オバマ大統領のプラハ演説
2009年4月5日にオバマ大統領はプラハで、核兵器廃絶を訴え、米国は核廃絶に向けて行動する「道義的責任」を負う認識を表明した。
このプラハ演説に対する波紋は大きく広がっていて、それぞれの国がそれぞれの立場でいろんな反応を示している。
フランスは「核なき世界」に不快感を示し、ロシアも「米国のMD能力が制限されない限り、核弾頭数を1500発以下に減らすことはできない」としてる。中国に至っては「環球時報」で「激情演説『これぞ空想』と評論家」という始末。
正直あまり相手にされてない。
日本はそのまま、アメリカによる核廃絶宣言だと好意的に受け止る意見が多く、広島市の秋葉忠利市長などは米大統領初の被爆地訪問に意欲を見せている。更には広島、長崎への原爆投下に対する謝罪を期待する声もある。
一方、アメリカでは、ウォールストリート・ジャーナルはこの発言自身が「覆うべくもない広島への謝罪」だとして、核使用を決断した当時のトルーマン大統領の「功績への侮辱」だとし、原爆投下によって、日本を早期降伏に追い込んだのだ、とこれまでの戦後の歴代米政権の見解はアメリカ識者の多くも同じ見方をしていると非難している。
それに対して、いやあの発言は遺憾の意であって謝罪ではないとする意見や、そもそもアメリカ大統領が原爆投下に関して謝罪すること自体が考えられないという意見も上がっている。
いずれにせよ謝罪なんて真っ平ごめんだという点では一致している。
東京裁判に象徴されるように、当時の戦勝国は戦前の日本を悪者にして、人道に対する罪を押しつけることによって、自らの正当性を保っている面があるから、そう易々と謝罪できないことは理解できる。
だから、これだけを見ると日本だけが一方的に悪者になっているんじゃないかとも思えるのだけれど、実は日本も戦後ずっと戦勝国側、とりわけアメリカに対して「道義的責任」を突きつけて反撃している。
原爆ドームの存在がそれ。
原爆ドームを前に行われる平和式典、これによってアメリカは毎年裁かれ続けている。
「どちらが人道に対する罪を犯したのだ?」と原爆ドームの存在そのものがアメリカを責め立てている。
原爆ドームは、1996年12月5日にユネスコ世界遺産に登録されたけれど、登録にあたっては、アメリカが猛反対して調査報告書から、世界で初めて使用された核兵器との文字を削除させたという。
世界遺産に登録されるということは、その存在と価値が全世界で認定されるということだから、原爆投下という行為とその結果が世界認定されたということ。世界で初めて使用された核兵器との文言を削除させたのは、せめてもの抵抗なのだろう。
兎にも角にも、世界遺産に認定され、世界の歴史に確実に刻み込まれた原爆ドームは、時と共にじわじわと、しかし確実にアメリカを同義的責任という名の苦悩の沼に沈めてゆく。
まるで、正当防衛であったにせよ人を殺(あや)めてしまった人が良心の呵責に苦しむかのよう。
今までのように自身を正当化するのは勝手だけれど、それではいつまでたってもその苦悩から解き放たれることはない。アメリカをその苦悩から解き放つ力を持つのは、唯一日本だけだから。
アメリカが謝罪して日本がその罪を赦す。これがアメリカを贖罪させ、未来を拓く力になる。
米大統領、原爆投下の「道義的責任」発言の影響は? 2009.4.11 19:20
【ワシントン=山本秀也】オバマ米大統領は、核兵器廃絶を訴えた5日のプラハ演説で、米国が「核兵器を使用した唯一の核保有国」として、廃絶に向けて行動する「道義的責任」を負うとの認識を表明した。大統領の発言は、戦争の早期終結を理由に広島、長崎への原爆投下を正当化してきた戦後の歴代米政権の枠を踏み出し、米大統領による初の被爆地訪問などへの一歩となるのか。
旧東側陣営のチェコの首都で、オバマ大統領は「核兵器を使用した唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある。米単独の取り組みでは成功もおぼつかないが、指導的な役割を果たすことや行動を始めることはできる」と発言。「核兵器のない世界の平和と安全保障」を米国がめざす方針を示した。
原爆投下の「道義的責任」について、オバマ大統領は日本国民や被爆地への対応には踏み込んでいない。広島を訪問した米国要人は、昨年9月に訪れたペロシ下院議長が現職で最高位。1984年には、カーター元大統領が訪れたが、現職大統領の訪問は広島、長崎とも見送られてきた。
