相反する2つの立場を抱え込む自民党(政策と国家戦略について その2)
次に、自民党のスタンスについて、少し考えてみたいと思います。
昨日のエントリーでみてきたとおり、自民党は経済政策で見ると、大きく、小さな政府かつ規制緩和派と、大きな政府かつ格差是正派の二つのグループに分かれています。
しかし、「小さな政府+規制緩和」と「大きな政府+格差是正」というものは、政策としては一貫性があり、それぞれに納得できるものを持っています。昨日のエントリーで述べたように、小さな政府と格差是正が基本的に両立しないからです。
つまり、小さな政府を目指すのであれば、政府行政機能をどんどん民間に委ねるが故に、ある程度の格差は許容せねばならず、また民間の企業活動を妨げないように、どんどん規制緩和する、ということになりますし、格差是正を目指すのであれば、富の再配分を行なう機能強化が求められ、必然的に大きな政府になる、というわけです。
けれども、ある意味において、自民党は、経済政策で相反する二つの立場を抱え込むことによって、好況にも不況にも対応できる柔軟性を確保してきたともいえます。好況時には、規制緩和を進めることで民間活力を惹起し、不況時には、財政支出を増やして、景気の下支えをする、という具合にです。
自民党は戦後、殆どその政権を譲ることはなかったのですが、政策レベルでみると、かなりの部分が交代可能なのです。政権交代しないまでも、政策交代はできるという意味においてです。
その一方、相反する経済政策の考えを持つ議員を同じ党内で抱えているために、ひとつの政策を打ち出す時にも党内調整に非常にエネルギーを費やすことになり、結果として政策決定スピードが遅れてしまうという欠点を抱えています。
ましてや、麻生派のように、総理を出している派閥が少数派であったり、今の国会のように、参議院で野党が多数派を占めているような現状では、法案ひとつ通すのに、どれだけのエネルギーが必要か想像に難くありません。
そんな、バラバラの思想を抱え込む自民党が、なぜひとつの党でいられるのか。
やはり、それは「政権与党であったから」という理由が一番大きいように思われます。
どんなに理想とし、自分の政策が一番だと思っていたとしても、政権与党にならない限り、それが実施されることはありません。
まぁ、連立を組んで、政策の一部を実施させることはありますけれども、それも連立を組んだ時点で政権与党の内です。野党の立場では、国会質問で追求することはできても、それ以上のことまではできません。
けれども、自民党であれば、政治信条が多数派と違っていても、内に取り込んでいてくれますから、内部から意見をいくらでも言うことができます。国会質問のほんの僅かな時間で頑張るより、よほど影響を与えることができますね。
ですから、政治家はその理想を実現するために、政権与党に入ることを望み、与党は政権維持に努め、野党は政権をとることに終始することになります。議会制民主主義である限り、これはどうしようもない。
すると、野党が政権を取ろうとすると、どうするか。
その為には、やはり、数をそろえなければなりません。当選議員が過半数を超えれば、それで政権が獲れるのです。その為には、支持基盤を固め、増やしていかなけばなりません。こうした数が全てという原理を、良く知っていたのが、小沢一郎民主党代表代行です。
そんなときに、献金をしてくれて、民主主義のコストを支払ってくれるような支持母体があれば、喜んで受け取り、その要求を呑むことになるでしょう。当たり前のことです。
ここで、民主党の支持母体を見てみると「日教組」であるとか「自治労」であるとか、リベラル左翼系が主な母体となっています。さらには、「民団」や「部落開放同盟」もあります。傍からみると、民主党が政権を取れば、そうした支持母体に配慮した政権になるだろう、と考えるのは自然なことです。
そんな民主党になぜ、これほどまでに支持が集まっているのか。
明日は、この問題について考えてみたいと思います。
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