価値を規定するもの(価値と貨幣について考える その1)


価値と貨幣について考えてみたい。全13回シリーズでエントリーする。
(今回の思索は、「商品価値について」のシリーズエントリーを土台としていますので、こちらも参照いただければ幸いです。)

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WEB辞書によれば、価値というものは次の3つに定義されている。

1.物がもっている、何らかの目的実現に役立つ性質や程度。値打ち。有用性。
2.あらゆる個人・社会を通じて常に承認されるべき絶対性をもった性質。真・善・美など。(哲学)
3.商品が持つ交換価値の本質とされるもの。(経済)

ここでは、主に1.および3.の定義に立脚して考えてみる。

価値というものを「物がもっている、何らかの目的実現に役立つ性質や程度」と定義した場合、まず考えるべきは、その目的が何で、誰のためのものかということ。価値を必要とする主体は誰かということ。

たとえば、キャベツを例にとって考えてみると、その目的は一般には食べるため。そして誰のためのものかといえば、人間やキャベツを食べられる一部の動物や紋白蝶の幼虫のような青虫達のためのものということになる。

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ところが、野菜嫌いや野菜アレルギーの人にとっては、キャベツは食の対象から殆ど外れているし、キャベツに含まれている菜種毒(アリルカラシ油)に対する耐性のない昆虫や幼虫にとっては、値打ちがあるどころか自らを死に至らしめる悪しきもの。

物は、それ自身が持つ性質とその性質を何らかの形で発現または運用することで、その価値が発揮されるけれど、そこには、誰にとってのものか、何のためのものなのか、といった前提によってその中身が規定される。

誰にとっての、何のためのものかという要素が、価値の中身を規定するということは、ひらたくいえば、なんらかの「命」がその対象の「価値」を決めているということ。

そしてさらに、その「命」の性質や嗜好の度合いによってもその「価値」の程度は変わる。

先ほど、述べたように野菜アレルギーの人にとっては、キャベツはあまり価値がないけれど、ベジタリアンにとっては「価値」ある存在。


本シリーズエントリー記事一覧
価値と貨幣について考える その1 「価値を規定するもの」
価値と貨幣について考える その2 「価値が内包する時間」 
価値と貨幣について考える その3 「価値の発見と経験」 
価値と貨幣について考える その4 「価値と値段」
価値と貨幣について考える その5 「時間を凍らせる」 
価値と貨幣について考える その6 「富の蓄積」 
価値と貨幣について考える その7 「市場が飽和するとき」
価値と貨幣について考える その8 「規制と流行」 
価値と貨幣について考える その9 「貨幣の持つ2つの機能」 
価値と貨幣について考える その10 「金利の特権」
価値と貨幣について考える その11 「ゲゼルマネー」 
価値と貨幣について考える その12 「地域通貨とスイカ」 
価値と貨幣について考える 最終回 「価値の本質」



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