日本のパンデミック防御陣


日本は新型インフルエンザの水際阻止に全力を挙げている。

画像


成田空港のゲートでは、検疫所が体温を測定するサーモグラフィーを27日に設置、検疫所の医師らが機内から降りる旅客に異常がないか呼び掛け、任意で体温などのチェックを行っているし、機内でインフルエンザの簡易検査をするなどの対策をしている。

4月30日からこれまでの関連報道を列挙してみると以下のとおり

画像


44681
・成田着の乗客1人から陽性反応(毎日新聞 - 04月30日 21:32)
・<新型インフル>患者封じ込めへ 医療機関、応援態勢も着々(毎日新聞 - 04月30日 22:02)
・<新型インフル>成田乗客「A型」陽性 関係者ら対応(毎日新聞 - 04月30日 22:22)
・機内で検査、規制線で緊迫=「離れ離れの親子も」-成田空港・新型インフル(時事通信社 - 04月30日 23:01)
・「新型」感染の疑いなら10歳代にもタミフル容認…厚労省(読売新聞 - 04月30日 23:22)

44682
・国内初 17歳が新型感染の疑い(毎日新聞 - 05月01日 01:02)
・新型インフル 家庭での対処法(読売新聞 - 05月01日 01:01)
・「成田着の女性、新型インフルではない」…厚労省(読売新聞 - 05月01日 01:50)
・<新型インフル>水際阻止できず 高校生初の疑い例確認(毎日新聞 - 05月01日 02:32)
・日本人女性に詳細検査=新型インフルの疑いなし-成田(時事通信社 - 05月01日 03:01)
・女性は新型インフルの疑いなし(時事通信社 - 05月01日 05:01)
・政府 感染確認なら学校は休校(時事通信社 - 05月01日 06:11)
・高校生 29日の簡易検査は陰性(時事通信社 - 05月01日 07:01)
・体温は37.1℃=新型インフルが疑われる横浜市の高校生(時事通信社 - 05月01日 10:01)
・男子発症の学校、臨時休校に(読売新聞 - 05月01日 11:40)
・<新型インフル>感染確定診断まで1~2日 横浜の高校生(毎日新聞 - 05月01日 11:52)
・国交省、日航に名簿提出要請=感染疑いの高校生が搭乗(時事通信社 - 05月01日 12:11)
・長い潜伏期間、疑問視も=帰国後、発熱まで4日間-新型インフル疑いの高校生(時事通信社 - 05月01日 12:11)
・男子生徒、帰国4日後に発熱=滞在先同じ別生徒は異常なし-横浜(時事通信社 - 05月01日 12:11)
・米から帰国のトヨタ社員、新型インフル疑いで検査…政府高官(2009年5月1日23時28分 読売新聞)
・新型インフルの疑いなし=米国から帰国の会社員-名古屋市(時事通信社 - 2009/05/01-23:51)

画像


これほどの対策を速やかにやってのけ、当局の指示にきちんと従って、対応する病院・学校・民間人がいる国が一体世界にどれだけあるのか。 たとえ過剰反応だと言われたとしても、今回のような弱毒性ではなくて、致死率の高い強毒性ウイルスによるパンデミックが発生したらどうするのか。今回の問題は、返って日本の様に対応したくてもできない現実を見せつけられているのではないだろうか。

日本の場合は、感染が疑われた成田着の女性は新型ではなくて、入院先の病院に隔離された横浜の高校生もシロ。米から帰国のトヨタ社員も新型インフル疑いで検査しているけれど、これも新型ではないようだ。

それに何よりすごいのは、簡易ではあるけれど、僅か1~2日で確定診断できる体制を整えていること。

既に新型はA型と分っているから、最初に15分でわかる簡易キットでA型かそうでないかスクリーニングして、A型だったら、PCR検査と呼ばれる遺伝子情報を増幅させる検査で、CDC(米疾病対策センター)が公開している遺伝子データと照合して、確定診断をする。ここまでで1~2日程度。

もちろん、最終確認には実際の「新型」のウイルス検体が必要だし、検査依頼の患者が増えれば2日で確定診断が終わるわけはないのだろうけれど、初動でここまで対応を取っていれば、仮に新型が日本に入ってきたとしても、かなりの確率で新型を捕まえることができるのではないかと思われる。

