F22はニュータイプ仕様
昨日のエントリー続きとして、F22とユーロファイターの比較をしてみる。
ジェット戦闘機は1940年代に初登場したジェット戦闘機を第1世代として、現在最新のF22までの第5世代までに分類されている。おおよその分類と代表機種を次に示す。
世代 年代 特徴 代表機種
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第1世代 1950~1950 亜音速 F86F,MIG-17
第2世代 1950~1960 超音速 F100,MIG-21,ミラージュⅢ,サーブ35ドラケン
第3世代 1960~2000?超音速 F4ファントムⅡ,MIG-25,ミラージュF1,サーブ37ビゲン,三菱F-1
第4世代 1980~2010?多目的 F14,F15,F16,MIG-29,Su-27,ミラージュ2000,J11A
第4.5世代 1990~2020?高機動 F15E,F18,Su-33,ユーロファイター,殲10,三菱F-2
第5世代 2000~2025?ステルス F22,(F35,Su-47,心神)
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ユーロファイターは、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツの四カ国が共同開発した戦闘機で第4.5世代戦闘機に分類されている。
とはいえ、第4.5世代の第5世代との差はステルス性くらいであって、武器積載量なんかは第5世代を上回っている場合さえある。これは、第5世代戦闘機がそのステルス性を確保するために、武器弾薬を機体内に納めたデメリットでもある。
ユーロファイターとF22の緒元性能を比較すると、空戦能力もF22に次ぐとされ、ステルス性くらいしか大きな差は見当たらない。F22と比べれば速力は劣るものの、全備重量でマッハ1.3の超音速巡航(スーパークルーズ)も可能だという。
ステルスといっても全くレーダーにキャッチされないというわけじゃない。距離がうんと近づけば通常レーダーでも探知されてしまう。
レーダーは自身から発したレーダー波が、対象物体にぶつかって反射した信号をキャッチすることで探知する仕組みだから、ステルスは基本的に、自機に向かってくるレーダー波を吸収するか、そのまま反射させずに横方向とかに散らすことを基本コンセプトにしている。
だからステルス戦闘機は、向かってきたレーダー波を180度反射させないようにレーダー波に対して垂直になる面を極力さける形状をとることになる。尾翼なんかをわざと斜めに取り付けたりするのなんかはその例。また、レーダー波を吸収するような特殊な素材を使ったり、電波を吸収する性質を持つ塗装を施したりする。その反面、機体の僅かな傷とか塗装の剥げなんかにも気を使わなくてはならなくなって、メンテナンスが大変になる。
今では、ステルス能力を示すのに、RCS(Radar cross section)という指標が良く用いられる。RCSとはある物体をレーダーの電波で捉えたときに、その電波の反射波が発信したレーダーに戻ってくる部分を面積で表したもの。
F15のRCSは6㎡であるのに対して、F22のRCSはわずか0.01㎡で600分の1。レーダーの探知距離はRCSの4乗根に比例するとされているから、F22はF15と比べて大よそ5分の1の被探知距離しか持っていない。更に付け加えるなら、F22の正面のRCSはなんと0.0001~0.0006㎡であり、小鳥か昆虫と同レベルだという。
ステルス対策自身は、ユーロファイターにも施されてはいる。だけどそれは、電波吸収材の使用などによる前方からのRCSの低減に特化している。よって、空戦のように正面の敵機からのレーダー探知には威力を発揮するけれど、敵基地攻撃のように地上からのレーダー探知みたいに正面以外からのレーダー波には弱い。
ユーロファイターのRCSはトーネードー爆撃機の4分の1以下で、F18スーパーホーネットのRCSである約1.0㎡より小さいとされている。仮にユーロファイターのRCSを1.0㎡と仮定して被探知距離をF22のRCSの0.01㎡と比較すると、ユーロファイターはF22の約3倍の被探知距離になる。尤も正面RCS同士での比較だと6.4~10倍にまで広がってしまうから、相当に差があると見ていいだろう。
いずれにせよ、これを致命的とみるかそうでないとみるかが一つの指標になるように思う。
F22が眼前に迫るまでレーダーで捉えられず、逆にF22からは攻撃されるということは、F22と空戦をする戦闘機はほぼ一方的にやられてしまうことになる。これはもう殆どガンダムで言うところのニュータイプにF22はなっているといえないか。
