金利の特権(価値と貨幣について考える その10)
利子とは、貸借した金銭などに対して、ある一定利率で支払われる対価。特にお金に対する利子を金利と呼ぶこともあるけれど、要は、お金を借りたら、熨斗をつけて返すという決まり。今の世の中では、借りたお金を返済するときに、元金に利子をつけて返すのが当たり前になっている。
この利子というものを価値の尺度から考えてみる。
売買行為において、貨幣で示される価値が、何某かのサービスなりモノの持つ価値と等価でなければならないとすると、お金の額と価値はその値打ちにおいてイコールであるということになる。
この前提で、お金を借りるということを価値という観点で見てみると、お金を借りた人は、借りたお金の額と同じ価値を「借りて」いるということになる。
価値を借りるということは、当然時間によって減ってゆく「価値」を借りるということだから、借りる期間が長ければ長いほど、借りた価値は目減りしてゆく。だからお金を借りた人は、返すときには、目減りした価値分だけ、上乗せした価値を用意しないと、借りたときの価値と同じにはならない。
元本を揃えるだけでも、返済すべき「価値」は増えているのに、今の社会では、利子として更に「価値」を要求される。お金を借りた人は、借りている間にうんと価値を創造しなくちゃいけない。結構キツイ。
しかも利子には、単利と複利があって、単利は元本を変化させずに利子を決めるけれど、複利は元本に利子を加えて次回の利子を決める。利子が利子を生むのが複利。
もしもお金を複利で借りた場合には、当然返すべき価値の総量はもっと多くなる。利子が利子を生むように、価値が価値を生んで、しかもそれらの価値全部が、一番最初にその価値を創造した元締めのただ一人に戻ってくるようなものでない限り、釣り合いが取れなくなってしまう。
これが利子そのものが持つ価値への特権。だから金を貸す側は、最初に「価値」を貸し出しさえすれば、黙っていてもそれ以上の減価しない「永遠の価値」を手に入れる特権を得ている。
本シリーズエントリー記事一覧
価値と貨幣について考える その1 「価値を規定するもの」
価値と貨幣について考える その2 「価値が内包する時間」
価値と貨幣について考える その3 「価値の発見と経験」
価値と貨幣について考える その4 「価値と値段」
価値と貨幣について考える その5 「時間を凍らせる」
価値と貨幣について考える その6 「富の蓄積」
価値と貨幣について考える その7 「市場が飽和するとき」
価値と貨幣について考える その8 「規制と流行」
価値と貨幣について考える その9 「貨幣の持つ2つの機能」
価値と貨幣について考える その10 「金利の特権」
価値と貨幣について考える その11 「ゲゼルマネー」
価値と貨幣について考える その12 「地域通貨とスイカ」
価値と貨幣について考える 最終回 「価値の本質」
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