経済援助を毟り取る手立て(北朝鮮の核実験とミサイル発射について その2)


今回、北朝鮮は核実験の事前通告をアメリカと中国に対してだけ行なったらしい。

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韓国、ロシア、日本を差し置いて、アメリカと中国を選んで事前通告したということは、この2国に対して話し合いがしたい、又は窓口になって欲しいというメッセージを北朝鮮が出しているに等しい。

また、核実験と同日、翌日にミサイル発射も行なっている。どうにかして構ってほしいとメッセージを送ってる。

アメリカは中東情勢、アフガン情勢に忙しくて、北朝鮮なんかを相手にしてる暇はない。中国も態度が煮え切らない。前回4月のテポドン発射の際には、安保理決議を遅らせたり、拘束決議案をより緩い議長声明にする程度のことはしても、結局は採択してしまってる。

六ヶ国協議から離脱してからというもの、誰も北朝鮮の相手をしてくれない。アメリカのクリントン国務長官からは、六ヶ国協議に復帰しないと経済援助しないと言われる始末。

援助が欲しくて堪らない北朝鮮は、なんとかして自分の方に振り向かせたい。自分を相対的に大きく見せなきゃいけない。そのためにはどういった手立てがあるか考えてみると、以下の3つくらいしかない。

1.浸透工作で相手国を篭絡して、援助させる
2.相手国の大切なものを奪って、巨額の援助と交換する 
3.相手にとって、自国が脅威になることで、脅して援助を出させる  

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1.については韓国と日本に対してこれまで仕掛けていたこと。日本は拉致問題を契機として、浸透工作について厳しい監視の目を向けるようになった。経済制裁や万景峰号の入港禁止措置などが続いているから、これ以上の浸透工作と援助の引き出しは難しくなっている。今回の核実験やミサイル発射についても日本からの技術流出が問題になっているけれど、少なくとも問題視されて、摘発されるようになっただけでも全然違う。

韓国だって、今の李大統領になってから、前政権の太陽政策は陰を潜め、日米寄りのスタンスになっている。

先頃、盧武鉉政権当時、北朝鮮で対韓国事業を事実上総括していた崔承哲氏が「対南(韓国)政策の失敗」を問責され昨年に処刑されていたことが分かった。これは浸透工作が韓国に対しても失敗して、現時点では直ぐに使えないことを示している。

2.についていえば、韓国人と日本人に対する拉致問題が相当する。小泉元総理訪朝時に、拉致を北朝鮮の将軍様自ら認めてしまった。その後の日本の世論は北朝鮮ケシカランになったし、そのあおりをうけて、韓国もこの面で注目を集めてしまった。もうこの手も使えない。

3.についてみると、日中韓露等の周辺国にとってはノドンなどのミサイルの脅威になるし、アメリカにとってはイラン又はテロ組織に流れる危険がある核技術がそれにあたるだろう。

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こうしてみた場合、北朝鮮にとって、自分を大きくみせて援助を引き出すためのカードは実はあまりないことに気づく。

先ほど述べたように1,2のカードはもう殆ど使えなくなっているから、3のカードを使って、どうにかこうにかするしかない。それはとてもリスクを伴うものなのだけれど、それでも承知の上で使わざるを得ないのだろう。

北朝鮮が、援助を貰うために『相手にとって、自国が脅威になる』というカードしか使えないと仮定した場合、今回の核実験やミサイル発射でも、周辺国が脅しに屈せず、何も貰えないと分かったら、次にどうするか。

そのときは、相手にとって「もっと」脅威になるくらいしか手が無くなってしまう。

それは即ち、本当にミサイルを相手国に撃ち込んでしまうか、戦争を仕掛けるとかいうことになる。

そして、27日の声明で休戦協定の破棄を宣言した。北朝鮮は「もっと脅威」になることを選択した。

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画像核実験実施30分前、米中に通告 2009年5月26日11時46分

 【ソウル=牧野愛博、ワシントン=村山祐介】韓国の情報機関、国家情報院の元世勲(ウォン・セフン)院長は26日午前、北朝鮮が核実験の実施を約30分前に米中両国に通報していた事実を明らかにした。米国務省筋も米国への事前通報を確認した。

 元氏によると、北朝鮮は核実験の29分前の25日午前9時25分ごろ、中国に実施を伝達。その約5分後に、ニューヨークの外交ルートを通じ、米国にも通報したという。

 米国務省筋は25日、「(北朝鮮から)核実験を実施する旨の通知が1時間ほど前にあった」と述べるとともに、米国側がすぐに6者協議のメンバーである日韓中ロの4カ国に伝えたことを明らかにした。

URL:http://www.asahi.com/international/update/0526/TKY200905260112.html



画像米国務長官:6カ国協議復帰せねば、北朝鮮に経済援助せず

 【ワシントン草野和彦】クリントン米国務長官は30日、上院歳出委員会の公聴会で証言し、北朝鮮が核問題を巡る6カ国協議に復帰し、核施設無能力化を再開しない限り、「経済援助は一切しない」と言明した。

 北朝鮮が新たな核実験に言及するなど挑発的行為を続けている点について、クリントン長官は、北朝鮮非難の国連安保理議長声明や北朝鮮企業3社の資産凍結に中国やロシアが賛成したことに「(北朝鮮が)ショックを受けた」と分析した。

 一方、クリントン長官はこの日、北朝鮮の協議復帰について「不可能ではないにしても、あり得そうにない」と悲観的な見方を示した。ウッド国務省報道官代行は同日の記者会見で「他の外交の選択肢を探す必要があるなら、そうするだろう」と述べるなど、政権内に焦りがあることも示した。

毎日新聞 2009年5月1日 10時35分(最終更新 5月1日 10時47分)

URL:http://mainichi.jp/select/world/news/20090501k0000e030020000c.html



画像北朝鮮・対韓国事業総括の崔承哲氏、処刑されていた 5月19日9時39分配信 YONHAP NEWS

【ソウル18日聯合ニュース】韓国が盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、北朝鮮で対韓国事業を事実上総括していた崔承哲(チェ・スンチョル)前朝鮮労働党統一戦線部首席副部長が、「対南(韓国)政策の失敗」を問責され、昨年、処刑されていたことが分かった。
 対北朝鮮情報筋が18日に伝えた。表面的には南北交流過程上の個人的不正が処刑理由とされているが、実際には、韓国新政権の対北朝鮮政策に対する「誤判定」と、韓国の太陽政策が北朝鮮社会に及ぼした影響などについて、北朝鮮当局から責任を問われたものだと説明した。
 崔前副部長は、内部強硬派の反対ににもかかわらず、盧武鉉政権の韓国との関係進展を強く推し進め、第2回南北首脳会談の推進も第一線で指揮した人物。韓国の政権交代で南北関係が悪化したことで、政策判断の失策などすべての責任を負わされ「スケープ・ゴート」になったという。
 別の情報筋も、崔前副部長が処刑された事実を認め「最大の罪状は、北朝鮮社会全般に対韓国依存度を育て、韓国への幻想を植え付けたこと」だと話した。北朝鮮当局は、崔前副部長が南北関係を総括したため北朝鮮内部に韓国への幻想が生じる結果をもたらしたと分析評価し、これを大変深刻に受け止め、処刑を選択したとの説明だ。また、南北関係の進展を望む北朝鮮内部の対韓国分野従事者に、警鐘を鳴らす意味もあったと指摘している。

URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090519-00000003-yonh-kr

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