成績連動給与(役人の仕事についての雑考 最終回)


「消費税率を3%から5%に上げた1997年度。「計9兆円の増収を見込んで、結果は前年度比で4兆円減だった。差し引き13兆円も読み間違えた。予想屋としては最悪。あれから学習しないのは愚かだ」。

昨年の自民党総裁選で勝利した直後の記者会見での麻生総理のコメント。

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節約をしたり、無駄を省いて貯金をためるやり方は、支出を極力抑えて黒字に持ってゆくやり方だけど、もうひとつ重要な要素がある。収入を如何にして増やしていくかという問題。

国家の収入は、税金で成り立っているけれど、その額は毎年同じというわけじゃない。赤字の会社からは税金を取らないし、人口の増減によっても税金収入は変わる。今は消費税というのがあるから、景気が良いと、消費税がどんどん入ってくるけれど、不況になったら途端に減る。

消費税を3%から5%に上げたは良いけれど、増えると思った税収が減った。だけどその政策をやった当事者の責任は問われない。政治家は選挙という洗礼があるけれど、官僚にはそれがない。

そこがまた、批難を浴びる理由のひとつだったりする。

4月6日に人事院は、従業員50人以上の企業約2700社を対象に夏のボーナスの調査を行って、公務員の夏のボーナスも減額するかどうか検討を進めるという。

民間だけ景気悪化の波をモロに受けているのに、公務員だけ昨年並みのボーナスを貰えるなんてオカシイという官民格差への批判を考慮してのことなのだろう。

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本当は、わざわざ調査なんてしなくても、役人が株やFXをやれば、今の景気がどうなっているかなんて一発で分かる。だけどそうしてしまうと、インサイダー取引をやってるんじゃないかって目で見られてしまうからやり難い。

それならいっそのこと、給与やボーナスの一部を行政の実効と連動させて上げ下げすればどうか。

たとえば、金融庁の職員なら、倒産件数が多かった年のボーナスが減るとか、日経平均が上がれば給料も上がるとか。農水省の職員なら、食料自給率が上がったら、ボーナスも増えるとか。

給与が行政の実績に連動して、余った予算を貯金化して明確化できるようになれば、官民格差とかいう非難も少しは収まるだろう。政策を間違えれば自分達のふところだって痛むのだ、だから一生懸命良くなるようにするはずだ、と。

本当は、議会制民主主義を採る限り、政策を決めるのはあくまでも立法府であって、国民の代表としての議員が立法してゆくのが筋。行政府たる役人はその決まった法律に従って粛々と行政を進めていくのだから、非難は真っ先に議員に向かわないといけない。引いてはそれを選んだ国民が自ら受けないといけないのだけれど。

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画像公務員ボーナス 不況民間反映へ 人事院が緊急調査 2009年4月7日(火)08:05

 人事院は6日、国家公務員の夏季ボーナスに、大幅減が予想される民間の実態を反映させるため、緊急調査を行うことを決めた。従業員50人以上の企業約2700社を対象に4月中に行い、5月に臨時の勧告を出して6月の支給に適用させる可能性もある。

 毎年8月の人事院勧告に向けた5~6月の民間調査とは別に、人事院が緊急調査を実施するのは昭和49年以来となる。連合が3月末に発表した夏季ボーナスの支給額は前年比13%減だった一方、政府は昨年8月の人事院勧告に基づき、今夏は前年と同水準に据え置いた月給2・15カ月分(年間では4・5カ月分)を支給することになっている。

 民間の大幅減が予想される中、官民格差への批判を考慮した格好で、人事院は緊急調査の結果を分析して臨時勧告を出すかどうか判断する。与党では6月1日の支給基準日を前に夏季ボーナスを減額する給与法改正案を議員立法で提出、成立させる動きが出ている。

URL:http://news.goo.ne.jp/article/sankei/politics/m20090407029.html?fr=rk



画像麻生太郎と小沢一郎の「ヤバい経済学」(2008/10/6)

 「消費税率をうかつに引き上げると、あの時の二の舞になりかねない」。首相・麻生太郎は9月22日、自民党総裁選で圧勝した直後の記者会見で「まずは景気対策。中期的に財政再建」の優先順位を明確にした。「あの時」とは消費税率を3%から5%に上げた1997年度。「計9兆円の増収を見込んで、結果は前年度比で4兆円減だった。差し引き13兆円も読み間違えた。予想屋としては最悪。あれから学習しないのは愚かだ」。この発言を聞いた財務省首脳部は頭を抱えた。


▼消費税増税で「13兆円読み違い」?