実運用面を別として、世界一の性能を持つF22に関しては、導入するだけで発揮する効果がある。それは、その圧倒的性能を見せ付けることで相手の侵攻意欲を挫くこと。
以前「中国の軍事問題の拡張」のエントリーで、圧倒的技術優位を確立する象徴的な存在を開発・配備するところから始めるのがいいといったことがあるけれど、F22を配備することができれば、そのとおりの効果を発揮するだろう。
F-15SE サイレント・イーグル F-15SE Silent Eagle prototype strike fighter
F-15SE(サイレント・イーグル)はボーイング社が2009年3月17日に公開した計画中の戦闘爆撃機である。開発の主眼は、ステルス性、兵装の機内搭載能力、統合されたデジタルアヴィオニクスという第5世代戦闘機の特徴である能力をF-15に付与し、国際マーケットを狙うというものだ。
第4世代戦闘機を改良することにより空対空レーダーに対するシグネチャー、つまりは機体正面のRCS(Radar Cross-Section=レーダー反射面積)を減らすことがF-15SEの最大目標で、ボーイングはF-15戦闘機を運用する5ヶ国に対して合計190機の発注を試算している。
RCSを減少させるために、レーダー波を反射しやすい機体のエッジの部分にRAM(Radar Absorbed Material=レーダー吸収素材)をコーティングするとともに、F-15Eでは直立していた垂直尾翼を15°外側に傾けることで、横方面へのレーダー反射の減少も狙っている。
このV字型の垂直尾翼はRCS減少の他にも、空気力特性が改善され揚力が向上するといった付随的な効果もあるようだ。
そしてF-15Eではコンフォーマル燃料タンクだった箇所の一部をウェポンベイとし、そこに兵器を内蔵することで全方位のRCSを減少させ、F-15SEにクリーンな状態で作戦行動を行えるようにしている。
これらの改良の結果、正面のRCSに限って言えば、F-15SEのステルス性は輸出市場で競合するであろう第5世代戦闘機、すなわち F-35ライトニングⅡや米政府の許可を得た F-22ラプターの輸出版に匹敵するとボーイングは主張している。
ただしF-15SEが得たステルス性はあくまで正面からに限った話で、地上に設置された対空レーダーに対しては意味を成さないことはボーイングも認めており、この点はSAM(Surface to Air Missile=地対空ミサイル)を装備した相手を目標とする攻撃的なミッションでは不利となる。
またF-22ラプターに施されたようなサーマル・シグネチャーを減少させることもボーイングの計画には含まれていないため、熱探知ミサイルに対する生存性は非・ステルス機と変わらない。
しかしF-15SEがターゲットとする国際的な顧客は、強固に防御された地点を叩くような全方位のステルス性が要求される攻撃的なミッションよりも、迎撃任務のような防御的なミッションに航空機を使用しているとボーイングは発言しており、F-15SEのステルス性で問題ないとの姿勢を示した。
ステルス性が特徴のF-15SEだが、もちろん非・ステルス機としても機能するようにデザインされており、その場合はF-15Eと同様に13,200kg(29,000lb)の 兵装を機外に搭載することができる。
またウェポンベイを内蔵したコンフォーマル燃料タンクは簡単かつ迅速に取り外すことができるため、F-15SEはステルスモードでのミッションを終え基地に帰還後、2時間以内に今度はフル装備の状態で離陸することも可能だ。
F-15SEのもうひとつの重要な特徴は電子戦システムである。
ボーイングはデジタルレーダー警戒装置、ジャミング電波送信機、ECCM装置等を統合させたBAEシステムズ社の電子戦システム(DEWS=Degital Electronic Warfare Suite)をF-15SE用に採用した。F-15SEは自身のレーダーやレーダー警戒機を作動させた状態でも、敵のレーダーを継続的にジャミングすることができるとボーイングは主張している。
飛行試験は2010年の第1四半期に予定されており、海外顧客への受け渡しは契約が成されてから3年後に行えるとしている。
ボーイングはF-15SEをイスラエル、日本、シンガポール、サウジアラビア、そして韓国といういずれも既にF-15戦闘機を運用している国々に売り込みをかける計画だ。
ボーイングの試算では、F-15SEのコストは機体本体にスペアパーツと訓練費用を加えて1億ドルになるとしている。
なおF-15戦闘機の単独では最も大きな顧客であるアメリカ空軍については、F-15SEの販売ターゲットには公式的にはなっていない。
しかしながらF-15SEに取りいれられたステルス性やアヴィオニクス、機体構造のアップグレードは現存するF-15Eのレトロフィットに用いることが可能だとしている。
URL:http://m3i.nobody.jp/military/f15semenu.html
