諸葛孔明の八卦の陣の本質はゲリラ戦法
本日から、日比野庵は通常営業再開いたします。今日は軽い話題&ただの感想エントリーです。
先日「レッドクリフⅠ」を遅ればせながらDVDでみた。
一言でいえば、三国志演義を更に演義にしたような感じ。三国志演義[演義]というところか。
長坂の戦いに関羽がいるは、張飛の長坂橋仁王立ちも無いし、孔明と周瑜が最初から仲良かったり。三国志ファンには不満が残る作品かもしれない。
戦闘アクションシーンは、ハリウッドをバリバリ意識したワイヤーアクションチックなもので、魅せはするけれど・・・という印象。
それでも、スケールの大きさは堪能できたし、キャストの年齢を当時の登場人物に近付けたというだけあって、見た目の感じは良く伝わってきた。あの集団にあって、孔明と孫権は随分と若造に見えたんだな、と。
一番見た甲斐があったと思ったのは、クライマックスの八卦の陣。
八卦の陣は孔明が得意としたとも言われているけれど、具体的にどういうものかよく分かっていない。それをああいう解釈で映像化したのには目を見張らされた。
本当に孔明の八卦の陣がああだったかどうかは分からないけれど、仮にそうだったとしたら、八卦の陣の本質はゲリラ戦法にあると思えた。
敵を八卦陣の奥深くに誘いこんで、内部の方陣の間の通路を兵士で閉じたり開けたりすることで、敵を小単位に分断包囲して、後は寄ってたかって殲滅する考えは各個撃破の定石に沿ったもので合理的。だけど、一番の肝は門の開閉によって相手を包囲すると同時に死角から攻撃できるということ。
相手の突撃を受ける正面はあまり頑張らずにじりじりと後退して、相手の進撃速度を鈍らせさえすれば良く、そのすきに横と後ろを包囲して死角から叩けば一番味方の被害は少ない。
そして、予想もしなかった箇所の門を開いて、突撃を掛ければ相手は大混乱に陥るは必定。いつ何処から攻撃してくるか分からないというゲリラ戦法の一番の強みを正規軍の陣立てとして作り上げてしまう所に孔明の孔明たる所以を見る思いがした。
・・・ただの思いつきです。
コラム・レポート J・ウーの「三国志」前半の「レッドクリフ」は圧巻
【yokoso銀座キネマ館】10月18日より東京国際映画祭が開幕する。2008年のオープニングは「三国志」の前半のクライマックスのひとつである赤壁の戦いを描いた「レッドクリフ パート1」である。監督は香港ノワールの巨匠で、ハリウッドで活躍しているジョン・ウー(呉宇森)だ。
ジョン・ウーが、映画化では常に難航する「三国志」に挑戦し、100億円ともいわれる制作費を投入した鳴りもの入りの作品である。しかも内容が盛りたくさんなのか、1本にはまとまらず前後半2本の映画となり、今回上映されるのは前半部分のパート1だけである。
2007年のオープニング作品は、邦画の「ミッドナイト・イーグル」だったが、作品の出来含め、今ひとつ盛り上がりに欠けた感が強かった。そういう意味で「レッドクリフ」は、映画祭オープニングにふさわしい大作となっている。
「三国志」を原作として、後編の「パート2」は2009年に公開される予定だ。 キャストの目玉は、周楡(しゅうゆ、175-210)役のトニー・レオンと、諸葛孔明(しょかつこうめい、181-234)役の金城武(かねしろ・たけし)であろう。この2人が手を結び、宿命の強敵である曹操(そうそう、155-220)軍と赤壁で対決するのが、ストーリーの柱になる。
どちらかというと優男(やさおとこ)の2人だが、うまく役柄にはまっている。ジョン・ウーは、役柄の実年齢と役者の年齢を合わせることを、キャスティングでは重視したと言っている。
一見若過ぎるように思える金城武の孔明だが、赤壁の戦い時はまだ30歳前後だったのだ。また「三国志」のメインキャラクターである3人、劉備(りゅうび、161-223)、関羽(かんう、?-219)、張飛(ちょうひ、?-221)も、それぞれが見事に原作のイメージを具現化した姿で登場してくる。
「レッドクリフパート1」の1場面。稀有のヒール役である曹操含め、孔明や周楡など魅力的なキャラクターを造形している。日本で言えば関が原の合戦のように、権謀術数を使って敵味方が分かれていくのが前半の見所だが、次々に登場する登場人物の力によって、大作感のあふれる盛り上がりを見せていく。
複雑な人間関係と、バックストーリーが重なる「三国志」の世界を、どうやって観客に説明し、ストーリーに引き込んでいくのか、大変気になっていたのだが、ジョン・ウーは冒頭から見せ場を作ることで、上手に観客を映画に乗せていくのだ。
映画の冒頭は、いきなり「三国志」の見せ場の一つである劉備の家臣である趙雲(ちょううん、?-229)が、劉備の子供を戦場から救い出すシーンから始まる。黒沢明(くろさわ・あきら、1910-1998)監督の「七人の侍」を参考にしたというジョン・ウーの演出は、騎馬(きば)と槍(やり)の戦闘シーンで素晴らしい冴(さ)えを見せる。
日本で行われた舞台あいさつに出演した左からリン・チーリンさん、チャン・チェンさん、トニー・レオンさん、ジョン・ウーさん、金城武さん、中村獅童さん。 大人数の兵士によるモブシーンも見事だが、ジョン・ウーは香港のフィルムノワール出身の監督だけに、得意なのは1対1の対決シーンである。前述の趙雲や張飛、関羽の戦闘シーンではふんだんに1対1の対決を盛り込み、ジョン・ウーならではの見せ場が作られている。
後半が待ち遠しくなる「レッドクリフパート1」は11月1日の公開である。後半の公開は、世界的に2009年になる予定である(敬称略。映画業界に精通しているハチさんが「銀座キネマ館」の支配人として不定期に映画の話を書きます)。
注:「周楡」の「楡」は正しくは「木へん」ではなく、「王へん」です。
URL:http://www.ginzanews.com/report/891/
この記事へのコメント
mayo5
西部劇でカスター将軍がインディアンに全滅させられたシーンを思い出しましたから。もちろん、陣形はこのように多重の陣ではなく、真中だけですけれど。
でも、攻め方を見ていると、インディアンの方がはるかに頭が良いと思いました。レッドクリフは超駄作と思い、PART2を見に行きませんでしたが、この戦闘シーンも大きな理由の一つです。
日比野
確かに八卦の陣があのとおりだったかどうかは疑問が残るところですが、考え方は面白いと思いましたね。実際は地形を利用して、あれに近い形を作った可能性はあると思います。相手の死角から攻撃するのはいつの世も有効です。
映像そのものはエンターテインメントだったのは否めません。マトリックスから、どうもあの有り得ない動きのアクションやら戦闘シーンやらばっかり流行って食傷気味ですね。