 頭を抱えたのは消費税率アップが遠のいた、からではない。新首相の言として「ヤバい」のではないかと心配したからだ。97年、首相は橋本龍太郎だった。96年度は実質2.9%の成長率を達成して衆院選も勝利。選挙公約に従い、前首相・村山富市の時代に決めた通りに所得・個人住民税の特別減税を打ち切り、4月から消費税率を5%に上げた。夏以降、アジア通貨危機に端を発した金融危機が襲う。秋が深まると三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券などがよもやの連鎖的な経営破たんに見舞われ、日本経済は奈落の底へ落ちていった。

 経済危機を深くしたのは減税廃止や消費税増税など財政赤字の削減を急いだ国民負担増だったのか。それとも、バブル崩壊後の巨額の不良債権を抱えこんでいた日本の金融システム不安がアジア通貨危機などをきっかけに急激な信用収縮を招き、金融機関の大型破たんが相次ぐ恐慌状態に陥ったのか。いまだに両説がある。ただ、深刻な不況に突っ込んだとは言え、97年度の一般会計税収は決算ベースで前年度より約1兆9000億円増えている。これが事実であり、麻生が指摘する「4兆円の減収」はどこにも見当たらない。

 97年度予算で実施した制度改正を振り返ると、税制では消費税率アップで5.2兆円、減税廃止で2.0兆円の増収を想定した。年金、医療の保険料引き上げが0.6兆円、病院の窓口での患者負担増も0.8兆円あり、国民負担増の合計は8.6兆円となっていた。これを俗に「9兆円の負担増」と称する向きが当時からあったのだが、まず税収だけで「9兆円の増収」を予定した事実はない。税収の当初見積もりは約57兆8000億円。制度改正による減収や経済見通しなども踏まえ、前年度当初比で見込んだ増収額は約6兆5000億円にとどまっていた。

 確かに年後半からの景気の落ち込みや、特別減税の復活で税収見積もりは狂った。97年度決算では税収は約53兆9000億円と伸び悩み、当初見積もりを約3兆9000億円下回った。それでも96年度決算の約52兆円に比べると、2兆円近い増収。「4兆円の減収」に似た数字を探せば、この97年度の当初見積もりと決算を比べた落ち込みしかない。正確に言えば「前年度当初予算比では6.5兆円増と見積もったが、前年度決算比では1.9兆円の増収にとどまった。97年度の当初と決算を見比べると3.9兆円の読み違いがあった」となる。


▼「景気対策で赤字国債」封印の虚実

 「4兆円の減収」も「13兆円の読み違い」もなかった。税収が予想をかなり下回ったのは確かだが、前年度に比べれば増えており、増税したのに減収になったわけではない。麻生は総裁選中から討論会などでこの「13兆円」説を繰り返し披露していた。他の総裁候補の1人は「明らかな事実誤認と見て、突っ込もうかとも思ったが……」と言葉を濁す。初めから麻生大勝が確定的で、すぐ衆院選の顔となる次期首相を傷つけるのをためらったのかも知れない。ただ、国会で民主党が追及すれば、首相となった麻生は答えないわけにはいかない。

 麻生が「カン違い」で済ませづらいのは、消費税率を5%に上げた97年当時、橋本の下で初入閣して経済企画庁長官を務めていたからだ。橋本の首席秘書官だった現衆院議員・江田憲司(無所属)は自らのホームページで「9兆円の負担増」は大蔵、厚生両省の縦割りで決まり、企画庁の総合分析機能が働いていなかったと振り返る。「企画庁長官として、そのマクロ経済上の影響を判断する責任者は誰だったのか。あなた、麻生さんだろう。それを言うなら、自らの不明を恥じ、国民に謝ってからにしろと言いたい」と痛烈に批判する。

