エコカーと資源について、全2回シリーズでエントリーする。
新型プリウスが爆発的に売れているという。発売直前の時点で先行予約は8万台を超え、発売後1週間で更に受注が伸びて、11万台を突破した。あまりの売れ行きに生産が追いつかないほどだという。
エコカー減税の効果ももちろんあるのだろうけれど、ハイブリッド等の環境技術はますます注目され、購買意欲に一役買っているのは間違いない。
経営破産にが囁かれるGMにトヨタ自動車がハイブリッド技術を供与する検討に入ったと報道されている。
今年の1/29のエントリー「トヨタの野望」で、そのうちトヨタは環境技術の支援・協力をGMに対して行なって、GMエンブレムのトヨタ車を作ることで、日本車が売れなくなるリスクをヘッジするのではないかと言ったことがあるけれど、ほぼその通りの展開になってきた。
そんなことができるのも、次の環境技術の目途が立っていて、技術的優位を保てる見込みがあるからだろう。
今年の夏には、三菱自動車の電気自動車「アイミーブ」が正式発売される。
世界中にハイブリッド車が普及するころには、日本の自動車メーカーは、燃料電池車や水素自動車などで依然として技術的アドバンテージを確保している可能性は高い。
電気自動車が普及するのは良いとしても、その肝心の電池を製造するに為の資源もまた必要になってくる。特に電池に必要不可欠の白金、リチウム、レアアースなどのレアメタルなんかは、今後ますます重要が伸びることは確実。
たとえば、電池に使われるリチウムは炭酸リチウムとして年間7~8万t産出している。そのうちチリ北部に位置するアタカマ塩原にある塩の鉱床でその多くを生産していて、年間4~5万tにも及ぶ。
もしも、世界の自動車年間生産台数にあたる6000万台にプリウス並みの小型電池を搭載するようにしたとしたら、炭酸リチウムの年間需要は現在の生産量の約6倍にあたる45万tになるという試算もある。
炭酸リチウムの価格は04年には、1Kgあたり1ドルだったものが05,06年で5ドルと超えているという。
これからますます資源獲得競争が激化するのは目に見えている。


トヨタ自動車は26日、新型ハイブリッド車(HV)「プリウス」の受注台数が25日までに11万台を突破したことを明らかにした。18日の発売の時点で先行予約は既に8万台を超えていたが、1週間でさらに受注を伸ばし、HV人気を改めて裏付けた形だ。
エコカー減税も追い風になり、販売店は活況を呈している。愛知県内で63の新車販売店を持つ愛知トヨタ自動車(名古屋市)では、「異例中の異例というくらい注文が入っている」(幹部)という。発売後初めての週末だった22-24日の3日間で8000組が来店。それまで付き合いのなかった客が約半分を占めるという。生産が追いつかないため、今注文しても秋以降の納車になる。
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090526-00000202-jij-bus_all

トヨタ自動車が、経営危機に陥っている米ゼネラル・モーターズ(GM)に、エンジンとモーターを併用して走るハイブリッド車の中核技術を供与する検討に入ったことが24日、分かった。
GMは近く米連邦破産法11章の適用申請に踏み切るとの観測が強まっているが、トヨタはGM側から要請があれば、破産法適用後でも供与に応じる方針だ。
トヨタが供与を検討しているのは、エンジンとモーターの動きを制御して燃費を向上させる特許技術で、「プリウス」などに搭載している。GMが独自開発したハイブリッド技術よりも燃費性能は格段に優れる。
GMが経営危機に陥った原因の一つは、環境技術で後手に回り、昨年前半までの原油高でガソリン価格が高騰し、燃費が悪い大型車を中心に販売が急減したためだ。このため、トヨタは自社のハイブリッド技術をGMに供与して経営再建を側面支援する。この結果、トヨタのハイブリッド技術が、事実上の世界標準になるメリットもある。
また、米自動車メーカーが相次いで経営危機に陥ったことで、日米自動車摩擦が再燃する芽を摘む狙いもある。
トヨタとGMは資本提携はしていないが、米国で小型車を合弁で生産するなど協力関係にある。
最終更新:5月25日3時4分
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090525-00000072-yom-bus_all