F/A-18E/F SuperHornet
F/A-18ホーネットはF-4ファントムとA-7コルセア双方の代替機として開発されたアメリカ海軍の艦上戦闘攻撃機である。
ハイローミックスの思想の基にアメリカ空軍がF-15の補佐としてF-16を導入したが、その際空軍で採用されなかったノースロップYF-17を基にマクダネル・ダグラス(現ボーイング社)と共同でF/A-18Aホーネットが開発された。
F/A-18Aはその後も改修が続けられ副座型のF/A-18Bやアビオニクス改良型のF/A-18C/Dが登場し長い間海軍の主力戦闘機として活躍していたが、F-14やA-6の後継としては明らかに能力不足で、特に航続距離不足やペイロード不足が指摘されていた。
そしてA-6の後継機になるはずだったA-12の開発中止を受けて、F/A-18C/D型をベースに大幅改修を施したF/A-18E/Fスーパーホーネットが開発されることとなった。
1992年に開発が承認され、1995年11月29日に初飛行、1999年11月17日から実戦配備が開始された。
主な変更箇所として胴体を86cm延長し主翼面積を25%、ストレーキの面積を35%、垂直尾翼面積を15%増大させている。これによりストレーキや垂直尾翼内にまで機内燃料タンクを増やすことで燃料搭載量を38%増大させている。水平安定板面積は36%、方向舵面積は54%、作動範囲は10度増えているため、より一層舵の効きが強くなっており、機動性の向上に貢献している。ストレーキの大型化により40度を超える大迎え角の飛行も可能となった。
エンジンはF404-GE-402からF414-GE-400に換装され推力が強化され、ペイロードが30%増加し9トンもの兵装を装備出来るようになった。パイロンも2ヶ所増えて11ヶ所になったため機外燃料搭載量も増加した。燃費は悪化しているが機内燃料の増加のため航続距離は最大40%増加している。それでも航続距離はF-14に追いついておらず、機体重量の増加のため加速性能も悪化している。
エアインテイクはステルス性を意識し楕円形から平行四辺形に変更されており、他にも各所にRAM(電波吸収塗料)が施されている。ステルス性を意識したとはいえ、多少の設計変更では全体のステルス化は到底無理なので、正面からのみステルス性が高められている。これにより正面のRCS(レーダー有効反射面積)は1平方メートル程度となっている。
これらの改修により機体サイズはF/A-18A~Dよりも一回り大きくなっている。改修型とはいえF/A-18C/DとF/A-18E/Fの共通部分はコックピット周辺の1割程度だと言われており、性能的にもほとんど別物の機体といってもいいだろう。
レーダーはF/A-18A~Dに搭載されていたAM/APG-65の発展型であるAM/APG-73を搭載しており、このレーダーは従来の3倍の処理能力を持ち記憶容量も増加している。さらにアップデートとしてAESA(アクティブ電子走査アレイ)式のレーダーであるAN/APG-79への換装も進められており、これによりレーダー探知距離が増加し、高い対電子戦能力を得るとともに高解像度対地マッピング等も可能となる。
▲ATFLIRポッド
レーダーに次ぐ重要なセンサーとしてレイセオン社製のAN/ASQ228 ATFLIR(発達型目標指示赤外線前方監視装置)ポッドが搭載された。このATFLIRポッドには航法FLIR、レーザー照射・測距装置、光学センサーユニットが納められており、高解像度画像による幅広い識別能力や、ズーム倍率増加により従来より高々度、長距離からの目標指示が可能となり、スタンドオフ距離からの高い精密爆撃能力を得ることに成功している。
▲デジタル化されたコクピット
アビオニクスは90%がF/A-18C/Dと共通性を持っているが、コクピットの表示装置はCRTからタッチパネル式のカラー液晶ディスプレイに変更されている。発展型のブロック2では統合ヘルメット装着キューイングシステム(JHMCS)も搭載され、AIM-9Xサイドワインダーの運用が可能となる。操縦系統にはデジタルフライバイワイヤが採用されており、F/A-18C/D同様に発着艦を自動操縦で行うことが可能である。
複座型のF/A-18Fでは前後席に互換性があり、後席からでも操縦が可能となっており、練習機としても使用される。通常は後席に兵装システム士官(WSO)が搭乗し、対地攻撃ミッションや空中給油機として運用される。
固定兵装としてM61A1バルカン砲を搭載し、11ヶ所あるパイロンにはAIM-9サイドワインダーやAIM-120AMRAAM等の空対空ミサイルから各種通常爆弾や誘導爆弾、スタンドオフ兵器、増漕、各種ポッド類など米軍の使用するほとんどのウェポンを搭載可能で、その兵装組み合わせパターンは30種類以上に及ぶとされており、マルチロールファイターとして様々な作戦に柔軟に対応できるのも大きな特徴である。
