中国は空母の建造にも着手している。2009年から、上海で空母建造を始め、2015年までに5万~6万トン級の中型艦2隻の完成を目指すという。また、ロシアの協力を仰ぎながら、艦載機パイロットの養成にも着手している。
空母は当然艦載機を搭載できるから、空母を持つということは、空母の活動範囲内での制空権をも持つことを意味する。最も制空できうる戦闘機を搭載することが前提の話なのだけれど、制空権を持てば対潜哨戒機の追尾も排除することができるから、その分潜水艦も自由に行動することができる。もし哨戒機が潜水艦を追尾できずに自由に行動されてしまうと、付近を航行する船は近くに潜水艦がいても分からなくなる。魚雷で攻撃されたら一巻の終わり。
もっとも日本も中国の真珠の紐戦略に対して何にもしていない訳じゃない。2008年10月には、インドと首脳会談を行なって、両国の外相、防衛相間の対話や、海上自衛隊とインド海軍の交流、テロ対策の協議などを盛り込んだ、日印安保共同宣言を締結してる。
中東から日本に至るシーレーンのかなりの部分を占めるのはインド洋だから、日本とインドが安全保障条約を結ぶということは、この海域の制海権・制空権を確保するということについては、物凄く意味がある。
ただし、この日印安保は、日本の国益を守るという意味では確かに意義があるのだけれど、世界の権益を守るという国際貢献的な意味においては、不十分。中国の様に、各所に拠点を構えたり、空母を持つなりして、世界のためにシーレーンを守るのだ、という姿勢を見せないとなかなか世界からはそう思ってもらえない。そういうことは留意しておくべきだろう。
しかも、日印安保だけでシーレーンが完全にカバーできるというわけじゃない。東シナ海あたりは難しい。もしも中国の潜水艦や空母に、マラッカ海峡なり、台湾海峡なりを封鎖されたらどうなるか。海峡を迂回なんかしたら莫大な費用が掛かってしまう。全く石油が入らないよりはマシだけれど、それでも十分打撃を受けることは間違いない。
だから、日印安保があるからもう大丈夫ではなくて、シーレーンの急所(チョークポイント)を抑えられたときにどう対応するかについても考えて置かなくちゃならない。

この記事へのコメント
美月
かつて鎌倉幕府を要害の地とした「切通し」タイプの物騒な通路が、たまたま海に置いてあるもの…と理解してよい…ですか?
日比野
2/4付の記事の挿絵にチョークポイントを挙げていますが、航路上どうしても狭い海峡を通らねばならない海域です。
どうしても通らねばならないことはないそうなんですが、迂回すると燃料費が嵩んだりしますので、余程問題がない限りチョークポイントを通過する航路をとるようです。