持続可能なモビリティーに向けた次世代自動車として、燃料電池車とともに世界の自動車会社による各種電気自動車の開発競争が激しくなってきた。いわゆる電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、そしてプラグインハイブリッド車(PHEV)である。
いずれの車種もバッテリーとしてリチウムイオン電池を搭載する。したがって、このリチウムイオン電池の開発が次世代自動車のカギを握っているわけだ。そのため、自動車会社各社は電池の開発をめぐり関連企業との戦略的パートナー関係を構築するなど、その動きは世界中で活発化してきている。
現在のハイブリッド車には、ニッケル・水素電池が使われている。しかし、エネルギー密度が低く、電池による走行距離はわずか十数キロメートルであるため、エネルギー密度が高く、航続距離が長い、しかも安全性に問題がない電池の開発が急がれている。それがリチウムイオン電池である。この電池は、既にラップトップのPCや携帯電話などポータブルの電子機器には多く使われているが、各種電気自動車用には、PC用電池の100倍の大容量高性能電池が必要でありいまだ開発途上にある。
さて、この電池に必要なリチウムの資源事情を見てみよう。
2005年における世界のリチウムメタルの生産量は2万1400トンであった。そのうち主要生産国はチリが8000トン、オーストラリア4000トン、中国2700トン、ロシア2200トンそしてアルゼンチンが2000トンである。リチウムメタルの埋蔵量は、世界トータルで1340万トンのうち、未開発のボリビアが540万トン、生産量で最大のチリが300万トン、アルゼンチン200万トン、ブラジル91万トンで、南米4カ国で、実に84%の1131万トンを占める。
中国は110万トンで、残りは数10万トン規模である。燃料電池車に必要な白金が南アフリカ共和国に、そして石油が中東に偏在していると同じようにリチウムも南米に極端に偏在し、地政学的な不安定性を抱えているのである。埋蔵量の1340万トンについては、米地質調査所(USGS)によると1100万トンと、より低く評価されている。
電池に使われるリチウム資源は、塩湖に賦存しており、主として炭酸リチウムとして産する。炭酸リチウム(Li2CO3)としての埋蔵量は、USGSによると5800万トンとされている。世界のリチウム生産量のうち電池に使われる炭酸リチウムとしては約75%で、年間7万~8万トンである。
主な産出国別にみると、チリ北部に位置するアタカマ塩原(Salar de Atakama)にある塩の鉱床は炭酸リチウム、その生産量は年間4万~5万トンである。未開発ではあるが埋蔵量ベースで世界の50%近くを保有するボリビアの資源は南端のウユニ塩原(Salar de Uyuni)にある。アタカマとウユニいずれも太古の時代には内海であった塩田(salt pan )で、現在標高3000メートル以上の高地の極めて厳しい自然条件の下にある。
ボリビアのリチウム資源開発はこれまで何度か試みられたが実現していない。それは、最近の政治情勢すなわちモラレス大統領が2006年5月に石油・天然ガスの国有化を宣言して、資源ナショナリズムと反米をむき出しにしてきているなど、西側鉱山会社にとって開発意欲が全くわかない事情があることによる。
いずれにしても、ボリビアの現政権ではウユニの資源開発は許可されないだろうと見られている。やはりリチウム資源保有国のアルゼンチンにおいても、国際的鉱山会社は地域住民との間の軋轢が増してきているため、ボリビアと同じような政治・社会情勢になり、鉱山会社の資産が国有化されるのではないかと恐れを抱いている。
一方、中国では、チベットと隣接の青海において5000トン能力で生産が間もなく始まる。そしてチベットの塩湖においても青蔵鉄道完成とともに小規模の生産が始まった。しかし、中国も当然ながらリチウム資源を戦略物資として温存し、輸出禁止にしてくるはずだ。中国には燃料電池に必要な白金がないから、首脳部も次世代自動車はEVでいくとはっきり言っている。
それでは、リチウム・イオン電池による電気自動車を世界の主流とした場合に、炭酸リチウムの需給はどうなるのか。電池の容量kWh(キロワット時)当たり1.4~1.5キログラム必要であるから、世界の自動車生産量年間6000万台をPHEVにしてプリウス並みの5kWhの小さな電池を搭載したとしても、炭酸リチウムの年間需要量は現在の生産量の約6倍、45万トンになる。
しかし電池容量は現実的には8kWhは必要と思われるので約10倍の72万トンとなる。このような需要量を賄うことは、現在のような極めて小規模な生産しかできない鉱床からは考えられない。その上、10億台にも達する勢いの世界の自動車保有台数を考えるとすべて5KWHとしても100倍にする必要がある。
炭酸リチウムの価格は、2004年までは1キログラム当たり1ドルだったが、2005、2006年で5ドルを超えた。そして、ある日本の電池メーカーの買値は10ドル以上と言われている。
結論としては、今世界がリチウムイオン電池に魅せられている。
しかし、世界の自動車産業が一斉にリチウム依存に向かうと、現在われわれがオイル依存で直面しているより厳しい資源制約を受けるということである。それは、資源の極端な偏在性、強まる資源ナショナリズム、資源の採掘条件、必要な生産能力、価格高騰、そして埋蔵量などの資源事情によるものである。
要するに、ポータブルの電子機器だけならサステナブルだが電気自動車に使うとなるとサステナブルではないということである。たとえリチウムは、石油と違ってリサイクル可能としても、ピークオイルならぬピークリチウムの時期もいずれやってくるというわけである。
URL:http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20080407/152450/
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