画像


更には、日本人の民度の高さもこれに貢献してる。

機内で新型インフルエンザ感染の疑いが持たれていた日本人女性(25)の前後左右2~3列に座っていた人は確定診断がでるまで、空港内のホテルで待機していた。それも任意で。待機した乗客は11人だというから、前後左右2~3列の半分以上の人が任意で隔離に応じたということ。

成田空港に25日に到着したメキシコ発バンクーバー経由の航空機から降りた外国人女性は、サーモグラフィー引っかかって、関係者に体温確認を要請受けたにも関わらず、その場を立ち去ってしまったというから、認識と意識からして違う。

また、韓国では、5月1日の段階で、21人が新型に感染した疑いがあり、うち3人が感染の疑いが濃厚。そのひとりは、最近海外旅行とかしておらず、二次感染も疑われてる。それに確定診断まで2週間ほどかかるという。

こうしたところで、国としての対応力や民度の力が垣間見える。新型インフルエンザ封じ込めに日本が成功することを期待したい。

画像



画像新型インフル、国内初の感染疑い例 横浜の男子高校生2009年5月1日2時4分  

 舛添厚生労働相は1日未明、厚労省で記者会見し、国内で初めて、新型の豚インフルエンザの疑いがある患者が見つかったと発表した。カナダから帰国した横浜市の日本人男子高校生(17)で、快方に向かっている。さらに詳しく調べ、新型インフルエンザ患者と確認されれば、国内で初めてとなる。同行者がいて、複数の感染者が出ている可能性があるという。ただ、現段階では通常の季節性のインフルエンザの可能性が完全には否定されていない。

 同省は国内での男子高校生の行動や接触者、同行者の状況などを調べる。帰国者から疑い例が見つかったことで、国内で感染が広がっている恐れが出てきた。

 厚労省などによると、男子高校生は4月10~25日にカナダ・ブリティッシュコロンビア州に高校の研修旅行で滞在。帰国した航空機には生徒115人を含む乗客・乗員402人が乗っていた。帰国後の30日に医師の診察を受け、簡易検査でインフルエンザA型が陽性との結果が出た。発熱、せき、たんの症状がある。

 横浜市などによると、男子高校生は1日午前0時前、市内の病院に入院した。1日午前0時すぎの時点でせきなどの症状がある。治療薬リレンザを服用し、通常のインフルエンザと同様の症状で、軽症という。

 男子高校生のケースでは横浜市衛生研究所から、検査材料が東京都の国立感染症研究所に運ばれた。感染研は1日のウイルス遺伝子検査(PCR法)などで結果がはっきりしなかったため、より詳しい遺伝子解析で確定を目指す。

 ただ、確定に必要なウイルスを米疾病対策センター(CDC)から取り寄せようとしているが、まだ届いていない。そのため感染研は、CDCが公開しているウイルスの遺伝子情報をもとに、仮の検査を実施し、感染したかどうかを判断することにしている。患者の鼻の粘液などに含まれるウイルスの遺伝子と照合させることで、より確度の高い検査ができるという。

 男子高校生の学校によると、この生徒と一緒にホームステイした別の生徒に、せきの症状が出ているという。

 一方、米ロサンゼルス発の航空機で30日に成田空港に到着し、簡易検査でA型インフルエンザの陽性反応が出た日本人女性は、A香港型と判明し、新型インフルに感染していなかったことがわかった。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0430/TKY200904300275.html



画像新型インフルエンザ 男子高校生は陰性、ウイルスは「Aソ連型」

政府関係者は1日午後、FNNの取材に対し、新型インフルエンザ感染の疑いがあった神奈川・横浜市の男子高校生について、検体を濃縮して調べ直した結果、PCR検査で「新型インフルエンザではない」との結果が出たとの見方を明らかにした。
その後、午後5時半から厚生労働省が会見を行い、「Aソ連型」、季節性のインフルエンザだったという結果が発表された。
厚労省は、会見で「当該患者は、季節性インフルエンザに感染していることが確認され、新型インフルエンザへの感染は否定されるものと考えられる」などと語った。
(05/01 17:40)

