テロリストとの戦い(ガザ侵攻について その2)

 
ガザ地区の人々は頭上で白燐弾を使われる限り、建物に逃げ込むことになる。そこへ空爆。逃げるところがない。

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空爆で目標とするのは普通軍事施設になるけれど、相手はテロリスト。ゲリラ戦になるから、どこが軍事施設かはっきりしない。もちろん軍事車両や倉庫らしきものは破壊するのだけれど、肝心要の司令部がどこにあるかなんて良く分からない。ハマス幹部を狙うんだといってもそんな簡単な話じゃない。ガザのような狭い地区だとワザワザ司令部なんて置かずに携帯トランシーバーかなんかで移動しながら指揮できるだろう。

しかも市街戦だと、建物の其処彼処に逃げ込んだハマスが携帯型迫撃砲で攻撃してくる。もちろん反撃するのだけれど、建物を破壊することになるから、逃げ込んで閉じこもっている民間人の巻き添えは殆ど避けられない。たとえ、国連学校の建物であってもそれは変わらない。

国際赤十字の調査では、イスラエル軍から別の建物に非難するように指示されて、そのとおりにしたガザ地区の民間人が、その建物ごとミサイルで爆破されたことが分かってきている。

軍事評論家の神浦氏によれば、こうした事は、イスラエル軍の連携不足による誤爆ではないかと言っているけれど、殺されたほうはそんなこと知ったことではないし、国際世論もそう思わない。

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誤爆であってもそうでなくても、市街地で非対称戦を行うこと自体が既に無謀。民間人の安全を保証することが極めて難しいから。

ならば、最初から民間人をガザ地区から逃がしておけばいいじゃないか、とも思うのだけれど、現実には難しい。ハマスが便衣兵となって、民間人と一緒に地区外に逃げるから。地区周囲を完全封鎖してひとりひとり検問・身体検査するという方法も考えられるけれど、検問所自体がハマスの自爆攻撃に遭う可能性もあるから、やりたくないのだろう。

結局イスラエル側からみれば、地区周囲を完全封鎖して一人も逃がさないようにして攻撃するのが一番手っ取り早いことになる。

便衣兵は非常に厄介。始めから民間人を盾にするテロリストと正規軍が市街戦をすると民間人をも虐殺しなければならなくなるのは避けられない。

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アニメやマンガだと、人の姿をした妖魔かなんかが夜な夜な殺しまわったりするのを正義の味方の主人公がやって来て狩る(やっつける)なんてのがあるけれど、正義の味方は妖魔を探知できる特殊な能力を持っていたり、探知危機を持っていたりする。

だけど、現実にはそんなものはない。

イスラエルは、最初から民間人の犠牲か完全な殲滅を覚悟しているのかもしれない。

少なくともこれ以上の虐殺を避けるには、国連軍が介入して、ガザ地区内の一部に安全地域を確保してそこに民間人を収容するくらいしか手はないように思える。

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画像ガザで民家砲撃 市民30人が死亡 イスラエル軍の誘導で避難 (NHK朝ニュース 1月10日)

[概要]今朝7時のNHKテレビのニュースでは、イスラエル軍の地上侵攻で市街戦が続くガザで、昨日、イスラエル軍の攻撃で民家が砲撃され市民30人が死亡したと報じた。

 この民家にはイスラエル軍の誘導で付近の住民約100人が避難しており、犠牲になった30人はこの避難民たちだという。

 イスラエル軍は先日も、ガザにある国連運営の学校を砲撃し、避難していた市民40人を死亡させている。イスラエル軍の攻撃で相次ぐ市民の犠牲に、国際社会からイスラエル非難の声が高まることは間違いない。

[コメント]先日、イスラエル軍は国連が運用するガザの学校を砲撃し、そこに避難していた40人の市民を殺している。この件に対してイスラエル軍報道官は、「その学校から攻撃を受けたので反撃した」と正当化したが、学校にいた国連関係者が付近にハマスなどの戦闘員がいなかったと証言している。

 今回の砲撃はさらに最悪の状況である。それはイスラエル軍の誘導によって避難住民が集められた民家が砲撃されたからである。イスラエルに憎悪を持つ人は、これらの砲撃はイスラエル軍が意図的に一般市民を虐殺したと思うだろう。

 しかしこれはイスラエル軍の未熟な市街戦・戦術が招いた誤爆なのである。どこが未熟かと言えば、無人偵察機によって得られる情報と、地上部隊の情報が連結されていないことの未熟である。

 イスラエル軍の地上戦闘員にとって、市街戦では戦闘員と一般市民を分離させることが最優先の課題である。そのためには武装していない市民を特定の施設に集めて戦闘員と分離させる。この特定の施設がイスラエル軍によって砲撃された民家や学校である。

 市街戦を上空から監視するイスラエル軍の無人偵察機は、体温などの赤外線反応から、特定の場所に多く集まる避難民を、攻撃のために集結する戦闘員と誤認してしまう。その集まる位置をイスラエル軍の砲兵隊に通報し、学校や民家への砲撃要請を行うのである。こうした誤認・誤射で民間人犠牲が大量に発生する。

 だからといってイスラエル軍は誤認・誤射を正当化できない。このような無人偵察機の戦術的な未熟はすでに指摘されていたからだ。イラクのファルージャの市街戦では、負傷者が運び込まれた病院が同じような砲撃(爆撃)を米軍から受けている。米軍は夜間に多くの人間が出入りする建物を武装勢力の軍事拠点と誤認したからだ。それが攻撃された病院だった。あの時も、米軍は「砲撃(空爆)した施設から攻撃を受けたため反撃した」と弁明している。そのように説明すれば、誤認・誤射が正当化されると思ったのだろう。

 今回の民家砲撃を正しく調査すれば、無人偵察機と地上戦闘員の連携のなさの、戦術的未熟として原因が解明されるのだ。しかしイスラエル軍は、今回も「民家から攻撃を受けたから反撃した」と繰り返すだろう。これがイスラエルが直面する市街戦の無謀さである。

 ここで分かったのは、イスラエル軍がガザ侵攻の第3段階(※)として、大規模な市街戦に突入するという進展にイスラエル軍は耐えられないことだ。今回の民家砲撃事件を受け、イスラエルは停戦を求める国際世論に押されて、休戦に向けた模索を真剣に始めることになる。

※ イスラエル軍のガザ侵攻作戦の第1段階は、ガザを包囲(海面も含む)して、空爆と砲撃によるハマスの主要拠点を攻撃する。第2段階は、限定的な地上部隊をガザに侵攻させ、ハマスの分散された拠点と地下トンネルなどの破壊(限定)を行う。第3段階で、大量の予備役を招集し、ガザで大規模なハマス掃討作戦を実施する。というものである。

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