価値と値段(価値と貨幣について考える その4)
物の値段は価値そのものだけでは決まらない。物を作って店頭に並べるまでの費用とそれを欲しいと思う人の財布との兼ね合いがものを言う。
物を作る為の労働価値にも、物を使うことで得られる効用価値にも、どちらにも時間というパラメータが含まれていて、それらは更に、時計の針で測ることのできる「客観的時間」と個人の使い方でその密度が変わる「主観的時間」のふたつに分けられる。
物の価値を「客観的時間」と「主観的時間」の観点で眺めてみると、物の価値における「客観的時間」とは何かというと、生生流転の法則に依拠した、時間経過とともに価値のあり方を変えさせるパラメータ。
それに対して物の価値における「主観的時間」とは何かというと、その物が如何なる効果・効用を持っているかという、経験や発見によって付加される価値のパラメータになる。
前者は、商品の賞味期限や有効期限によって表され、後者は商品の味や品質、信頼性やブランドあるいは伝統といったもので表される。
物が先天的に持っている価値および後天的に付加された価値が、値段にどう表れていくかというと、自由市場においては、原則的に需要と供給のバランスで決まる。
売る側は生産コスト以上で売りたいし、できればうんと儲けが欲しい。だけど、同じ商品がふんだんに市場に溢れていれば、安いものから売れていくのが道理。
だから、市場の値段より高く売りたい人は、その商品が他のものより違ったものであるということをお客さんに認知してもらって、安売り競争の広場から脱出しなければいけない。平たくいえば、うちのリンゴは他所のより甘いです、とか、他所のより日持ちしますよ、とか言って差別化をする。
物の価値が内包する「客観的時間」をコントロールするためには、生生流転の法則に逆らわなくちゃいけないし、物の価値が内包する「主観的時間」をコントロールするためには、よりお客さんのニーズに沿った品種改良・新機能開発が必要になってくる。
本シリーズエントリー記事一覧
価値と貨幣について考える その1 「価値を規定するもの」
価値と貨幣について考える その2 「価値が内包する時間」
価値と貨幣について考える その3 「価値の発見と経験」
価値と貨幣について考える その4 「価値と値段」
価値と貨幣について考える その5 「時間を凍らせる」
価値と貨幣について考える その6 「富の蓄積」
価値と貨幣について考える その7 「市場が飽和するとき」
価値と貨幣について考える その8 「規制と流行」
価値と貨幣について考える その9 「貨幣の持つ2つの機能」
価値と貨幣について考える その10 「金利の特権」
価値と貨幣について考える その11 「ゲゼルマネー」
価値と貨幣について考える その12 「地域通貨とスイカ」
価値と貨幣について考える 最終回 「価値の本質」
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