「選んだのは耕平(だんな)であって薫(おねえ)さんじゃない・・・・・・選ばれた薫(もの)が選ばれなかった紀子(もの)に対して気を遣う必要はないんじゃない。選ばれなかった紀子(もの)に対して気を遣うのは選んだ耕平(もの)のするコトよ」
「理屈だよ それは・・・」
もう20年以上も前になるのだけれど、漫画家のたがみよしひさ氏の代表的作品に「軽井沢シンドローム」というのがある。
別荘地・軽井沢に住む若者たちの青春群像を描いた作品なのだけれど、漫画界に技術革新をもたらした名作とも言われている。
その理由は、漢字に本来の読み方でないルビをふったり(本気と書いてマジとルビをふるなど)、コマの間や背景のポスターなどに作者のツッコミや近況報告などが手書き文字で書きこんだりなど、当時としては斬新な試みだった。
もっとも漢字にルビを振るという行為そのものは、昔は当たり前の事だった。明治期の新聞や雑誌なんかは、すべての漢字のルビを振る「総ルビ」で作られていた。朝日新聞も昭和20年までは記事には全部ルビが振ってあったそうだ。
明治大学の齋藤孝教授は、どんな難しい漢字が出てくる文章でも総ルビにすれば読めるのだから読ませないのは間違っているとルビを振ることを提唱している。
面白いのは、齋藤教授の著作である『理想の国語教科書』に、太宰治の『走れメロス』を入れるとき、「嗄れ声」の振り仮名で考え込んだという。「嗄れ声」は二箇所に登場し、一つは若いメロスで、もう一つは年かさの王のもの。
齋藤教授は、両方とも「しゃがれごえ」とすることもできたのだけど、メロスの方には「しゃがれごえ」とルビを振り、王の方には「しわがれごえ」と振った。声に出して何度も読んでみると、この方がぴったりに感じられたからだという。
こういった同じ言葉でもその場面や対象によってルビを変えることは、先の「軽井沢シンドローム」でのルビの振り方に通ずるものがある。
ちなみに「軽井沢シンドローム」の登場後、漢字に本来の読み方でないルビをふって読ませる手法は、漫画界で大流行して、いまやどの漫画でも普通に使われる手法にまでなっている。
漢字に本来の読み方でないルビを振るというやり方は、漢字本来が持つ意味と、ルビで表されるところの口語の意味の二つをその言葉に持たせることになるから、意味に立体性を持たせることを可能にしている。

これは、「歴史的かなづかひ」で表記された書き言葉を、読むときには、口語発音での話し言葉を使って喋ることと質的には変わらない。
だから、たとえば漢字にルビを振るように、「歴史的仮名遣ひ(れきしてきかなづかい)」に現代仮名遣いのルビを振ってやれば、歴史的仮名遣いの文章を残したまま話し言葉で読めるから、仮名遣い問題は完全解消とはいえないまでも、かなりの部分は解消するのではなかろうか。
「軽井沢シンドローム」という漫画作品中で、注目を集めたこの手法。形は変われど、福田恆存氏の主張は現代マンガの中に、引いては日本文化の中に甦える可能性を示してる。


概要
別荘地・軽井沢に住む若者たちの青春群像を描いた作品。コミックスは全9巻だが、掲載誌が当時月2回刊(毎月15日・30日発売、現在は週刊誌)だったこともあり連載期間が長く、初期と後期の絵柄の違いが顕著である。また、登場人物が多く相関関係が複雑なことも特徴のひとつとなっている。
同じ登場人物の絵にシリアスな場面で使われるリアル(八頭身)キャラとギャグで使われる二頭身キャラがあり、しかもそれらがコマごとに入れ替わって描かれるため、連載開始当初はとまどった読者も多かった。
作者のオタク趣味が反映され、ガンダムを初めとするパロディがしばしば登場する。またクルマなどメカニックの書き込みはリアル志向であり、現代の自動車マンガを先取りしていたと見ることもできる。
コマの間や背景のポスターなどに作者のツッコミや近況報告などが手書き文字で書き込まれることが多く、それもまた作品の魅力の一つとなっていた。
本作品の続編として、主人公・相沢耕平の息子・薫平の世代を主に描いた『軽井沢シンドローム SPROUT』が、2002年から2006年にかけてヤングチャンピオン(秋田書店)で連載された。
各エピソードのサブタイトルは歌のタイトルから付けられている(一部内容にあわせてアレンジされたものもある)。このパターンは『SPROUT』でも踏襲された。
あらすじ
アメリカに渡ることを夢見るカメラマン・相沢耕平と、イラストレーター・松沼純生。兄弟のように育ち、高校を卒業してすぐに家出していた二人だったが、金が底を尽き純生の姉であり耕平の幼馴染である薫が住む軽井沢の別荘へ転がり込む。
《後略》
URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%BD%E4%BA%95%E6%B2%A2%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A0

漫画などで本文と読み仮名に別々の言葉をあて、本文で意味を、読み仮名の方で本当の読みを表し、その言葉の意味の説明を省略する手法のことを専門用語では何と言うのでしょうか?
ちょっとわかりにくい説明だと思うので例をあげると
BLEACHで「仮面の軍勢」と書いて「ヴァイザード」と読ませたり。
ハンター×ハンターで「束縛する中指の鎖」と書いて「チェーン・ジェイル」と読ませる方法のことです。
▼良回答
ルビ、つまり振り仮名、読みがなをうつ、ということ自体が日本語独自の表現で、しかも「教養の無い」読者層へのサービスだとかつて考えられていました。
そのため、独自の読み方を要請するこういう読みがなにはまだ文学上の分類名が(少なくとも一般に通用する名前は)つけられていないようです。
しかしこういったことは少なくとも明治以来それなりに行われてきたとも言えます。また表現もルビだけでなくたとえば黄金(きん)の、といったかっこ表現もあります。
実は話し言葉と書き言葉が一致しないのはもともと日本では当たり前のことでした(なにせ漢字そのものが外来語)。ところが明治の言文一致運動により、話すように書く、とうことが強調されます。しかし本当に会話のまま文章にするとなんだかわからないものになる(文章にされることを前提に話している場合は別)ので、結局話し言葉と書き言葉は一致していません。むしろこの狭間に日本語独特の表現が発生しているわけですね。
小説でこれを徹底的にやっているのが秋津透さんでしょう。
URL:http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa1645438.html
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