非対称戦の悲劇(ガザ侵攻について その1)

 
ガザでの戦闘および安全保障について考えてみたい。全3回シリーズでエントリーする。

ただし、今回は感情抜きで理屈中心でリアルに現象を考えてみたい。

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ハマスからの攻撃に端を発するイスラエルのガザ侵攻。

戦闘は、イスラエル軍とハマスを中心とするテロリスト。テロリストといえば何やらカッコイイ風に聞こえるかもしれないけれど、日本人的に分かりやすく言えば便衣兵。民間人の格好した敵。基本的に非対称戦では人道的な戦いには絶対ならない。テロリストは便衣兵のように民間人の影に隠れて、民間人の人命を盾にする。悲しい現実。

なぜそういう手段にでるかというと、民間人(文民)を戦闘の対象としてはならないという取り決め(ジュネーブ諸条約の第四条約、第一、二追加議定書)があるから、民間人を盾にすれば、敵の攻撃が緩むことを期待して。

イスラエルの攻撃について非人道的だという非難があるけれど、その内容を一言でいえば、民間人の殺傷とその手段になるかと思う。

今問題とされているイスラエルのガザ住民の殺傷とその手段とは、米流時評さんが指摘されているように、いわばナチのホロコーストを彷彿とさせる手段で民間人を虐殺しているということ。たとえば、囲い込んで逃げ場をなくしておいて空爆とか、銃をつきつけて避難場所へ集めておいてその建物へ砲撃とか。

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イスラエルは照明弾(?)として、白燐弾を使っているそうだけれど、市街地でこれを使うと付近住民の行動を著しく制約することになる。

白燐弾は、通常目標マーキングや標定弾に使用する弾で、充填する白燐が大気中で自然燃焼して透過性の極めて悪い煙を発生させることを利用した発煙が主目的の弾。

砲弾は、内部に充填された白燐を貫通するように炸薬筒が内蔵され、爆発時に白燐を粉砕しながら弾殻を破裂させる構造を持っている。飛散した白燐は、空気および空気中の水分と反応して、五酸化二燐に、さらにその五酸化二燐が空気中の水分と反応して燐酸になる。

白燐は大気中で自然発火する性質を持っていて、白燐によって火傷をした場合、白燐が肉や骨まで浸透して、体内で無くなるまで燃え続け、苦痛と、内臓障害を与えると言われている。人間の経口摂取による半数致死量は体重1kgあたり0.7mg程度というから140mgも飲めば死んでしまう毒物。

また、白燐が燃えて(酸化して)できる五酸化二燐は、濃度の高いものを浴びると酷い咳に見舞われる可能性があるものの、煙幕程度の濃度では死ぬことはないらしい。

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イスラエルはこの白燐弾を空中爆発で使っている。

いろいろ流されている映像をみれば分かるけれど、空中爆発した白燐弾は、飛び散った白燐が燃えながら猛烈な煙を発しながら落ちてくる。まるで火山が噴火して火の雨が降ってくるようなもの。

普通に考えれば、頭上から火の雨が降ってきたらまず逃げる。だけど地面に伏せたところで火の雨相手には意味がない。すると、火の雨を避けるには軒下とか建物の中とか、どこかの穴の中とかに逃げ込むしかない。しかも猛烈な煙が回りに充満するから、視界に入った手近な建物に逃げ込むくらいが精一杯。

また運良く建物内に逃げ込めたとしても、いつあの火の雨が振ってくるか分からないから、一旦隠れたら最後、簡単に外には出られない。だから市街地で白燐弾を使うということは、人々を建物などに押し込めてしまうことを意味する。

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