防御用機材としては、AN/AFR-67レーダー警戒受信機、AN/AAR-57共通ミサイル警報装置、AN/ALQ-165機上自己防御装置、AN/ALQ-214統合電子防御対抗手段、AN/ALE-47チャフフレアディスペンサーなどを搭載し、AN/ALE-50曳航式デコイの装備も可能。
バリエーションとしてEA-18Gグロウラーが開発されており、2006年8月15日に初飛行した。EA-18Gは複座型のF/A-18FをベースにEA-6Bプラウラーの後継機として開発された電子戦機で、基本的にはEA-6Bと同等のECMシステムを備える。
搭載されるAN/ALQ-99TJS戦術電波妨害システムはシステム用統合受信機(SIR)のアンテナ群と、ジャマー2台・送信アンテナ・発電用ラムエアタービンを内蔵した430kgの外装ポッドからなる。このシステムでは9バンドの周波数帯域に対応しており、ユニバーサル・エキサイターにより1つのポッドで2つの周波数帯に同時妨害をかける事が出来る。
他にはAN/ALQ-218広周波数帯受信機が搭載され11ヶ所ある搭載ステーションのうち5ヶ所がECMシステムに使用される。残りの6ヶ所には増漕とAGM-88HARM高速対レーダーミサイル、自衛用のAIM-120AMRAAMやAIM-9サイドワインダーが搭載される。
後席にはECMO(電子妨害士官)が搭乗するが、EA-6Bでは4人乗りであったのに対しEA-18Gは2人乗りで、ECMOは3人分の作業を1人で行うことになる。これに対しボーイングでは「合理的でワークロードを減らすコクピットシステムにより、複座であってもEA-6Bと同等かそれ以上の作戦行動を可能にした」としている。
EA-18Gは現在評価試験中で、2008年に実戦配備される予定である。
URL:http://www.geocities.jp/eaglet_f15/MILITARY/FA-18EF.htm
Eurofighter Typoon
ユーロファイター タイフーンはイギリス、イタリア、スペイン、ドイツが共同で設置したユーロファイター社によって開発された第四世代戦闘機で、トーネードの後継にあたるマルチロールファイターである。以前はEF-2000と呼ばれていたが、1998年に輸出用にタイフーンという名称が付けられ、現在では愛称となっている。
1980年にフランス・西ドイツ・イギリスによってヨーロッパ戦闘機計画(ECA)が開始されその後一度挫折したものの、1983年にイタリアとスペインも加わって将来ヨーロッパ戦闘機(FEFA)計画として再開、その翌年にヨーロッパ戦闘機(EFA)計画と名称変更され開発が続けられた。
しかし1985年にフランスが運用要求の違いにより計画から脱退し、独自に戦闘機を開発することとなり、残った4カ国で開発が続けられる事となる。フランスは後にEFAで得たデータをもとにラファールを開発しており、形状が何となく似ているのはこのためである。その後東西ドイツ統一や開発の遅延により資金不足となり一時白紙撤回されそうになったのだが、この計画には既に巨額の資金が投入されており撤回するにしては時既に遅しということで、1992年にEFAからEF2000計画に名前を変えて開発が継続された。
1994年に初号機が初飛行し、2003年から初期生産型で空対空戦闘型のトランシェ1が引き渡されており、2005年からは対地攻撃能力を有するトランシェ2の生産が開始された。現在開発中のトランシェ3では、フェイズド・アレイ・レーダーなどの搭載によりさらに高い攻撃能力を持つようになると言われている。
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機体構成
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機体は主翼にデルタ翼と前翼としてコクピット前方に全遊動式のカナード翼(先尾翼)がある、クロースカップルドデルタと呼ばれる機体構成となっている。1960年代にサーブ・ビゲンから採用されたクロースカップルドデルタは、カナードからの渦流が主翼上面を通り抜けることにより、より大きな揚力を発生させることで低速時や大迎え角時に主翼の失速を遅らせ、補助翼や垂直尾翼の効きの低下を遅らせるという利点がある。そのため従来の翼面形に比べSTOL性能にや機動性に優れている。
この時期にヨーロッパで開発された戦闘機は軒並みカナード付きデルタ翼というクロースカップルドデルタ構成を採用しており、日本のF-2もF-16ベースになる前はこの形態を取る予定であった。