それだけに、米大統領が米国の「道義的責任」に踏み込んだことで、日本にはある種の期待感が広がった。広島市の秋葉忠利市長は「意義は大きい」と発言を評価し、大統領の広島訪問に意欲をみせている。
ただ、文脈をみれば明らかなように、オバマ大統領は、米国が核廃絶に率先して取り組む必要性を強調するレトリックとして、核使用をめぐる「道義的責任」を持ち出している。米国での議論は、「核兵器廃絶に現実性があるのか」が中心であり、原爆投下の歴史評価をめぐる議論はほとんど素通りされている。
7日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル紙は、「核の幻想主義者」と題した社説で、「オバマ氏の道義的権威ではテヘラン、平壌を抑えきれない」と批判。同紙は例外的に核使用をめぐる「道義的責任」も論じているが、大統領発言を「覆うべくもない広島への謝罪」だとして、核使用を決断したトルーマン大統領(当時)の「功績への侮辱」だと非難した。
原爆投下の「功績」とは、日本をポツダム宣言の早期受諾に追い込んだことで、(1)本土決戦で多数予想された米軍の死傷者(2)戦争の長期化にともなう日本人の新たな犠牲-を回避したとの認識だ。同紙をはじめ、米側の識者も多くがこの見方を共有している。
これに対し、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は、核廃絶への取り組みを「きわめて慎重な扱いを要するが、価値のある目標だ」と擁護する。ただ、対日謝罪などへの踏み込みについては、「適切になされるなら可能かもしれないが、それは遺憾の表明であり謝罪ではない」とくぎをさした。
日米安保問題に詳しいバンダービルト大学のジェームス・アワー教授は、「オバマ氏が広島、長崎を訪れることができるならすばらしいと思うが、米大統領が原爆投下に関して謝罪することには懐疑的だ」と述べている。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090411/plc0904111924008-n1.htm
オバマ大統領、核廃絶に向けた演説詳報 2009年4月5日23時14分
オバマ米大統領が5日、プラハで行った演説の主要部分は次の通り。
米国は、核兵器国として、そして核兵器を使ったことがある唯一の核兵器国として、行動する道義的責任がある。米国だけではうまくいかないが、米国は指導的役割を果たすことができる。
今日、私は核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を、明確に、かつ確信をもって表明する。この目標は、すぐに到達できるものではない。おそらく私が生きている間にはできないだろう。忍耐とねばり強さが必要だ。しかし我々は今、世界は変わることができないと我々に語りかける声を無視しなければならない。
まず、米国は、核兵器のない世界を目指して具体的な方策を取る。
冷戦思考に終止符を打つため、米国の安全保障戦略の中での核兵器の役割を減らすとともに、他の国にも同じ行動を取るよう要請する。ただし核兵器が存在する限り、敵を抑止するための、安全で、厳重に管理され、効果的な核戦力を維持する。そしてチェコを含む同盟国に対し、その戦力による防衛を保証する。一方で、米国の核戦力を削減する努力を始める。
核弾頭と貯蔵核兵器の削減のため、今年ロシアと新たな戦略兵器削減条約を交渉する。メドベージェフ・ロシア大統領と私は、ロンドンでこのプロセスを始め、今年末までに、法的拘束力があり、かつ大胆な新合意を目指す。この合意は、さらなる削減への舞台となるものであり、他のすべての核兵器国の参加を促す。
核実験の世界規模での禁止のため、私の政権は、直ちにかつ強力に、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指す。50年以上の協議を経た今、核実験はいよいよ禁止される時だ。
核兵器に必要な材料を遮断するため、米国は、核兵器用の核分裂性物質の生産を検証可能な方法で禁止する新条約(カットオフ条約)を目指す。核兵器の拡散を本気で止めようとするなら、核兵器級に特化した物質生産に終止符を打つべきだ。
