首相 「テリーさんね、例えば、小選挙区約40万人。有権者40万人。そのうち10万人にテリー伊藤のパンフレット。郵便代切手80円。印刷代、封書して印刷しますから、それで約10万人かけますと、印刷代、封筒代何とかで最低200円。それでかける80円、足す80円。280円かける10万円、それで2800万円ですよ。あれだけ1枚で。これだけお金がかかるということはテリーさん、それだけかかると思っておられました。」
2009年3月15日に行なわれたNHK「総理に聞く」でのやりとりの一部。
民主選挙を行なう限り、選挙にお金がかかることは殆ど避けられない。だから、いろんな企業や団体なんかからの政治献金はとても有難いものだったし、献金が無いととても選挙なんかできない。ところがそうした選挙献金が色々と問題になって、制約を課すようになった。そして、その制約の代償として1994年に政党助成金というものが導入された。
政党助成金とは政党の活動を助成する目的で国庫から交付される資金のことで、その総額は国民1人あたり年間250円。額としては、人口一億二千万人から250円づつ集めて、全部で300億円くらい。
07年の政党助成金は、自民党が165億9583万7000円、民主党には110億6382万4000円が支給されている。全体としてみれば大きな額のように見える。だけど議員一人頭に換算すると五千万円から一億円程度。これでも多いじゃないかと思えなくもないのだけれど、冒頭の麻生総理の発言で分かるとおり、例えば有権者に候補者のパンフレットを一枚出すだけで一人あたり280円かかる。
政党助成金が国民1人あたり年間250円。国民にパンフレットを一枚郵便で出すだけで1人あたり280円。差し引き30円のマイナス。候補者は一年で一枚のパンフレットも送れない。
ならば手紙じゃなくて、どこかの集会場にすればいいじゃないかという考えも当然ある。だけど、もしそうしたとしても、多くの人数を収容できて、しかもタダで貸してくれる場所なんて殆どない。たとえば球場を使ったとしても、せいぜい数万人ぐらいしか入れない。それに球場使用料だってバカにならない。地方球場なんかだと一日数千円で貸してくれるところもあるだろうけれど、都市部でドーム球場なんかになったら、数万、数十万単位で必要になる。
ましてや選挙区全員が一度に入れる会場なんて考えられない。それ以前に何万人も一箇所に集めたら、会場設営だとか警備誘導だとか安全確保のための人員も必要になる。入場料でも取らないと採算が合わなくなってしまう。
そうなると必然的に大会場ではなくて、地元の集会場なんかを安く借りてということになるけれど、そんなところは大抵50人か100人入ればもう満杯。だから、より多くの有権者に聞いて貰いたければ、順番に何度もやるしかなくなる。
仮に有権者一人あたり250円助成して貰えるという前提で考えてみても、会場に100人に来てくれてやっと二万五千円分の助成金が貰える。それを午前と午後の一日2回やったとして、200人で5万円。いくら地元の集会場とはいえ、会場を一日借りる費用にお茶とお菓子を出せば殆ど無くなってしまう。スタッフに謝礼でも払えばまず赤字。
テリー伊藤氏は、民主主義の運営コストとして政党助成金を払っているというけれど、一年で一枚の手紙も送れず、会場も満足に借りられないような金額しか渡せなくて、一体何を助成していると言うのだろうか。
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「総理にきく」全文…支持率「厳しい評価を頂いている」 15日のNHKの番組での麻生首相の発言は次の通り。
《前略》
【西松建設問題】
――西松建設の問題だが、首相には捜査関係の情報が事前にあったのか。
首相 私のところに、小沢さんの第1秘書の逮捕が事前にテレビに出る前にあったか。ありません。あの日は確か、全く、経済財政諮問会議がやってた最中に逮捕という話が出たと記憶しますけれども、それ終わった後、秘書が言ってきましたんで、それまで全く聞かされておりません。
――なぜいまの時期に捜査なのかという点に関連して、検察当局ではなくて、法務省の当局が国会で説明する必要ではないかという意見もある。
首相 日本の場合は、司法、立法、行政という三権がきちんと独立を維持されていると私自身は、民主主義国家としての基本は確実にこれまで守られていると思っております。従って、このタイミングだからやるべきじゃないという種類の判断を検察がするかというのはなかなか考えにくい。事実、この国は内閣総理大臣、田中角栄ですら逮捕するという国ですから、そういった意味では、今言われたような配慮をしてというような感覚というのは検察には持ち合わせていないと私自身はそんな感じがしますけど。
――(テリー氏)今回の件では麻生さんにガッカリした。もっと怒って良かった。おれが政策で頑張っているのに、何を水を差すんだと。公共事業を受注している企業の企業献金はなくなると、麻生さんから各党各派に発言すべきだった。
首相 これはね、テリーさんなかなか難しいんですよ。法律的には。基本的には。少なくとも、国民にとって民主主義というルールを維持するのにコストの話ですから、企業は企業、個人は個人、団体は団体、それぞれに民主主義というものをきちんと運営するコストを払ってもらわなにゃいかんわけ。
――(テリー氏)そのために国民は政党助成金として払っている。国民は納得しない。
首相 テリーさんね、例えば、小選挙区約40万人。有権者40万人。そのうち10万人にテリー伊藤のパンフレット。郵便代切手80円。印刷代、封書して印刷しますから、それで約10万人かけますと、印刷代、封筒代何とかで最低200円。それでかける80円、足す80円。280円かける10万円、それで2800万円ですよ。あれだけ1枚で。これだけお金がかかるということはテリーさん、それだけかかると思っておられました。
――(テリー氏)とは言っても、小選挙区制になるということは、お金がかからないと聞かされていた。今そういうことを言われても、国民としては何言ってるんだという感じがする。
首相 僕は事実を言っているんであって、かからないという話で、前よりかからなくなりましたよ。中選挙区のときよりかからなくなったことは確かだと思う。
――(テリー氏)西松の問題とちょっと問題がずれている。
首相 それはそうです。だから、僕の言うのは、西松建設からのお話というのは、西松建設という建設会社が政党に対してきちんとした形で、政党支部なり、そういった政治団体に寄付をというような形でいろいろやっておられる分には良かったんでしょうけど。それがいまのルールをかいくぐって、いろんな形でやられたところが問題なんだと。だから…。
――(テリー氏)ということは、ザル法だったと。
首相 いや、そんなことないですよ。ザルだったら捕まりませんもん。
《後略》
(2009年3月15日20時16分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090315-OYT1T00666.htm
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