URL:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00154283.html



画像研修旅行の554人、調査へ=検査結果、夕方にも判明-カナダから帰国の高校生 5月1日6時41分配信 時事通信

 カナダから帰国した横浜市の高校生(17)に新型インフルエンザ感染の疑いがあることを受け、同市は1日、一緒に研修旅行に参加した約554人の生徒と教職員らに対する聞き取り調査を始めた。発熱の有無など健康状態を調べ、同様のケースがないか確認を急ぐ。クラスメートや同じ部活の生徒については、保健所職員が直接調べる。
 また、市衛生研究所の遺伝子レベルの詳細診断「PCR検査」で「解析不能」との結果が出たため、高校生の検体を国立感染症研究所(東京都新宿区)に送り、改めてPCR検査を実施。結果は同日夕にも判明する見通し。市によると、高校生の症状は快方に向かっており、ほかに具合の悪い生徒も現時点ではいないという。
 同市健康福祉局によると、高校生は4月10日から25日まで、研修旅行でカナダ西部のブリティッシュコロンビア州に滞在。帰国後の29日、39度台前半の熱が出たため、市内の医療機関で受診。簡易検査の結果、陰性だった。しかし30日午前、別の病院で再検査したところ、A型の陽性反応を示したため、自宅で待機させた。
 市衛生研究所がPCR検査を行い、高校生の検体を調べたところ、「解析不能」との結果が出た。このため、1日午前零時前、高校生を市立市民病院に搬送した。
 高校生は治療薬「リレンザ」を投与された後、回復に向かっている。30日には熱が37度台前半まで下がった。家族にはインフルエンザの症状は見られないという。
 1日未明に記者会見した市健康福祉局の岩田眞美健康安全課担当部長は「(感染が)確定しているわけではない。不安があれば市に相談してほしい」と市民に冷静な行動を取るよう呼び掛けた。

URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090501-00000031-jij-soci



画像【新型インフル】成田、ホテルで待機の乗客が家路へ 2009.5.1 11:14

 米国から4月30日午後に成田空港に帰国し、機内で新型インフルエンザ感染の疑いが持たれていた日本人女性(25)の前後左右2~3列に座り、任意で空港内のホテルで待機していた乗客11人が1日午前、約17時間ぶりに帰路についた。

 ホテルによると、乗客は2階に宿泊し、1日午前8時ごろに食事したという。乗客は午前8時45分ごろ、ホテル玄関わきに航空会社が手配したバスに乗り込んだ。バスは空港ターミナルビルに向かい、乗客は各種の手続きを受けたとみられる。

 バスに乗り込む乗客は一様に疲れた表情を見せていたが、中には待ち構えた報道陣に左手を挙げてVサインをするマスク姿の男性もいた。

 乗客11人は、米国からノースウエスト機で成田空港に到着した。機内の簡易検査で日本人女性が新型インフルエンザの陽性反応が出たためホテルで待機。女性はウイルスの遺伝子検査「PCR」の結果、新型インフルエンザに感染していないことが判明した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/life/body/090501/bdy0905011116020-n1.htm



画像【新型インフル】国内の確定 最短3日 検体未着で仮診断のみ 2009.4.30 00:20

 新型インフルエンザの被害が世界的に広がるなか、日本国内で感染の疑いがある人が出た場合、「感染確定」に3、4日かかることが分かった。確定に必要なウイルス検体が、米疾病対策センター(CDC)から到着していないためだ。

 政府が今回宣言した「新型インフルエンザ」はA、B、Cと3種類ある通常のインフルエンザウイルスのうち「A型」の一種だ。

 感染しているかどうか調べるためにはまず、通常のインフルエンザのときに使う簡易診断キットを使う。この検査は約15分。A型だった場合も、通常の季節性か新型なのか分からないため、遺伝子情報を増幅させるPCR検査を行う。この検査には4~7時間かかる。

 しかし、最終確認には実際の「新型」のウイルス検体が必要になる。国内には「新型」のウイルス検体がないため、現在、国立感染症研究所はCDCから検体を取り寄せているが、感染国が広がる中、当初の予定より到着が遅れており、厚労省では「約1週間はかかる」とみている。

