「中国には広い沿海部がある。領海主権と沿海部の権益を守ることは中国軍の神聖な職責だ」
2008年12月23日に、中国国防省の黄雪平報道官は記者会見でこう述べた。
中国は、マラッカ海峡近くのインドネシア領の島に潜水艦基地を建設しているし、米国務省の内部リポートでは、中国はパキスタンやバングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、タイ、南シナ海の島などに潜水艦用の基地や施設を設けていると報告されているという。
その意図はいろいろ憶測されているけれど、「領海主権と沿海部の権益を守ること」という中国国防省・黄報道官の言葉を素直に受け止めるならば、中東からの石油のシーレーン防衛のためというのが真っ先に頭に浮かぶ。
こうした、シーレーンの各ポイントに基地なり拠点なりを作っていく方法は、真珠の紐戦略(string of pearls strategy)と呼ばれている。文字どおり紐に通した真珠(拠点)を適度に配置することで、シーレーン全域の制海権を確保する方法。
先ごろ、ソマリア周辺沖の海賊に対処するため、海上自衛隊の艦船を派遣することが決まったけれど、石油を国家維持の生命線と考えるのなら当然の処置。だけど本当はソマリアだけじゃなくて、それこそ中国のように各所に基地を置くなり、常時自衛隊の艦船を張り付けてシーレーンを守らなくちゃならない。
これまではシーレーン防衛をアメリカに依存していたけれど、アメリカの覇権力後退に伴って、もうそんなことが出来なくなってきている。そこに中国が肩代わりしようと着々と手を打っている。この中国の真珠の紐戦略は、中国全土の国益に資するから、中国内部の政争による「指桑罵槐」なんかとは訳が違う。確実な国家戦略。
日本に戦略眼が無いといっても、これに対して何のアクションも起こさないのは、いくらなんでも平和ボケに過ぎる。
中国にシーレーンの制海権が抑えられたら、万事窮す。石油パイプラインを止められたくなければ金を払え、といったどこかの国がやっているような脅しが日本に対していつでもできるようになる。

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