、海や河で採れた食材を持ち寄ってくるようなもの。それら食材が山のように積みあがったのが「量」の集合知。
そしてそれら食材の山の中から、この材料だったら、こう料理したら美味しくなるんじゃないか、と居合わせた人たちで喧々諤々やって、この料理が良さそうだ、と決まってゆくのが「質」の集合知。
ここで、食材を集めるという事と、その調理法を考える事において留意しておくことがある。それは、食材の分別と料理人の選定。
本シリーズエントリー記事一覧
文章の格調について考える その1 「ウェブ2.0革命」
文章の格調について考える その2 「「知の性能」が目に見えてくる社会」
文章の格調について考える その3 「集合知という市場」
文章の格調について考える その4 「集合知の構造」
文章の格調について考える その5 「集合知の二つの性質」
文章の格調について考える その6 「日本語文章の論理」
文章の格調について考える その7 「意味の多様性」
文章の格調について考える その8 「文章の効果とは何か」
文章の格調について考える その9 「アスキーアート」
文章の格調について考える その10 「言葉のニュアンスと意味の圧縮」
文章の格調について考える その11 「1/fゆらぎの文章」
文章の格調について考える その12 「詩人の言葉」
文章の格調について考える その13 「式神と言霊」
文章の格調について考える 最終回 「心を浄化する文章」
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