次に、我々は核不拡散条約(NPT)を強化する。国際的な査察を強化するために(国際原子力機関〈IAEA〉に)さらなる資源と権限が必要だ。規則を破ったり、理由なくNPTから脱退しようとしたりする国に、すぐに実のある措置をとる必要がある。民生用原子力協力のため、国際的な核燃料バンクを含む、新たな枠組みを作り、核拡散の危険を増すことなしに原子力利用ができるようすべきだ。
今朝我々は、核の脅威に対応するため、より厳しい新たな手法が必要なことを改めて思い起こした。北朝鮮が長距離ミサイルに利用できるロケットの実験を行い、再び規則を破った。
この挑発は、午後の国連安全保障理事会の場のみならず、核拡散を防ぐという我々の決意の中でも、行動が必要であることを際立たせた。規則は拘束力のあるものでなければならない。違反は罰せられなければならない。言葉は何かを意味しなければならない。世界はこれらの兵器の拡散を防ぐために共に立ち上がらなければならない。今こそ厳しい国際対応をとる時だ。北朝鮮は脅しや違法な兵器によっては、安全と敬意への道は決して開かれないことを理解しなければならない。すべての国々は共に、より強力で世界的な体制を築かなければならない。
イランはまだ核兵器を完成させていない。イランに対し、私の政権は相互の利益と尊敬に基づく関与を追求し、明快な選択を示す。我々はイランが世界で、政治的、経済的に正当な地位を占めることを望む。我々はイランが査察を条件に原子力エネルギーの平和的利用の権利を認める。あるいは一層の孤立や国際圧力、中東地域での核兵器競争の可能性につながる道を選ぶこともできる。
はっきりさせよう。イランの核や弾道ミサイルをめぐる活動は、米国だけでなく、イランの近隣諸国や我々の同盟国の現実の脅威だ。チェコとポーランドは、これらのミサイルに対する防衛施設を自国に置くことに同意した。イランの脅威が続く限り、ミサイル防衛(MD)システム配備を進める。脅威が除かれれば、欧州にMDを構築する緊急性は失われるだろう。
最後に、テロリストが決して核兵器を取得しないよう確保する必要がある。
これは、世界の安全への最も差し迫った、大変な脅威だ。核兵器を持てば、テロリスト一人で大規模な破壊行為が可能になる。アルカイダは核爆弾を求めていると表明している。我々は、安全に保管されていない核物質が世界各地にあることを知っている。人々を守るためには、我々は目的意識を持って直ちに行動しなければならない。
今日私は、テロリストなどに狙われうるあらゆる核物質を4年以内に安全な管理体制下に置くため、新たな国際的努力を始めることを発表する。これらの物質を厳重な管理下に置くため、新しい基準を制定し、ロシアとの協力関係を拡大し、また他の国との新たな協力関係も追求する。
核物質の闇市場をつぶし、移送中の物質を探知・阻止し、財政手段を使ってこの危険な取引を妨害するといった取り組みも強化しなければならない。こういった脅威は継続的なものであるため、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)や核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ(GI)などを恒久的な国際機関に変えるべきだ。まずそのはじめとして、米国は1年以内に核管理に関する首脳会議を主催する。
こんなに広範囲な課題を実現できるのか疑問に思う人もいるだろう。各国に違いがあることが避けられない中で、真に国際的な協力が可能か疑う人もいるだろう。核兵器のない世界という話を聴いて、そんな実現できそうもない目標を設けることの意味を疑う人もいるだろう。
しかし誤ってはならない。我々は、そうした道がどこへ至るかを知っている。国々や人びとがそれぞれの違いによって定義されることを認めてしまうと、お互いの溝は広がっていく。我々が平和を追求しなければ、平和には永遠に手が届かない。協調への呼びかけを否定し、あきらめることは簡単で、そして臆病(おくびょう)なことだ。そうやって戦争が始まる。そうやって人類の進歩が終わる。
我々の世界には、立ち向かわなければならない暴力と不正義がある。それに対し、我々は分裂によってではなく、自由な国々、自由な人々として共に立ち向かわなければならない。私は、武器に訴えようとする呼びかけが、それを置くよう呼びかけるよりも、人びとの気持ちを沸き立たせることができると知っている。しかしだからこそ、平和と進歩に向けた声は、共に上げられなければならない。
