朝日新聞ボーナス40%減(メディアのビジネスモデルとネットについて その1)

 
メディアのビジネスモデルとネットについて。全5回シリーズでエントリーする。

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経営危機が囁かれる新聞社でも、とうとう人件費の削減に乗り出した。各新聞社で夏のボーナスの減額が行われている。日本経済新聞は、20-30%台の幅で、夏のボーナス削減を決めている。朝日新聞に至っては夏のボーナス40%カット。読売新聞も朝日に習って大幅カットを打ち出す見通し。

特に、朝日新聞のように、削減割合が1割2割とかいった程度ではなくて半額に近い40%カットになったことが業界に衝撃を与えているという。

以前、「テレビ局のストが教えるもの」で、TBSの労働組合がボーナスの大幅ダウンを不満として、全面ストライキに入った事例を取り上げて、「テレビ業界もようやくにして、世間一般の不況の風を目の当たりにすることになって、トップも本当に経営者としての判断を下せるかどうかを問われてる。」といったけれど、そのとおりの経営者判断を下している。金勘定はまだマトモなようだ。

尤も4割カットといっても、マスコミ業界はもともとの給与水準が高いから、一般からみるとまだまだ貰いすぎのように見えるし、元朝日新聞の編集委員で経済ジャーナリストの阿部和義氏も「給与自体は一般企業と比べると、新聞社もテレビ局と同様に『高すぎる』のは事実」と認めている。

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また、「職業威信と収入の関係(格差について考える その4)」 のエントリーで職業威信スコアと年収の関係をグラフ化してみたことがあったのだけれど、殆どの職業は、職業威信スコアと年収に正の相関がある結果となった。だけど、その正相関の分布から外れている職業が僅かながらある。記者もそのひとつ。

記者の職業威信スコアは52.2だけれど、この威信スコアに対して、正相関分布に入る年収はおよそ300~700万円くらいの範囲。2007年の朝日新聞、日経新聞クラスの年収は医者や大学教授以上になるから、威信スコアでは90以上あって漸く正の相関の範囲に入る。

だからといって、記者の年収を700万以下にしろとは言わないけれど、世の中からは、その程度になるまで給料が高すぎるという意見は収まらないであろうことは知っておくべき。

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とまれ、新聞社であっても、やはり金勘定の面でのアプローチによって改善圧力がかかる可能性があることが今回のボーナス削減で明らかになった。

日本新聞労連は、人件費削減に至った理由を「広告収入の大幅減収」としているけれど、であれば大手スポンサーにもっと広告を出してもらうよう働きかけるか、別のビジネスモデルを構築しなければならない。

「優良放送番組推進会議」の第一回アンケート結果によると、高評価を得た番組は「ワールドビジネスサテライト」などの真っ当な番組作りをしているものだった。優良放送番組推進会議のアンケート調査は大手26社の社員によって行われたもの。大手企業からみて、どんな番組に広告を出すのが望ましいのかを示唆する結果になった。このアンケート結果を信ずるならば、新聞もそうした紙面づくりをしない限り広告収入の回復は望めない可能性が高い。

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画像朝日新聞「ボーナス40%減」 業界に衝撃が走る 2009/5/23

部数伸び悩みに加えて広告収入の大幅減が続き、新聞社の経営が「待ったなし」状態に追い込まれている。朝日新聞では2009年夏のボーナス40%カットの方針を打ち出し、読売新聞も大幅減の方向で動き出した。新聞各社はいよいよ人件費に踏み込まざるを得ないところにきた。


▼組合側は大反発、交渉は難航しそう

関係者によると、朝日新聞は2009年夏のボーナスを40%カットする方針を固め、組合と協議を始めた。社長以下役員のボーナスは「ゼロ」になる。本給部分も非組合員の管理職は09年4月から5-10%削っている。役員報酬に関しても、社長、常務、取締役、役員待遇について15%から45%の減額を実施しているという。ある朝日OBは、「先輩はいい時期に『卒業』できて良かったですね」とため息まじりにボーナス減の報告を受けたという。

ただ、組合側は「受け入れられない。経営責任を明確にせよ」と大反発、交渉は難航しそうだ。

日本経済新聞もすでに20-30%台の幅で、夏のボーナス削減を決めている。日経や朝日以外の新聞各社は、5月末頃から各労組が要求を提示し、6月の第1週に会社から回答を得て、妥結か交渉かを検討することになる予定だという。ただ、この「40%カット」は業界に衝撃を与えており、読売新聞も朝日に習い大幅カットを打ち出す見通しだ。

