「防衛に関し、われわれの安全と理想が二者択一であるとの考えはまやかしであり、否定する。建国の父たちは、想像を超える危機に直面しながらも、法の支配と人権を保障する憲章を起草した。・・・この理想の光は今も世界を照らしており、ご都合主義で手放すことはできない。
・・・先の世代がファシズムや共産主義と対決したのはミサイルや戦車の力だけではなく、確固たる同盟関係と信念であったことを思い起こしてほしい。先の世代は、われわれの力だけではわれわれを守ることはできないし、その力で思うままに振る舞っていいわけではないことをわきまえていた。軍事力は思慮深く用いることでその力を増す・・・」
第44代アメリカ合衆国 バラク・オバマの就任演説より抜粋。
もしオバマが「共」とする範囲が全世界であれば、地域紛争に積極的に介入しなければならなくなる。世界と共にあるためには、世界全体の利益を考えないといけなくなるから。
ハードだろうと、ソフトだろうと、はたまたスマートであろうと、何のためにその力を使うのかが重要なこと。
オバマの大統領就任直前にガザは停戦に漕ぎ着けたけれど、依然として世界はオバマの態度に注目してる。
紛争が起こったら、どのような立場で、何を基準として、どうやって介入するのか、またはしないのか、そういったことを見ている。
日本にとってもひとごとじゃない。今は中東に注目が集まっているけれど、もし中国が台湾に侵攻、または併合したとしたら、アメリカはどう動くのか。今から想定して対策を考えておかなくちゃならない問題。
その意味でも、イスラエルのガザ侵攻に対してどうオバマが対処するかについて、中国はつぶさに観察しているに違いない。
アメリカは「台湾関係法」に基づいて、多数の新型武器を台湾に売却しては中国の武力侵攻に対して牽制しているけれど、いざ武力侵攻を受けたら台湾を支援するのか、中国との関係を悪化させてでも台湾を守るのかどうか。
もし台湾を見捨てるようなことがあれば、日本も同じように見捨てられることになりかねない。そのための布石は、今から打って置く必要がある。見捨てられるだけならまだしも、けしかけられて戦争の手駒にされようものなら堪ったものじゃない。
オバマは大統領就任演説で、防衛に関して安全と理想は二者択一ではないとし、世界を照らしている法の支配と人権はご都合主義で手放すことはできないと宣言した。そして、先の世代がファシズムや共産主義と対決したのはミサイルや戦車の力だけではなく、確固たる同盟関係と信念であったとも。
これを普通に解釈するなら、
「ファシズムや共産主義と同様、法の支配と人権を侵す新たなる脅威とは、確固たる同盟関係と信念で対決する。」
となる。つまり同盟関係国を「共」として、アメリカの大義に対して脅威をもたらすものとは対決するという意味になる。
もし、中国が台湾に侵攻・併合して、台湾が共産主義国家になってしまったら、明らかに台湾の人々の人権を侵してしまう。そのとき中国はアメリカにとっての脅威となる。
アメリカが台湾を守って中国と対決するということは、すなわち、ある程度の犠牲を覚悟してでも「法の支配と人権」という理想を取ることを意味するのだけれど、オバマはまた同時に「安全と理想は二者択一ではない」とも言っている。
安全のために理想(法の支配と人権)を捨てる訳ではなく、また、理想のために安全を捨てる(ファシズムや共産主義と対立して自らを危険に晒す)訳でもないということ。だけど実際は結構難しい。言うは易し行なうは難し。
理念では共産主義やファシズムは受け入れないけれど、現実には極力話し合いで解決し、武力は「思慮深く」使うに留まるぐらいではなかろうか。
理想一辺倒でもなく、現実だけというわけでもない。アメリカのバランス外交への転換。
オバマの一字「孤」と「共」。その意味と範囲をじっくり注視する必要がある。

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