 もう一つ、麻生は総裁選中に「景気対策の財源として赤字国債の発行を言ったことはない。特別会計の積立金を使ってもいい」(9月12日、日本記者クラブでの討論会)などと再三、強調してきた。景気優先の麻生の財政出動論に「バラマキ派」のレッテルを貼る動きが強まったため、それをぬぐい去る狙いもあって赤字国債の増発を「封印」して見せた。ただ、08年度の税収とマクロ経済の動向を見る限り、年末にかけて編成する第2次補正予算ではそもそも追加景気対策以前の問題として、赤字国債の増発が避けられそうもない。

 08年度税収の当初見積もりは約53兆5000億円。これは昨年12月に07年度の補正後の税収を「発射台」として、08年度の政府経済見通し(名目成長率2.1%)などを踏まえて見込んだものだ。ただ、07年度税収は決算段階で補正後よりさらに約1兆5000億円落ち込んだ。08年度の「発射台」がこれで下がったうえ、内閣府は景気後退の恐れから、7月に名目成長率の見通しを0.3%に下方修正した。2つの要因が重なって、税収はどう予測してみても当初見積もりより2兆円を大きく上回る減収が確実だ。

 赤字国債を増発せずにこの減収分を補うには、既定の歳出経費の節減や予備費の活用などに頼るしかない。実は国会で審議中の第1次補正予算案で、緊急経済対策の財源としてほぼ1兆円の経費節減等に頼っている。この大半は、低金利が続いているため、国債の利払い費で使い残しが見込まれる分を回した。2次補正で再びこれに劣らぬ規模の財源を経費節減でひねり出すのは至難と見られている。税収の落ち込みすら赤字国債なしには賄うメドがたたないのに、追加景気対策の財源に至ってはかなり「ヤバい」状況なのである。


▼「埋蔵金=隠れた国債」諮問会議の警鐘

 麻生は「景気対策の財源として」赤字国債を封印しただけで、税収減の補てん策としてまで否定したわけではないかも知れない。総裁選中は、景気対策のために「特別会計の積立金」の活用も視野に入れていた。公明党代表・太田昭宏も2日の衆院各党代表質問で、緊急経済対策で決めた08年度内の定額減税の財源として、財政投融資特別会計の積立金等を有力候補に挙げた。特別会計の積立金等の活用は民主党代表・小沢一郎も衆院選向けマニフェスト(政権公約)の20兆5000億円に上る「予算総組み替え」の財源の柱として前面に打ち出している。

 総裁選のさなか、政府部内で「埋蔵金」活用に異論を唱える動きが浮上した。「特別会計の積立金を取り崩して一般会計の歳出に充てる『埋蔵金』論議は財政規律を損なう。『ストックからストックへ』の大原則を維持し、政府資産と債務の両建てでの削減・国民負担の軽減を目指すべきだ」。首相直属の経済財政諮問会議の民間議員、国際基督教大教授・八代尚宏が9月17日付けで「特別会計改革の方向性について」と題する文書を提出した。八代ら学者と経済人の民間議員4人は首相交代で退任するので、これが最後の仕事となる。

 特別会計法では財政投融資特会の積立金が所定の金額を超えると、超過分は国債整理基金に繰り入れ、過去に発行した国債の償還に充てられると定めている。08年度予算でも9兆8000億円を計上した。「ストックからストックへ」の形で財政健全化に活用する原則だ。これを太田の提言のように、減税など景気対策のフローの財源に充てるには、まず法改正が必要だ。同時に政府の負債は減らないままで資産だけを取り崩すから、八代は「純計ベースの債務が増える点では、隠れた国債発行と同じ効果を持っている」と警鐘を鳴らした。

 「特別会計の積立金はこれまでも財政健全化に活用しており、今後も同様の方針で可能な限り、活用する」。麻生は1日の国会答弁で、財投特会の積立金は国債残高の圧縮に充てる従来方針に戻る姿勢もにじませた。財務相・中川昭一は小沢に矛先を向けた。「民主党の政策はすべて恒久的で、実施には恒久的財源が必要だ。特別会計の積立金など一時的な財源を当てにしており、必要な財源が手当てされているとは必ずしも言い難い」。小沢は20兆円超の恒久的財源の積算を公表していない。麻生も小沢も衆院選に向けて「ヤバい財源論」からの脱却を迫られている。(敬称略)

URL:http://www.nikkei.co.jp/neteye5/shimizu2/20081005neba5000_05.html

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