日本新聞労働組合連合の木部智明書記長は「ボーナスを巡る状況は、今年はとにかく酷い」と状況の悪さを認める。その原因を「広告収入の大幅減収」とみている。

09年5月に発表された大手広告代理店の09年3月期決算でも、電通の「新聞広告」売上高は前年度比19.2%減と約348億円も減り、博報堂DYホールディングスも同22.9%減(約299億円減)と激減している。


▼「企業年金」の補填問題も大きい?

木部書記長は新聞社の広告収入について「これから回復する余地のないくらいの落ち込み」と表現する。これまでの労使交渉の中でも、経営者から再三「厳しい」という声が出ており、組合側も現状を認識せざるをえない環境だ。交渉の見通しについては、「一時金(ボーナス)を上げろ、という議論にはなりにくい」という。部数も横ばいか微減の社が多く、広告収入減の影響をもろに受ける形になっている。

元朝日新聞の編集委員で経済ジャーナリストの阿部和義さんも、ボーナスカットの一番の原因は「広告収入の激減」だという。また、朝日新聞については「企業年金」の補填問題も大きいのでは、と指摘する。04年度以降の定年者について、年金の運用利率を5.5%から3.5%に引き下げているが、それでも追いつかない。金融危機による株価低迷など、運用状況の悪化が背景にある。

「09年4月以降、年金の補填に100億円とか200億円を拠出しなくてはいけないという話もあります。企業年金はとても運用できない状態のようです」
また、新聞社の人件費について、「給与自体は一般企業と比べると、新聞社もテレビ局と同様に『高すぎる』のは事実だが」とした上で、「そういった『聖域』に踏み込んで(カットを)やらなければもたない」ほどの厳しい状況だと指摘する。

「アメリカでは新聞社が何社も潰れているが、日本でも2、3社に淘汰されるような時代になるんじゃないですか」

URL:http://www.j-cast.com/2009/05/23041592.html



画像相次ぐ夕刊の廃止 新聞業界が恐れる「ビジネスモデルの崩壊」 2008年12月01日 17:00

 新聞社の夕刊の廃止や休刊が相次いでいる。1日、鹿児島県の地方新聞である南日本新聞(鹿児島市)が来年2月末をもって夕刊を休刊すると発表した。同社の夕刊は、1934年から始まり、鹿児島県内で約2万3000部を発行している。

 地方紙の中では比較的経営状況も良好と見られてきた南日本新聞の夕刊廃止決定は、業界関係者に驚きを与えているが、夕刊の廃止についていえば、すでに毎日新聞社が北海道内での夕刊を8月末に、東北地方で最も長い歴史を持つ秋田魁新報が9月一杯で、さらに10月には創刊62年の夕刊紙、名古屋タイムズが休刊しており、夕刊の廃刊は全国的な動きとなっている。なぜ新聞社は相次いで夕刊の廃止に追い込まれているのだろうか。

 南日本新聞は、休刊の理由として発行部数や広告収入の減少、用紙代など製作コストの増大などを挙げているが、実際に現在新聞社を取り巻く環境は非常に厳しい状況にある。原油高騰で紙代が値上げしている他、パソコンや携帯電話の普及によって情報収集の用途が多様化しており、若者を中心に「新聞離れ」が深刻な問題となっている。新聞離れが進むことによって失うのは購読料だけでない。広告出稿も10年前の水準より2割ほど減少している。電通の調査によると、2007年の新聞広告費は、9,462億円(前年比94.8%)と推定されており、2年連続で1兆円を下回り、広告費の減少傾向は歯止めがきかなくなっている。

 とくに全国紙は国内に販売店を持っているため販売コストは非常に高く、少子化による人口減が進むことにより、以前から業界では「新聞社のビジネスモデルはいずれ崩壊する」との声も出ている。ただし売上や広告費の減少は新聞社だけでなく、テレビ業界や出版社などを含めたマスコミ全般に共通する問題となっている。

URL:http://moneyzine.jp/article/detail/112631

この記事へのコメント

  • nick

    「読売新聞も朝日に習って」は「倣って」の誤り。
    2015年08月10日 16:51

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