戦略的海洋温度差発電プラント建設(エネルギー技術と戦略的活用について その3)


EEZを確保するため、沖ノ鳥島に海洋温度差発電プラントを作るという計画を紹介したけれど、そういう戦略的な視点で考えていくと、沖ノ鳥島以外にも作ってみると面白いところがいくつかある。たとえば尖閣諸島なんかがそう。

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尖閣諸島の魚釣島に海洋温度差発電のプラントを建設してみるというのはどうか。

海洋温度差発電には、海面表層と深層水との温度差が必要だといったけれど、その前提として、深海の深層水を取水できるだけの深い海が近くにないといけない。

尖閣諸島は沖縄トラフの先端にあって、先島諸島(西表島・石垣島・宮古島など)との間には水深2000mを越える海域がある。条件は整っている。

更には蛇足だけれど、1999年に尖閣諸島と石垣島を結ぶ海域の鳩間海丘に熱水鉱床が見つかっている。なんとなれば、温水も冷水も共に海底から取水できるかもしれない。

日本が尖閣諸島に海洋温度差発電プラントを建設するといえば、中国は猛反発するだろうけれど、バーター取引を持ちかけることで牽制する手がある。水を売るというのがそれ。

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中国は、急速な工業化によって工業用水の不足が慢性化し、飲用水の需要も爆発的に伸びている。さらには、折からの旱魃の影響もあって、穀倉地帯でも農業用水不足が深刻化している。

2008年頃から、中国の企業が西日本を中心に全国各地の水源地を大規模に買収しようとする動きがあるという。水を売るという取引は今なら使える可能性がある。

実は、海洋温度差発電プラントには副産物がいくつかあって、その中のひとつに淡水が作れるというのがある。

電気を起こしながら、海水から真水も一緒につくれてしまう。

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スプレーフラッシュ蒸発式とよばれる海水淡水化装置は、佐賀大学が考案したもので、海洋温度差発電は低圧沸騰器で温水を引き込み気化させた後、発生した水蒸気でタービンを回すのだけど、その水蒸気を深層冷海水で冷却して処理することで淡水と海水中の塩分を分離してしまうというもの。

得られる淡水は蒸留水と同レベルの高純度であって、水道水の基準を十分満足するものだそうだ。

淡水の生産規模は、海洋温度差発電1MW規模で、一日あたり約1200立法メートル、10MWだと12000立法メートルになるという。

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現在の一人一日あたりの水使用量は、世界平均で165リットルだから、もし、尖閣諸島に10MW規模の海洋温度差発電プラントを作ることができれば、約6万人分の水を供給できることになる。

中国には尖閣諸島で作った淡水を売ってやればいい。

日本にとって海洋温度差発電には、戦略的意義が物凄くある。

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画像佐賀大の海水淡水化技術が海外で実証実験

 佐賀大学海洋エネルギー研究センター及び環境ベンチャー企業の(株)ゼネシスの技術協力により、インド国立海洋技術研究所(NIOT)は、海洋温度差エネルギーを利用した海水淡水化装置の洋上実証実験に、世界で初めて成功した1)。

 今回、NIOTが用いたスプレーフラッシュ蒸発式海水淡水化装置は、佐賀大学が考案したもので、温度差エネルギーを利用して海水を淡水化する。まず、表層温海水を装置内の減圧容器に注入し、瞬時に蒸発させる(図表1)2)。次にこの蒸気を低温の深層冷海水で冷却した特殊な高性能プレート式熱交換器に導入し、凝縮させることで、蒸留水と同レベルの高純度の淡水を得ることができる。

 一般の分離膜方式の淡水化装置は、膜透過のためにポンプ駆動電力が必要であるが、本方式では、5℃程度のわずかな温度差エネルギーのみで駆動可能である。佐賀大学では“ランキンサイクル”を改良した“ウエハラサイクル”を利用した海洋温度差発電技術(OTEC)を考案しているが、これとスプレーフラッシュ蒸発式海水淡水化装置を組み合わせ、カスケードで温度差エネルギーを利用することで、取水や循環に必要な駆動電力の発電と淡水化を同時に行い、CO2を排出しない完全自立型の持続可能な海水淡水化プラントを構築可能となる。

 今回の実証実験では、淡水化装置、取水装置類一式を船上に設置した海水淡水化プラント船が用いられた(図表2)。インド南東部チェンナイ沖35kmの洋上にて、深さ約500mから深層冷海水を汲み上げた。淡水製造能力は1000t/日であるが、NIOTでは今後1年以内に実用化レベルの10000t/日規模にあたる新プラントを建造する計画である。

 海洋温度差エネルギーはクリーンで再生可能なエネルギー源として期待されている。風力や太陽光などの他の自然エネルギーと比較して、年間を通じて安定している点が大きな特長である。世界各地に幅広く分布する未利用エネルギーで、建設可能国は98カ国に及び1兆kWのポテンシャルがあると考えられている2)。離島、遠隔地など、電力インフラの未整備地域でも、本技術を用いて海水を淡水化することが可能となれば、多くの発展途上国で深刻化している水資源の確保に貢献する可能性がある。

URL:http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt077j/0708_02_topics/200708_topics.html


