富の堆積(価値と貨幣について考える その6)


ある商品が市場に投入され、多くの人々に広く受け入れられると、その商品は時間と共に市場全体に広がってゆく。

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別の言い方をすれば、何某かの価値は、所有権の授受によって居場所をかえながら、富となって社会に広がってゆくということ。

尤も、広がってゆくといっても生生流転の法則がある限り、その富は未来永劫不変という訳ではなくて程度の差こそあれ、価値は時間減価してゆくから、長い年月の間にはいつかは消えてしまう。

だから、国家や社会が豊かで富に溢れているというのは、何かの価値が富として姿を代えて、時間減価によって完全に無くなってしまう前に別の価値が次々と生み出され富に置換されて、社会にどんどん堆積している状態のこと。あたかも川の流れの様に、または風のように価値が何処までも吹き渡ってやまない中にあって、始めて豊かさは存在できる。

そしてその豊かさには、河の大きさによる程度の差があって、どこまで周りが潤されるかは、河の水量できまる。つまりその価値を持つ商品の生産力とその供給能力がどれだけあるかで富の広がる範囲が変わるということ。

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人間にとって、殆ど無限に近いほど供給される商品があった場合、それが市場に完全に行き渡りさえすれば、それを欲する人なら誰でも手に入れることができる。だけど数に限りがあるような商品の場合はそれを欲する人同士での争いになる。希少価値を巡る争い。

そんなとき普通は、その価値の値段が上がることによって、調整されることになる。ネットオークションの様に、一番高値をつけた人がその価値の所有権を得る。公平といえば公平な方法。

だけど、そうやって手にいれた商品であったとしても、やはり、生生流転の法則、諸行無常の法は働いていて、時間と共にその価値は減価してゆく。ときには壊れることによって、またあるときにはもっと価値のある新しい商品の出現によって。


本シリーズエントリー記事一覧
価値と貨幣について考える その1 「価値を規定するもの」
価値と貨幣について考える その2 「価値が内包する時間」 
価値と貨幣について考える その3 「価値の発見と経験」 
価値と貨幣について考える その4 「価値と値段」
価値と貨幣について考える その5 「時間を凍らせる」 
価値と貨幣について考える その6 「富の蓄積」 
価値と貨幣について考える その7 「市場が飽和するとき」
価値と貨幣について考える その8 「規制と流行」 
価値と貨幣について考える その9 「貨幣の持つ2つの機能」 
価値と貨幣について考える その10 「金利の特権」
価値と貨幣について考える その11 「ゲゼルマネー」 
価値と貨幣について考える その12 「地域通貨とスイカ」 
価値と貨幣について考える 最終回 「価値の本質」

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