今日は、若年層かつ政治にそれほど興味のない層へのアプローチについて考えてみたいと思います。
一番のポイントは、普段の生活と政治は密接に関連しているのだ、ということを認識していただき、ひとりひとりの一票でそれが大きく変わるのだ、ということを自覚していただくということになるかと思います。
さて、現状分析からいきましょう。
1.ネット発の情報拡散ルート
まず、こちらをご覧ください。
「とてつもないアンケートが示すもの」
「『祭り』はオープンに拡散する」
「麻生太郎本購入祭りに参加した『0.1%の革新者』 」
「マスコミ悲観論への「とてつもない」カウンターパンチ」
これは、以前ネット発で起こった、「麻生総理本を買おう祭り」に関して、拙ブログでアンケートを行なった結果を、整理して考察したものです。
その目的は2つあって、
A)「ネット発の運動がどういったルートを辿って拡散していくのかの調査。」
B)「本を購入するだけで終わる「ミーハー」的な運動だったのか、それとも本を読んで総理の考えを知るという深いレベルでの運動であったのかという調査。」
でした。
回答総数が少ないという問題はありますが、一応、このアンケートから導き出された結果は、以下の4点です。
ポイント1.祭りは個人の自発的な意思によるものであり、その情報は、掲示板・ブログなどのオープンな媒体で拡散する。
ポイント2.祭りがネット展開される場合、ネットにアクセスしない人との間で、物凄い情報格差が発生する。
ポイント3.祭りに参加した人々は、全体の0.1%以下であったものの、ニュースに成り得ること。
ポイント4.祭りに参加した人々は、本を買うだけでなく、殆ど読了しており、深いレベルでの運動であったこと。
要は、ネット発の運動は、おそらくは、一部のコアな人々の間だけで行なわれているものの、非常にディープ(オタク的?)な運動である、ということです。そしてそれは、オープンな情報媒体でしか拡散しないために、ネット情報、しかも政治系のような特定分野にアクセスしない人にとっては、全く無縁のものになってしまっているということです。ディジタル・デバイドが存在している。
即ち、ネット発の運動をしているグループと、それ以外の分野の人々との間には、深い溝(キャズム)があるということです。ジェフリー・A・ムーアのキャズム理論そのままですね。
したがって、若年層かつ政治にそれほど興味のない層へのアプローチは、キャズムを越えることから始まるわけです。
2.キャズムの越え方
ムーアはキャズムを超えるには、いきなり一般市場全体を相手にするのではなく、将来的に波及効果の高いニッチ市場に焦点を絞り、新製品を投入する方法、ホール・プロダクトといわれる戦略を提唱しています。
つまり、将来の顧客のあらゆる要求に応えられる製品・サービスを用意しておいて、時期をみて投入するということです。
これを、選挙に当てはめると、どうなるか。
例えば、ブログランキングか何かで、食品カテゴリをターゲットにしたとします。そこが食品に関するブログが集まっていますから、当然、グルメな話題であるとか、どこどこの店がいいとか、健康の為にはこの食べ物がいいとか、そんな話題が中心になっていると思われます。そうした「雰囲気」に満ちたブログに、いきなり鳩山党首の献金問題とかをぶつけても、おそらく還ってくる反応は冷ややかなものでしょう。政治家の献金など、彼らの関心領域の外にあるからです。
よって、彼らに対するアプローチは、食品およびそれらに関連した話題から入ることが一番効果があると思われます。また、そのカテゴリーのブロガーと繋がりを持って、なんらかの談義や討論ができると良いかもしれません。たとえば、食品カテゴリーの中で、多くのPVを集めている、人気ブロガーの方と、コメント欄などで、談義・議論して、日本人の食をより良くするにはどうすればよいかなどで盛り上がってみる等も良いかもしれません。
昨年でしたら、毒餃子、毒インゲンなどはホットな話題だったでしょうし、今なら、食料自給率なんかも良い話題かもしれません。要は、生活に関して、内容を深く掘っていくと、結局は、政治の問題にまで行き着きますから、コメントでの議論をどんどん深めることで、その分野に関しての政治的問題に興味を持ってもらえる可能性が出てくるということです。