航空機にとって安定性と運動性能というのは言わばトレードオフなので、運動性能を高めるために最近の戦闘機は空力学的に不安定な形状になっている。特にタイフーンのようなクロースカップルドデルタ機では顕著で、それをコンピュータ制御によるフライ・バイ・ワイヤによって安定飛行させることで逆に高い運動性を得ている。
タイフーンでは4重のデジタルフライバイワイヤと8基のCPUで制御されており、これによってケアフリーハンドリングと呼ばれる操縦システムが実現されている。
これは、例えば通常ではパイロットが何も考えずに無茶な操縦を行った場合ストール(失速)やスピン、オーバーGなど機体に過剰な負荷が掛かり危険な状態になってしまうことがあるのだが、ケアフリーハンドリングではコンピュータが速度、高度、形態、バランス、機体負荷といった飛行パラメーターを常に認識し、操縦に対する機体反応を制限することで、このような危険な状態を発生しないようにし、どのような時でも最適な機体コントロールを実現する。
さらに、ボタン一つで機体を水平状態に戻す機能もあるため、パイロットがバーティゴ(空間識失調)などに陥ってしまっても即座に安全な状態に保つことが出来るだろう。
ところで人間の限界は9G程度までと言われているが、それでも短時間の機動が限界であった。タイフーンではパイロットが着るGスーツ、加圧呼吸装置も新規開発されパイロットは長時間9Gの機動に耐えることが出来るようになり、ケアフリーハンドリングにより機体、パイロット共に長時間の高機動戦闘が可能となった。
機体構造はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、アルミニウム、チタン等から構成されている。特にCFRPは機体構造の70%、機体重量の約40%を占めており、逆に金属材料は15%程度しか使用されておらず、機体の軽量化に大きく貢献している。
ステルス機ではないが電波吸収材などにより若干のステルス性も考慮されており、正面RCS(レーダー投影面積)はパナビア・トーネードの1/4以下で、同世代機のF/A-18E/Fスーパーホーネットやラファールよりも低く収まっている。これは非ステルス機としてはヘッドオン時のステルス性が最も高いという事だが、兵装の機外搭載などを考えるとやはりステルス機には及ばないだろう。
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コクピット
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コクピットには広視野(35度×35度)のホログラフィック式HUDと3基のアクティブ・マトリックス式液晶表示装置による多機能ディスプレイを搭載する。
多機能ディスプレイにはシステム情報、武器情報、デジタルマップ、レーザー目標指示ポッド出力、PIRATE FLIR画像、DASS(防御支援サブシステム)情報などが表示できる。
タイフーンにはHMS(ヘルメット搭載式照準システム)も備わっており、HUDと同じようにヘルメットのバイザーに情報が投影される。ヘルメットの動きは光学式モーショントラッキングシステムによって検知され、パイロットが目標の方向を向くだけでFCSが連動し自動的に目標をロックオンする。これにより高いオフボアサイト能力を持つ次世代短距離空対空ミサイルにも対応する。ヘルメットの両脇には第3世代ナイトビジョンが搭載され、昼夜問わず全天候でパイロットは良好な視界を得ることが出来る。
DVIと呼ばれる音声認識システムも備えており、約200の語の語彙と95%以上の認識率を持ち、例えば燃料の状態などシステム情報を音声で問い合わせることができ、音声で回答が得られる。他にもレーダーモードの変更や無線機の選択などそれほど重要でない26のタスクを音声によって行うことが出来る。勿論音声認識を使用しなくても操作は可能だが、音声認識を使用することでパイロットの負担を減らす事が出来るという。
航法システムにはLN-93EFリングレーザージャイロによるINS(慣性航法システム)とGPS(全地球測位システム)、TERPROM(航法用地形プロファイル・マッチング・システム)から成り立っている。
TERPROMはマイクロ波を利用した電波高度計から地形情報を読み取り、あらかじめコンピュータにセットしてある地形情報と照合することで設定された経路に沿って飛行するシステムである。
シートはマーティンベーカー製MK-16A射出座席を備えており、高度ゼロ、速度ゼロからでも脱出できる、いわゆるゼロゼロ射出座席である。脱出後30分の緊急酸素供給が行われる。
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エンジン