その声こそが、今なおプラハの通りにこだましているものだ。それは68年の(プラハの春の)亡霊であり、ビロード革命の歓喜の声だ。それこそが一発の銃弾を撃つこともなく核武装した帝国を倒すことに力を貸したチェコの人びとだ。
人類の運命は我々自身が作る。ここプラハで、よりよい未来を求めることで、我々の過去を称賛しよう。我々の分断に橋をかけ、我々の希望に基づいて建設し、世界を、我々が見いだした時よりも繁栄して平和なものにして去る責任を引き受けよう。共にならば、我々にはできるはずだ。
URL:http://www.asahi.com/international/update/0405/TKY200904050209.html
仏「核なき世界」に不快感 大統領府覚書をフィガロが暴露(04/10 20:54)
【パリ10日共同】フランス紙フィガロ(電子版)は10日、オバマ米大統領がプラハで行った核兵器全廃を目指す包括構想の演説について、フランス大統領府がサルコジ大統領に対し「教訓をくみ取ることはない」と否定的な覚書をまとめていた、と報じた。
フランスは米国の核全廃構想について公式には「敬意を表する」(外務省声明)と前向きの姿勢を示しているが、実際には不快感を覚えていることが暴露された。総論としての核軍縮には賛成する一方で、国際社会で核保有国として享受している特権的な地位を失うことへの警戒感が示されているとみられる。
大統領府は報道について、コメントを避けている。
同紙によると、覚書を起草したのは大統領府の外交問題担当官。包括的核実験禁止条約(CTBT)の未発効が、米議会による同条約への批准拒否に起因していることなどを挙げた上で、オバマ大統領の演説は米国によるこれまでの核軍縮の遅延を巧みに隠ぺいしている、と指摘。
URL:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/158296.html
オバマ米大統領:「核廃絶」演説 保有国、冷淡反応 「不快」「空想」、中露に異論
核廃絶を目指す包括戦略を打ち出した5日のプラハでのオバマ演説に対し、他の核兵器保有国から冷淡な反応が出ている。核兵器の堅持方針をとる中露仏では演説への関心は低く、ロシアでは「不快」との声さえある。一方、非保有国からは支持の声も聞かれ、国際世論は割れている。【モスクワ大木俊治、パリ福原直樹、北京・浦松丈二、ニューデリー栗田慎一】
ロシアは公式な反応を示していない。しかし軍事評論家のパーベル・フェリゲンガウエル氏は「プロパガンダ的な演説だ」と指摘した。さらに「米国は核兵器への依存度を減らすことができるかもしれないが、通常兵器の近代化が遅れるロシアにとって軍事大国の地位を維持するためにも核兵器の放棄は受け入れられない。一言で言えば不快」と分析する。
また米カナダ研究所のゾロタリョフ副所長は6日付ロシア紙との会見で「米国は同時にミサイル防衛(MD)整備を進めることで核廃絶が可能だが、ロシアは米国のMD能力が制限されない限り、核弾頭数を1500発以下に減らすことはできない」と指摘した。
ロシアは03年の軍事ドクトリンで核兵器使用の可能性を維持する姿勢を打ち出した。現在新ドクトリンを策定中だが、核戦力を放棄する可能性はない。
中国の主要メディアも冷ややかだ。中国共産党機関紙・人民日報が発行する時事情報紙「環球時報」は7日、「激情演説『これぞ空想』と評論家」との見出しで演説を報じた。記事はまた「核廃絶を求める声が多い日本でもオバマ氏の提案は『夢物語』と受け止められている」と皮肉った。
フランスは「より安全な世界を築く共通の目標がある」(外務省報道官)と表面上は歓迎の意向を示すが、「核抑止力に関する政策は仏の主権の範囲」(サルコジ大統領)とし、米国の意向に容易には従えない。インド政府高官は個人的見解と断ったうえで「核兵器だけを対象にした軍縮は受け入れられない」とした。パキスタン政府幹部はオバマ氏が強化するという核拡散防止条約(NPT)について「インドが加盟に応じれば、パキスタンも応じる」と語った。
その一方、非核国のドイツ政府の副報道官は「力強く支持する」と述べた。シュタインマイヤー外相は、米国の核兵器をドイツ領土から撤去するよう米国側と交渉する意向を明らかにした。