 このため検体が届くのを待たずに、CDCがすでに公開している遺伝子情報をもとに仮の検査を行い、感染したかどうかを判断する。その判断に3、4日かかるという。

 国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「都道府県の地方衛生研究所でも仮の検査が行えるが、この段階では100%ではない」と確定までの難しさを指摘する。

  新型インフルエンザの迅速な確定やワクチン、治療薬の開発に重要なのは、「新型」になる可能性があるウイルスなどの情報を共有することだ。世界保健機関(WHO)には「世界インフルエンザ・サーベイランス・ネットワーク」があり、SARS(新型肺炎)や鳥インフルエンザウイルスの検体を世界各地で共有して、感染確定やワクチン開発などに役立ててきた。

 しかし、鳥インフルエンザの人への感染が続いているインドネシア政府は2007年以降、「検体を無償提供しているにもかかわらず、途上国は開発されたワクチンを高く買わされる」として継続的な提供をやめている。事態を重くみたWHOは5月の総会で、インドネシアが求める「公平で平等な透明な仕組み」作るための会議を開き、解決を図る。

 WHO西太平洋地域事務局の葛西健さんは「パンデミック(世界的大流行)を起こさないためには、鳥由来であれ豚由来であれ、ウイルスなどの情報共有によるリスクの評価が重要だ。世界全体が協力しなければならない」と話している。

URL:http://sankei.jp.msn.com/life/body/090430/bdy0904300021000-n1.htm



画像新型インフル 韓国内初の二次感染か 2009年5月1日9時8分

 【ソウル=牧野愛博】韓国の保健福祉家族省は1日、新型の豚インフルエンザに感染した疑いのある患者が新たに2人見つかった、と発表した。このうち44歳の女性は、最近海外旅行はしていないため、感染が確認されれば韓国内では初めての二次感染となる可能性が出ている。

 同省によると、この女性は先に感染の疑いが出て、隔離された別の50代の女性患者と接触したという。韓国内の感染疑い例は計3人となった。感染したかどうかの確認には、2週間ほどかかる見通しだ。

URL:http://www.asahi.com/international/update/0501/TKY200905010047.html



画像韓国・仏でも新型インフル感染確認2009年5月2日12時28分

 【ソウル=稲田清英、パリ=飯竹恒一】新型の豚インフルエンザは、2日までに韓国とフランスで新たに感染者が確認され、感染が確認された国・地域はこれで計16になった。

 韓国保健福祉家族省は2日、4月26日にメキシコから帰国した51歳女性が、新型インフルエンザに感染していたことが確認されたと発表。韓国での感染確認は初めて。

 女性は4月中~下旬にメキシコに滞在し、仁川国際空港着の航空機で帰国。すでに症状はほぼ回復しているという。また、この女性が帰国後に接触した別の44歳女性も1日に、感染の疑いが濃い推定患者と発表され検査中。最近、海外旅行はしておらず、感染が確認されれば韓国内で初の二次感染となる可能性がある。

 一方、フランス保健省は1日、同国初となる新型インフルエンザの感染者2人を確認したことを明らかにした。AFP通信によると、いずれもメキシコ帰りの男性(49)と女性(24)で、別の1人も感染した可能性が高いという

URL:http://www.asahi.com/international/update/0502/TKY200905020034.html



画像発熱疑いの外国人女性が検疫ゲート突破…成田空港

 メキシコを中心に豚インフルエンザの感染者が広がる中、成田、関西両空港では水際での防止に躍起だ。成田空港のゲートでは、検疫所が体温を測定するサーモグラフィーを設置、検疫所の医師らが機内から降りる旅客に異常がないか呼び掛け、任意で体温などのチェックを行っている。

 ただ、あくまで任意のため、ゲートをすり抜ける人も。成田空港に25日に到着したメキシコ発バンクーバー(カナダ)経由の航空機から降りた外国人女性は、サーモグラフィーの画面で顔が赤く表示されたが、関係者が体温の確認を要請しても、その場を立ち去ってしまったという。任意の壁が立ちはだかっているようだ。

URL:http://www.zakzak.co.jp/top/200904/t2009042733_all.html



画像米から帰国のトヨタ社員、新型インフル疑いで検査…政府高官

 政府高官は1日夜、米国から帰国した名古屋市のトヨタ自動車社員が、新型インフルエンザに感染した疑いで検査を受けていることを明らかにした。

 同高官によると、この社員は一次の簡易検査で陽性反応を示し、遺伝子検査(PCR検査)を行っているという。

(2009年5月1日23時28分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090501-OYT1T01139.htm



