今日からは、少し連続シリーズで、政界の勢力分布といいますか、政策について考えてみたいと思います。全5回シリーズでエントリーします。
例によって、まずは現状分析からです。
まずはこちらをご覧ください。
これは、日経ビジネスが「第1回 日経ビジネス 経済政策アンケート~日本再浮上への挑戦~」と題した緊急アンケートを実施して、自民党、民主党の全衆院議員に対し、どのような政策を実現すべきと考えているのかを調査した結果です。
横軸が「政府のあり方」の軸で、縦軸が「市場経済のあり方」の軸です。赤い瓢箪型が自民党で、青い四角形が民主党の分布を表しています。
個人的には、外交に関するアンケートがないのが不満ではありますが、致し方ありません。ただ、このデータでも色々分かってくることがあります。それは次のとおりです。
1.自民党は、小さな政府で規制緩和派から、大きな政府で格差是正派まで広く分布していて、経済政策レベルでは、諸派の連立状態であること。
2.民主党は、比較的政治信条が似通っていて、小さな政府かつ格差是正を目指している。
ということです。
経済政策では自民党は必ずしも一枚岩ではない。これは、昨今の郵政民営化問題をみてもわかるとおり、新自由主義派と経済保守派とに分裂していますが、それは、自民党自身が元々の経済思想において、個々の議員のスタンスがバラバラであったことに起因していると思われます。
それに対して、民主党は、経済政策では意外と纏まっているように見えますが、その内容を良く見てみれば、小さな政府と格差是正を求めるスタンスになっています。これは、はっきり言って、やや共産主義的考えに寄っているのではないかと思います。
なぜかというと、小さな政府を行なうためには、政治・行政機能のかなりの部分を、民間に委託する、民営化を進めていくということを意味しますが、同時に格差是正を追求するということは、給与の差を認めないか、補助金や税金などの富の再分配による格差是正、即ち、バラマキ型の政策を行なうことを意味するからです。
小さな政府を目指して、政治・行政機能をどんどん民営化する一方で、給与に差を認めない、もしくは差をつけるなというのは、突き詰めてしまえば、働いても働かなくても同じ給料が貰えるということになりますから、結果的に社会主義・共産主義に近づいていくことになってしまいます。
また、格差是正だといって、富の再分配を強力に推し進めようとすれば、儲かっている企業や、金持ちから税金を沢山とって、そうでない人に補助金を広く与えることになります。つまり、行政機能の拡大や、増税路線に向かうことになります。
これでは、小さな政府どころか、大きな政府に向かうことになります。
したがって、民主党の経済政策は、国民に対して口当たりの良いことは言うのですが、実に矛盾した政策を目指していることになり、それを実現しようとすれば、企業に負担を強いて、誰にでも同じ額の給与を与えさせるか、補助金のばら撒きをするかという選択になるということです。
もしも、企業が、全従業員に同一給与を与えなさい、と国から強要されたとしたら、何が起こるかというと、好況のときにはまだしも、今のように、不況の状況下では、経営的に体力のない会社は、給与水準を一律に「下げる」ことによって、賃金格差を無くすことになると思われます。
誰にでも高い給与を与えれば、会社自身が潰れてしまうのですから、是非もありません。つまり、結果として、「貧乏の再分配」が行なわれるということです。
それならばと、国になんとかしてくれと要求して、国がそれに応えようとすれば、どんどんばら撒きをするしかありません。しかし、政府が富の再分配をする時には、必然的に、財源の問題に突き当たります。そのため、民主党は、無駄を省くと主張していますけれども、やはり限度はあります。
それに、完全に無駄を省いた後は何も残らないのです。なぜなら、市場のパイを増やしているわけではないからです。
そうして無駄を省いてもまだ格差が残り、それを是正しないといけないとなると、税収を増やして財源を確保しなければなりません。
税収を増やすには、景気を良くして赤字企業を減らして黒字企業を増やすか、増税するかのどちらかになりますが、いずれにせよ、税金の再分配機能を強化しなければ、格差を是正できないわけですから、行政機能が拡大してゆく。とどのつまり、行きつくところは、大きな政府だということです。
民間に共産主義を押し付けるのであれば別ですが、資本主義社会においては、小さな政府と格差是正は、基本的に両立しないのです。
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この記事へのコメント
日比野
仰るとおりですよ。国防や国益を守ることに少しも気をつかわずやってきたことで、すっかり気持ちが緩んでいるように思われます。やはり、水と安全はタダではないのです。
こんにちは