URL:http://72.14.235.132/search?q=cache:XuuyuB2FVqgJ:mainichi.jp/select/world/news/20090409ddm007030037000c.html+%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8F%E6%BC%94%E8%AA%AC%E3%80%80%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%8F%8D%E5%BF%9C&cd=2&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
衆院予算委論戦の焦点(2) 共産・笠井亮氏
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▽核廃絶主導を-笠井氏
▽会議成功に全力-首相
笠井亮氏(共産、比例東京)
【核廃絶】
笠井氏 「核兵器のない世界」実現を訴えたオバマ米大統領のプラハ演説の受け止めは。
麻生太郎首相 これまでの米大統領の演説の中で最も印象的で、正直びっくりした。世界中が大きく歴史を転換させ得る極めて重要で前向きな話だ。
笠井氏 2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、核兵器廃絶のための国際条約締結を目指した交渉に主導権を発揮すべきだ。
首相 きちんとした形が出せるよう成功に向けて全力を挙げたい。
(初版:5月8日19時52分)
URL:http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2009050801000820_Detail.html
「原爆ドーム」としての再出発
広島の復興は、焼け野原にバラックが軒を連ねる光景から始まった。その中で鉄枠のドーム形が残る産業奨励館廃墟はよく目立ち、サンフランシスコ講和条約により連合軍の占領が終わる頃には市民から「原爆ドーム」と呼ばれるようになっていた[4]。
原爆ドームは原子爆弾の惨禍を示すシンボルとして知られるようになったが、一部の市民からの、「見るたびに原爆投下時の惨事を思い出すので、取り壊してほしい」という意見も根強く、その存廃が議論されてきた。市当局は当初、「保存には経済的に負担が掛かる」「貴重な財源は、さしあたっての復興支援や都市基盤整備に重点的にあてるべき」などの理由で原爆ドーム保存には消極的で、一時は取り壊される可能性が高まったが、1960年に被爆による放射線傷害が原因と見られる急性白血病で亡くなった1人の女子高校生が「あの痛々しい産業奨励館だけが、いつまでも、おそるべき原爆のことを後世に訴えかけてくれるだろう」と記した日記を読み感動した平和運動家の河本一郎が中心となって保存を求める運動が始まり、1966年広島市議会は永久保存することを決議する。翌年保存工事が完成。その後風化を防ぐため定期的に補修工事が行われながら保存されている。1989年に行われた2回目の大補修以降、3年に一度の割合で健全度調査が行われ、最近では、2009年に6回目の調査が行われている。1995年国の史跡に指定され、翌1996年12月5日には、ユネスコの世界遺産(文化遺産)への登録が決定された。さまざまな年齢・国籍の人が多く訪れるようになった一方、最近では立ち入り禁止区域に入っての落書きなども問題になっている。
2004年以降、原爆ドームの保存方針を検討する「平和記念施設あり方懇談会」が開催され、「博物館に移設する」「屋根をつける」などの議論も出たが、2006年に今後も原状のまま保存する方針が確認された
世界遺産への登録
経緯
原爆ドームの登録審議は、1996年に開催された世界遺産審査委員会で行われた。このときアメリカ合衆国は、原爆ドームの登録に強く反対。調査報告書から、世界で初めて使用された核兵器との文字を削除させた。また、中華人民共和国も、日本の戦争への反省が足りないとして、棄権に回った。
URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E7%88%86%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0
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