画像新型インフルの疑いなし=米国から帰国の会社員-名古屋市

 名古屋市は1日、米国から帰国後、発熱などの症状を訴えた市内の会社員について、簡易検査でA型インフルエンザ感染とされたものの、遺伝子レベルの「PCR検査」の結果、新型ではないH3型であると発表した。(2009/05/01-23:51)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2009050100991



画像2.医療施設内で感染症が発生した際の臨床微生物学 荒川宜親

はじめに

 医療施設,療養施設などにおいて一定期間内に,同じ病原体による感染症が複数の患者に発生した場合,それが外部からの持ち込みによる偶発的な同時多発なのか,あるいは医療施設内での病原体の二次的な伝播拡散によるいわゆる「院内感染」(「病院感染」)によるものなのかを見極め,適切な対策を講じることが重要となっている。

 本章では,微生物学的視点から,医療施設内で感染症が発生した際の鑑別点や識別方法について概説する。

《中略》

2)遺伝子検査

 (1) PCR検査を実施する際には,必ず陰性対照と陽性対照を置き,検出キットやPCRプライマーの性能の点検とともに汚染を否定することが重要である。(AI)

 (2) PCRでDNAが増幅されバンドが観察されても,非特異的な反応によるバンドの可能性もあり,それを否定するため,制限酵素による切断やシークエンスの解析が必要な場合もある。(BII)

 (3) 細菌菌株のPFGE解析で,3本以内のバンドの差に留まる場合は,遺伝的にほぼ同一株(closely related),4―6本のバンドの差が見られる場合は,遺伝的に近縁の株(possively related),7本以上の差が見られる場合は,遺伝的に関連性の薄い株(different)とみなすことが提案されている。(AIII)

 (4) 薬剤耐性遺伝子が染色体上に存在する耐性菌のアウトブレイクの場合には,PFGEはほぼ同じパターンを示す場合が多い。(BII)

 (5) 薬剤耐性遺伝子がプラスミド上に存在する耐性菌のアウトブレイクの場合には,ほぼ同じPFGEパターンを示す株から,まったく異なるPFGEパターンを示す株まで,様々なパターンの株が混在して分離される場合が多い。(BII)

●解説

 PCR検査は感度が高いため,偽陽性反応に注意する必要があり,また使用する水の質からテンプレートDNAの調製時の操作,反応試薬の混合時の操作における菌やDNAのコンタミの防止に細心の注意を払う必要がある29, 30)。また,可能であればプラスミドやDNAを調整する部屋と,空調などが隔離された別の部屋で反応液の混合やPCR反応を実施することが推奨される。さらに,期待されるPCR産物と思われる特定の長さのDNAのバンドが確認される場合にも,偶然の非特異反応であることを否定するため,場合によっては,制限酵素による切断パターンやDNAシークエンスを確認する必要がある31)。

 PFGE解析を実施する場合,MRSAやフルオロキノロン耐性緑膿菌,vanB型VREのように,染色体上に耐性遺伝子を保有する耐性菌が比較的短期間の間に病室や病棟内に拡散した場合,それらのPFGEパターンは,通常,互いに類似したものとなることが多く,院内感染の感染源や感染経路の推定に有用である32, 33, 34)。しかし,耐性遺伝子が伝達性のプラスミド上に存在するExtended Spectrum β-Lactamase(ESBL)産生肺炎桿菌やメタロ-β-ラクタマーゼ産生緑膿菌,vanA型VREなどの耐性菌の場合は,院内感染が発生してから時間が経過するとともに,染色体DNAの変異とともに感染部位や腸内などで近縁の菌種間でプラスミドの接合伝達が起こり,その結果,分離株のPFGEパターンが多様性を示し35, 36),院内感染の汚染源や汚染経路などの特定が難しくなる場合が多い。そのような場合,CDCのF. Tenoverらが提唱する判定基準が参考になる37)(図2-1)。

《後略》

URL:http://www.imcj.go.jp/kansen/c3/c3-2.htm

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック