中東大戦争の抑止(ガザ侵攻について 最終回)

 
ハマスの攻撃が、封鎖されたガザ地区の解放を目的としたものだとすると、イスラエルによる大規模なガザ侵攻は返って国際社会に対する宣伝になる。イスラエルの非人道性を広く訴え、国際的圧力をかけることで、その可能性は高まる。

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だけど、もっと先に狙いがあった場合、たとえば、ハマスがイスラエルの滅亡を狙っているとすると、回りの中東諸国を巻き込んで中東大戦争にして、よってたかってイスラエルを攻撃して滅ぼすか、イスラエルの国際的信任を失墜させて、世界各国からイスラエルの国家承認を無効にさせてしまうことだって考えているかもしれない。だけど、それには重大な障害がある。アメリカの存在がそれ。

衰えたりとはいえ、アメリカはまだまだ世界のスーパーパワー。地上戦にさえならなければ、アラブ諸国を敵に回しても負けることはない。

アラブ諸国もイスラエルのバックにアメリカが要ることで迂闊に手を出せない。それに正規戦ではイスラエル軍だって中東では群を抜いて強いし、国家としてみても、現時点で食糧自給率が95%以上もある。簡単に屈する国じゃない。また今回のガザ侵攻も、ガザ沖合の大規模ガス田を狙っているという観測もあるから、国家安全保障という意味合いからみても着々を手を打っているのかもしれない。

逆にいえば、アメリカがイスラエルを支持してくれている今のうちに盤石の体制を取っておきたいのかもしれない。

裏を返せば、イスラエルはそれだけアメリカの影響力が弱まるのを恐れているとも言える。

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世界各国がイスラエルの軍事行動に対して即時停戦を求めているのに対して、アメリカだけがイスラエルを支持している。国連が停戦に向けての介入ができない反面、アメリカが支持を表明することで、中東戦争に巻き込まれることを食い止めている面もある。世界のスーパーパワーのアメリカがバックについていることで、回りの中東諸国がビビッて全面戦争に踏み込めない。

ただ、やはりそれでも宣戦が拡大しないだけで、全然良いことじゃない。今この瞬間にもガザの人々は死んでいる。

もしかしたら世界中が停戦への働きかけをする中、アメリカはひとり悪者になって、中東諸国を牽制することで、中東大戦争になるのを食い止めつつ、頃合いを見計らって停戦介入に動く、というのは少々好意的に過ぎるか。

もっと怖い想定もある。むしろ逆にイスラエルこそが中東大戦争を望んでいる、というのがそれ。

アメリカがバックにいる限り、中東でイスラエルは無敵。なんとなれば、核を使えばガザなんて一発でカタがつく。だけど、ガザごときで核を使うのは、周辺諸国からの報復攻撃を考えると割に合わない。やるなら、中東全域に一斉に核での先制攻撃で反撃を受けることなく終わらせたい。そんな想定。

だとすると、中東全域が乗ってくるまで、ガザ侵攻は絶対に終わらないことになる。

考えたくはないことだけれど、中東諸国が誘いにのらず我慢している間に、国際圧力を高めて即時停戦に持っていくしかないかもしれない。

いずれにせよこれ以上の被害が拡大しないことを祈る。

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