画像中国資本が日本の水源地を買収 危機感強める林野庁、調査開始 2009.5.12 23:36

 中国の企業が西日本を中心に全国各地の水源地を大規模に買収しようとする動きが、昨年から活発化していることが12日、林業関係者への取材で分かった。逼迫(ひっぱく)する本国の水需要を満たすために、日本の水源地を物色しているとみられる。

 買収話が持ち掛けられた地元自治体などが慎重姿勢を示しているため、これまでに売買交渉が成立したり、実際に契約締結に至ったりしたケースはないというが、外国資本の森林買収による影響が未知数なことから、林野庁は都道府県に対して一斉調査を始めるなど危機感を強めている。

 奈良県境に近い山あいにある三重県大台町。昨年1月ごろ中国の企業関係者が町を訪れた。水源地となっている宮川ダム湖北を視察した上で、「いい木があるので立木と土地を買いたい」と湖北一帯の私有地約1000ヘクタールの買収を町に仲介してほしいと持ち掛けた。また約3年前には、別の中国人の男性から町に電話があり、同じ地域の水源地の買収話があったという。

 町は「本来の水源林として残してもらいたい。開発はしないでほしい」と相手側に伝えると、それ以降交渉はなくなり連絡は取れなくなったという。

 水源地の立木は、原生林を伐採した後に植林した二次林で、「よい木材」とは考えられず、土地も急斜面で伐採後の木材の運び出しに多額の費用がかかるため、同町産業室の担当者は「木ではなく地下に貯まっている水が目的ではないか」と分析する。

 また、長野県天龍村には昨年6月、東京の男性が訪れ「知り合いの中国人が日本の緑資源を買いたがっている。今の山の値段はいくらか」と持ちかけてきた。同村森林組合の担当者が実際に山のふもとまで案内し、森林の現状を説明した。

 担当者によると、この男性は「今の市場価格の10倍の金を出す」と強気の姿勢を見せた。しかし、これまで村には外国資本が買収交渉を持ちかけた例がなかったため、担当者は「隣接の所有者がOKするかわからない」と難色を示すと、その後、話が持ちかけられることはなくなったという。

 このほかにも、岡山県真庭市の森林組合にも昨年秋、中国から水源林を伐採した製材の買収話が持ちかけられ、その後も交渉が継続している。

 林野庁によると、昨年6月、「中国を中心とした外国資本が森林を買収してるのではないか」との情報が寄せられ始め、実態把握のため全国の都道府県に聞き取り調査を行ったという。

 これまでの調査では実際に売買契約が成立したケースはないが、同庁の森林整備部計画課の担当者は「現在の法制度では、万一、森林が売買されたとしても所有権の移転をすぐに把握する手段はない。森林の管理についても国が口を挟むことも難しい」と説明している。

 国際日本文化研究センターの安田喜憲教授(環境考古学)の話「ルール整備が不十分な中でこうした森林売買が進行すれば、国として自国の森林資源や水資源を管理することが困難になり、国土保全に大きな影響を受けることが予想される」


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 日本国内の水源地に中国資本が触手を伸ばしている実態が明らかになった。この背景には、中国での深刻な水不足がある。その一方で日本国内の水源地は現在、約30年前の価格まで暴落していることも中国にとって買い時と映ったとみられる。世界各地では、水資源の獲得に向けて激しい争奪戦が繰り広げられており、識者は「国内の水源地を守るためには現在の法制度は未整備」と訴えている。

 東京財団の調査によると、中国では飲用水の需要が急速に伸びており、ペットボトルに換算すると、この10年間で約4倍になっている。また、急速に工業化が進む北部では工業用の水不足が慢性化。穀倉地帯や内陸部の小麦地帯でも、干魃(かんばつ)被害の影響で農業用の水不足が深刻化しているという。

 国連の予測では、人口爆発と経済発展により、水不足の深刻な国で暮らす人は現在でも5億人に達し、2025年には約30億人に増加するとしている。水不足の危機は一方でビジネスチャンスを生み、「水メジャー」といわれる大企業が、世界で水源地を確保しようとする動きが目立っている。

 これに対し、日本国内では水源地を守る役割を果たしてきた林業が衰退の一途をたどり、外国資本が入り込むすきを与えているとの指摘がある。日本不動産研究所によると、安価な輸入木材に押されて、林地価格も立木価格も昭和55年以来、ほぼ一貫して下落。平成20年3月末現在、10アール当たりの林地(用材)価格の全国平均(北海道・沖縄を除く)は5万5118円で、昭和49年時の6万460円を下回る価格となった。

 また、森林が国土の約7割を占めるにもかかわらず、法制度の不備もある。国土交通省水資源政策課によると、「現在の法制度では地下水の規制は都市部で地盤沈下を防ぐことが目的となっている」といい、山間部については、地下水をくみ上げる量に制限がないのが現状だという。

 さらに、地権者の権利移転がチェックされる農地と違い、森林法では民有林の売買に関する規制はなく、所有者は自分の山林を自由に売買することが可能。国土利用計画法でも、1ヘクタール以上の土地(都市計画区域外)の売買であれば都道府県知事への届け出が義務づけられているが、1ヘクタール未満の土地の場合はそもそも届け出義務がなく、外国資本による水源地買収を把握する制度すらない。

URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090512/biz0905122342041-n1.htm

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