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エンジンはEJ200ターボファンエンジンを二基搭載する。このエンジンはバイパス比が0.4:1と非常に低いため、ターボジェットエンジンに近い高速飛行に適した特性を持っている。推力はドライ時60kN、A/B時90kNと、F-15などに搭載されているF100-PW-100よりも低いのだが、推力重量比がF100の7.8に対して8.8と高い。
これらの要素によりタイフーンではアフターバーナーを使わずに超音速巡航が可能となり、長時間の超音速飛行が可能となった。この能力はスーパークルーズと呼ばれており、タイフーンではアフーターバーナー無しで空虚重量時マッハ1.5、全備重量時マッハ1.3での飛行が可能である。
EJ200は将来的にはさらなるエンジン出力の増加や、三次元推力変更ノズルの搭載なども考えられているという。
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センサー
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レーダーはECR90 コヒーレント型Xバンド(8-12GHz)マルチモードパルスドップラーレーダー、通称「キャプター」が搭載されている。最新世代戦闘機ではアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーの装備が主流となりつつあるが、タイフーンでは実績と信頼性、そしてコストの点から、機械式アンテナを使ったレーダーの採用に至った。
このレーダーはF/A-18に搭載されるAPG-65の2倍の出力を持つ強力なレーダーで、戦闘機サイズで160km、輸送機サイズで370kmで探知し、20個の目標を同時追尾出来るという。基本は長距離空対空、短距離空対空、空対地の3モードで、さらにいくつかの細かなモードがある。
空対地モードでは、リアル・ビーム・マッピング(RBM)、地上移動目標識別(GMTI)、地形回避(TA)、合成開口レーダー(SAR)などを有している。合成開口レーダー(SAR)モードは三次元地図画像を作り出す機能で、キャプターでは初期の物で解像度が1m、後期型(トランシェ2以降)で解像度0.3m、と非常に高精細なグラウンドマッピングが可能。
キャプターは従来型の機械動作式アンテナのレーダーだが、これの後継となるAMSARと呼ばれるアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーも開発されているという。
タイフーンのもう一つのセンサーとしてコクピット前方左側面にPIRATEと呼ばれる装置が取り付けられている。これはPassive Infra-Red Airborne Tracking Equipment(パッシブ赤外線機上追跡装置)の略でFLIR(前方赤外線監視装置)とIRST(赤外線捜索・追尾システム)を併せ持ったシステムである。
PIRATEは3~11μmの波長を使用した赤外線センサーを用いて航空機を捜索、追尾する装置で、レーダーのように自ら電波を出さないため、逆探知される恐れがない。標的がアフターバーナーを使用しているなど、赤外線放射の大きい場合最大で145kmで探知できるという。
複数目標追跡(MTT)、単一目標追跡(STT)、単一目標追跡識別(STTI)などの機能があり、複数目標追跡モードでは50km以内の200目標を同時識別できるといわれる。
PIRATEの出力画像はヘッドアップディスプレイやヘッドマウントディスプレイによって視界に重ねて表示したり、多機能ディスプレイに表示することが可能だ。
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武装
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タイフーンは13の武器搭載ステーションを持ち、対空、対地、対艦兵装や増漕、各種ポッドを最大6500kg搭載可能で様々な任務に対応できるという。
空対空兵装は定番のAIM-9サイドワインダー、AIM-120AMRAAMに加え、次世代空対空ミサイルのASRAAM、IRIS-T、ミーティアの搭載が可能である。
ASRAAMとIRIS-Tはそれぞれイギリスとドイツが開発した次世代短距離空対空ミサイルで、タイフーンのヘッドマウントディスプレイとの組み合わせで非常に広範囲を攻撃することが可能となり、肩越しに攻撃することもできるという。
ミーティアはヨーロッパ共同開発の長距離空対空ミサイルで、AMRAAMと同程度のサイズながらロケットエンジンとラムジェットエンジンの併用によりマッハ4の飛翔速度と100km以上の射程を実現している。
イギリス防衛評価研究所(DERA)の試算では、これらの次世代空対空ミサイルなどによりタイフーンの空対空戦闘能力はF-22に次ぐ高い評価を得ている。
