ぶらさがりクエスチョン(党首討論についての雑考 前編)
党首討論についての雑考を。全2回シリーズでエントリーする。
5月27日、麻生総理と鳩山民主党代表との間で党首討論が行なわれた。
話が噛み合わないとか、どちらが勝ったとか負けたとか喧しいけれど、元々党首討論は勝ち負けを云々するものじゃない。
党首討論はイギリス議会のクエスチョンタイムをモデルにして、1999年11月から行われるようになった。
イギリスのクエスチョンタイムは、イギリスの議会における議事日程のひとつで、大臣などの役職には就いていない議員が、大臣、特に首相に質問できる時間のことをいう。開会中は毎日行われることになっている。
クエスチョンタイムは与野党の議員が質問可能で、答弁する大臣は答弁の義務を負っているけれど、あくまでも「質問の時間」であり「討論の時間」ではないという位置づけとなっている。とはいえ、実際は質問者と回答者が自らの政策をアピールしていくために、実質的には討論のような状況にはなる。
これを真似たのが日本の党首討論。だけど、質問に対して大臣なり首相なりが毎日答えるのなんて、党首討論が行なわれるずっと前から行なっている。記者によるぶら下がり会見がそれ。今でも毎日、時には1日2回行なっている。
ぶら下がり記者に代わって、与野党の新人議員や2回生議員あたりがぶら下がり会見で質問するのが、イギリスのクエスチョンタイムだというイメージでほぼ間違いないだろう。
だとすればいっそのこと、本当にぶらさがり会見は記者に質問なんかさせずに、閣僚外かつ閣僚経験のないの議員だけが質問できるようにしておいて、記者たちはそれを聞いたとおり報道するようにしてはどうか。
特に新人や2回生議員が総理に直接質問できて、それが大きく報道されるようになれば、この元祖クエスチョンタイムは、議員を育てるという意味においてとても大きな役目を果たすに違いない。
もし議員が、なぜ北朝鮮は核実験を行ったと思うかなどと、総理が答えられる範囲を超えた質問をしようものなら、何を聞いているんだ、と有権者や支持母体に呆れられ非難される。あまりに酷いと選挙の票にも響いてくるから、とぼけた質問なんて絶対できない。かといって、専門的な政策の細かいことを聞いても、有権者にはちんぷんかんぷん。
だから新人議員といえども、誰にでも分かりやすくかつ核心をつく端的な質問が要求されるようになる。そしてそんな質問ができれば、有権者にも、あの議員はなかなか勉強しているね、となるし、また質問を受ける総理自身も彼はなかなか見どころあるな、と覚えてもらえる。これはきちんと回答しなきゃならないなとなる。
互いに緊張感が生まれ、相乗効果が生まれる。政治がより身近なものになるだろう。
木村たかひで 衆議院議員 国会短信 ■国会報告2008/12/1号■
《前略》
◆党首討論◆
平成12年1月に召集された第147通常国会から、衆・参両院に国家基本問題調査会が、常任委員会として設置され、その合同審査会において「党首討論」が行なわれることになりました。同国会で、小渕・森両総理に合わせて6回の党首討論がおこなわれて以降、福田総理までに合計44回開催されています。
今年は4月9日に行なわれて以来開かれず、総理が就任直後から再三にわたり、小沢民主党党首へ開催を呼びかけ続けた末に、会期末ぎりぎりの28日(会期は11月30日まで)になって党首討論が実現しました。
党首討論がおこなわれるようになった経緯は、憲法には議院(本会議・委員会)での発言権は、大臣のみ規定されています。政府委員(各省庁の官吏)の出席は国会法で、議長の承認が必要です。しかし、実際の委員会の審議では政府委員に対する質疑が中心となり、国民に対して直接責任を負わない政府委員が、本来政治家が担うべき政策論議の枢要な部分に大きな影響力を持っていました。これでは「議員同士の政策論争の場であるはずの国会審議を形骸化させている」との批判がたかまり、平成2年には各党から議会制度協議会に議員同士の討論を重視すべきとの諸提案がなされました。
-小沢新生党代表幹事(当時)の政府委員廃止構想-
平成5年に、当時細川内閣与党の小沢新生党代表幹事が、政府委員制度の廃止構想を発表し、その後、新進党で政府委員制度に代わる総理大臣・その他の国務大臣の補佐制度充実の立案作業が進められました。
小沢氏は自由党党首として、平成10年に自・自連立で与党に復帰しましたが、当時の小渕総理(自民党総裁)と小沢党首との連立協議の前提条件が、政府委員制度の廃止と副大臣・大臣政務官の設置でした。
その後、各党の実務者協議において日本と同様な議院内閣制度のもと、政治家同士が活発な議論を戦わせているイギリス議会の実情を視察し、同議会で行なわれている、与野党の党首間討論「クエスチョン・タイム」を参考に、日本での党首討論の制度が出来上がりました。
先月末、麻生総理は、APEC(エイペック)へ参加し、外遊先で、重ねて党首討論の開催の必要性を主張しましたが、民主党小沢党首は会期末ぎりぎりまで、応じる気配を全く見せませんでした。 いわば、小沢党首自身が構想し実現した「党首討論」を、解散に向けた政局を優先して封殺することは、制度導入の当事者として反省すべきと思います。
党首討論の導入や副大臣・政務官制度により、委員会での官僚による答弁を激減させ、立法府が、本来あるべき国民に選ばれた政治家の議論の場となりました。会期も延長され、党首討論の機会も増えます。会期中は、定例日に党首討論が開催されることを望みたいと思います。
《後略》
URL:http://www.kimutaka.org/melmaga/db20081201.html
クエスチョンタイム 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クエスチョンタイム(英:Question Time)は、イギリスなどの議会における議事日程のひとつで、大臣などの役職には就いていない議員が、大臣、特に首相に質問できる時間のことを指す。議会の開会中は毎日行われ、首相への質問は少なくとも週に1度は行われる。
▼概要
クエスチョンタイムでは、与野党の議員が質問でき、答弁する大臣は答弁の義務を負う。 与党議員からの質問は、概して、政府の政策の長所を説明させ、政府の正しさをアピールするようなものになることが多い。一方、野党議員からの質問は政府を追及し、失政を認めさせたり、批判したりするようなものとなる。
▼イギリスにおける運用
イギリスにおけるクエスチョンタイムは、議会の開会中は毎日、1時間が設定されている。
例 2008年10月13日(月)~16日(木)
13日(月) - 14:30~15:30 児童・学校および家庭大臣への質問
14日(火) - 14:30~15:30 コミュニティーおよび地方政府大臣への質問
15日(水) - 11:30~12:00 北アイルランド大臣への質問。12:00~12:30 首相への質問
16日(木) - 10:30~11:30 イノベーション・大学および職業技能大臣への質問
このうち、水曜のクエスチョンタイムの後半、12:00~12:30に行われる「首相への質問」が、いわゆる党首討論である。
このようにイギリスにおけるクエスチョンタイムは、党首討論と同義ではない。むしろクエスチョンタイムは、知名度のない議員が活躍する機会としての意味合いが大きい。党首討論はクエスチョンタイムの中の一部である。
また、あくまでクエスチョンタイムは「質問の時間」であり、「討論の時間」ではない。ゆえに議員が質問し、首相が答弁するのみである。その中でお互いが自らの政策をアピールしていくために、実質的には討論のような状況になる。
URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0
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