空対地兵装はトランシェ2以降から順次運用可能兵装を追加しており、通常爆弾はもちろんのこと、レーザー誘導爆弾やGPS誘導爆弾JDAM等の精密誘導爆弾、最大射程400kmを誇るストームシャドウ巡航ミサイル、スタンドオフディスペンサーなどのスタンドオフ兵器、その他にも対戦車ミサイルや対レーダーミサイルが運用可能になるという。
固定兵装としてマウザーBK-27 27mmリヴォルバーカノンを搭載している。その名の通り拳銃のリボルヴァーのように機関部のみが回転する単砲身の機関砲で、ガス圧駆動式により毎分1700発の連射速度を持っている。
米国製戦闘機で一般的なM61バルカン砲が毎分6000発の連射速度を持つことを考えると、BK-27はかなり少なく感じるだろう。しかし、バルカン砲は構造上連射速度が安定するまでに時間が掛かるため、短時間のバースト射撃がメインの航空機では不利であり、実際最初の0.5秒間に叩き込める弾量はM61よりもBK-27の方が2倍多いという。
アメリカの新型戦闘機F-35Aへの搭載も検討されていたが、結局新型のGAU-22/A 25mmガトリング砲が採用されている。
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防御システム
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タイフーンにはDASS:Defensive Aids Sub-System(防御支援サブシステム)という自己防御システムが備わっており、これにより高い生存性を実現している。
DASSはレーダー警戒受信機(RWR)、ミサイル接近警報装置(MAW)、レーザー警戒装置(LWR)からなる警戒センサーシステムと、チャフ・フレアディスペンサー、曳航式デコイ、ECM/ESMポッドからなる対抗手段によって構成されており、それぞれがコンピュータによって管理され最適な防御手段を取ることが出来る。
特に曳航式デコイは相手レーダー波を解析し、疑似反射波を発信することで相手レーダーに対する囮となる。これにより近年では回避が困難になっているECM耐性の高いレーダー誘導ミサイルに対しても効果的な欺瞞が可能になる物と思われる。タイフーンの曳航式デコイは光ファイバーをケブラーで包んだ100mの曳航索を持っており、使用後に回収することが出来るため何度でも使用可能だ。またポッドには2つの曳航式デコイが内蔵されており、1つ目が撃墜されても即座に2つ目を展開することが可能である。ちなみにこの曳航式デコイは現在イギリス空軍機のみが装備している。
URL:http://www.geocities.jp/eaglet_f15/MILITARY/EF2000.htm
自衛隊がF-22にこだわる訳は? iii_kunta_kinte_iiiさん
自衛隊がF-22にこだわる訳は?
老朽したF-4の代わりに生産中止された一機200億円もするF-22を、アメリカに頭を下げて購入する理由がわからりません。どうしてでしょうか?
F-22の評価は高く申し分ないとは思いますが、戦争が勃発する可能性は低いしお値段からするともったいないような気がします。F-35、ユーロファイターなら80億円なので2機買えますが、スティルスや航続距離で日本国土防衛には向かないのでしょうか?
質問日時: 2009/6/9 12:20:42
《中略》
poweredbyhonda07さん
戦争の可能性が低いという事ですが、中国は近年日本の二倍以上の軍事費を費やし、結果21年間連続で軍事費が二桁の伸び率です。(引用ですが)21年前の軍事予算が1兆円だとしたら15%の増加を繰り返すと約19倍の19兆円になります。
そしてとうとう世界第二位の軍事大国になってしまいましたし、日本ですら所有してない空母までもあり、10年以内に合計4隻保有する予定です。さらに核兵器、原子力潜水艦も配備して台湾と日本を狙っていると言われています。
F-15より強力なSu-27、Su-30を含めた戦闘機を日本の数倍所有し(空軍だけで2000機、軍人38万人)、自衛隊内でも、中国独自生産のJ-10ですらF-16と同等と言われていて兵器の近代化のペースは非常に早く、すでに中台海峡は中国圧倒的有利、さらに周辺先進国への重大な脅威となりつつあるという判定を下しています。
さらに実際、中国の首脳が太平洋をアメリカと分割統治しようとアメリカに打診している事実が発覚したこと、近年では日本の領空侵犯がすごい勢いで増えており、年に数百回も侵犯しこちらのスクランブル発進までの所要時間、手際の良さ、レーダー範囲を探っていること、アメリカの最新鋭潜水艦のデータを盗もうとしていたスパイが次々と逮捕されている現状も考慮に入れると、戦争が遠ざかっているとは思えませんし、遠ざけるためにも抑止力が必要です。
そして実際に戦争になった場合日本は島国なので、制空権を確保するということは戦略上非常に重要な意味を持ちます。実際に事が起きてからでは遅いのです。今からでも完全配備は約7年後と言われています。
そんな中、F-22は現在世界最強クラスのF-15が5機一度に相手をしても勝てない機体です。
実際の模擬戦闘でも、
「F-15を相手として100戦以上行われた模擬戦闘で無敗」
「アグレッサー部隊のF-16が300回もの模擬戦闘出撃を行ってついに一度もミサイルの射程内に捉えられなかった」
「F-22のパイロット4人をF-15に乗せて1対4の模擬格闘戦を行い4機を全滅させた」
等など、数々の驚くべき功績があります。
もちろん無敵ではなくミサイルに捕捉されたこともあります。ですがそれはあくまで接近戦です。接近戦に持ち込むまでが難しいのです。
F15・F16・F18と、F22による模擬空中戦では合計241機撃墜されたが、F22はたった2機しか墜落しませんでした。ですから他のあらゆる機体を100機集めても一機撃墜できるかどうかというレベルです。
F-35は推力変向ノズルを備えていないので空中格闘での機動性では22に劣り,万が一目視で捕捉されると逃げようがないでしょう。それにしょせんF-35はF-16やハリアーの後継機です。
そしてF-22は独自のAN/APG-77レーダーを装備しているので探知範囲が段違いです。捕捉範囲はF-35の1.5倍です。
つまり分りやすく言えば、ガンダムとジムのような違いです。でもそもそもF-22相手ではレーダーで捕捉して接近戦に持ち込むことすら難しいので、ガンダムより強いといえます。
強いて言えば、νガンダムですかね。つまり、こちらが向かっていく前にどこからともなく遠距離からファンネルでやられてしまう感じです。
ですから例え250億円でも安いです。F-35が2機買えたところで全く役に立ちません。
高いと言っても国民が1人当たり12000円の定額給付金を我慢しただけで80機にも及ぶF-22が買えてしまいます。
さらに、第二次大戦で良く分ったかと思いますが、戦争で一番大事なのはパイロットです。熟練パイロット一人を作るのにどれだけの時間と費用と場所と資材(訓練用の機体も)が必要か。ですから熟練パイロットを守るという意味でも、撃墜されにくいというのは重要です。
そして日本は南北に長いのでどの基地からでもすぐに戦闘区域へ直行できるよう航続距離が長い機体が必要です。
さらに日本製の高性能レーダー等のハイテクデバイスを積むにはある程度大型の戦闘機が必要です。F-35は機体が小さく、兵装も貧弱で積載可能な量が少なく、航続距離も短い上に最大速度、戦闘能力も高くないので段違いです。
専守防衛に徹しないといけない日本の事情としては尚更防御力や戦闘継続時間が長い機体でなければいけませんしね。
そしてF-35等は世界中のあらゆる国で配備される予定の機体でいわば低コストの普及機です。
採用国はノルウェー、トルコ、オランダ、イタリア、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイツ、イスラエル、韓国等です。戦闘能力が把握されやすいのでそういう意味でも日本とアメリカのみのF-22とは段違いです。
ですから精神的脅威を与えるのにも十分です。
そんな中、F-22は今後長年にわたりダントツの世界最強の戦闘機として君臨できる可能性を秘めた、まさに最強の次世代機なのです。
編集日時:2009/6/9 17:16:33
URL:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1227066297?fr=shopping_search
この記事へのコメント
日比野
確かにバイスタティック・レーダーを使えばステルスは無効になりますが、送信と受信のレーダーそれぞれで同期を取る必要があり、また送信と受信のレーダー波の交点しか探知できない及び受信レーダーの有効範囲が狭くなるなど、実運用上での課題がまだ残っています。また、空戦においても迎撃側の戦闘機とバイスタティック・レーダーをリンクさせる必要があります。
これらの課題に対して、GPS衛星による同期や送信レーダを増やしたり、受信ビームのをデジタル処理(DBF)を行なうなどの対策がありますが、こうした高度な技術を持ち、かつ実運用レベルにまで持っていける国がどれほどあるだろうかと考えると、実空戦のレベルではF22の優位はしばらくは動かないと考えます。
また、アメリカが今だにF22を輸出禁止にして解かないのも、それだけF22の優位性を自覚しているからだと思います。
柴崎力栄
Percomboy
「まるで、高レベルニュータイプパイロットを相手にしているかのように(F-22の相手が)何もできないうちにやられる」って感じで。
村石太キッド&アジア系
世界平和を 願います。政治研究会(名前検討中