とはいえ、人によっては、自分のブログでそんな話題をされるのを嫌う人もいるでしょうから、そんなときには、たとえば食品なら食品の話題に関した専用掲示板を起こして、そこに食品に関する有名ブロガーに来てもらって、書き込んでもらうとか、そうした工夫をしても良いでしょう。
単に掲示板での書き込みだけですと、「2ちゃんねる」と変わらないことは変わらないのですが、書き込む人を予め絞り込んでしまうことで、議論の質を高めるということも考慮したほうがいいケースもあるように思います。なぜなら、工作員だらけの書き込みの中に、良いコメントがあったとしても、見つけるのが大変になるからです。あと、工作員のアラシ書き込みで読む気がなくなるというのもあるかもしれません。
また、掲示板への書き込みではなく、チャットで議論するとか、有名ブロガーにインタビューするとかして、その内容を紹介する形というのもアリかもしれません。要は質の高い議論と政策をリンクできるような記事を作り上げる、というのが大事です。
そうして始めて、自民党の政策なのか、民主党の政策なのか、どちらがより安全なのか、より良いのか、という議論にまでたどり着くというわけです。もちろん、これには相当なエネルギーを必要としますけれども、これが出来ない限り、真の意味での民主主義など遠い話だと言わざるを得ません。
同じことは、食品のみならず、音楽であるとか、ゲームであるとか、他の色んな分野でもいえるわけで、それぞれに対して、政治系ブログから橋をかけて、「キャズムを越える」手段を持っておかなくてはなりません。
3.ネットの向こう側へのアプローチ
さて、これまで述べてきたことは、主にネットを使用する方に対しての話が中心でした。勿論、日本の若年層のネット使用率は90%を越えていますから、これでも十分といえば十分なのかもしれませんが、いかんせん、アクセスしてくる人に対しては情報を伝えることができたとしても、そうでない人はほったらかし。いわゆる「待ちの商売」であって、あまり繁盛するやり方とはいえません。
そのためには、積極的な広報といいますか、宣伝も必要になってくると思われます。それにはどうすればよいか。
やはり、メルマガなり、携帯メールなり、相手に直接情報を届ける手段も併用して使うべきだと思いますね。有無を言わさず届けてしまう。
ただし押し付けになってはいけません。たとえば、先ほど例に出したように、食品に関する人気ブログで政治との絡みでホットな議論をしていたとして、その内容をどこかにアップする。そのURLだけをメールに貼り付けて、ここで面白い話があるよ、と紹介するとかですね。もちろんその内容は、送る相手が興味関心を持っている分野のものであるほうがよりベストです。
グルメな友達には、食の安全について、有名ブロガーにインタビューして、政策と絡めた記事を紹介する。音楽が好きな友達には、そっちの話題にする、といった具合に個別具体的なアプローチですね。そうしたことが大切だと思います。
そのためには、他の分野の有力ブロガーとの連携が必要になってくるわけですが、いまのところどうすればいいかの妙案が浮かびません。これに関しては、皆様のお知恵を拝借願いたいところです。
いずれにしましても、宣伝はするけれども、押し付けない。有名ブロガーによる質の高い記事を紹介はするけれども、強制しない。あくまでも本人に考えて貰って、判断してもらうことが大事です。生活している限り、どこかで政治と繋がっているということを知って貰うこと、そうしたことが大切ではないかと思います。
もちろん、分野によっては、自民党のマニフェストより、民主党のそれが優れている場合だってあるわけですが、それも含めて議論するのが民主主義だと思います。そうしてようやく国民が民主主義のコストを払い始めたといえるわけで、さらにその先の議論が多々あるわけです。
私が一番危惧しているのは、その先の「国の安全」の部分であって、戦争になってしまったら、そんなものは土台から崩れてしまう危険があるということです。ゆえに、今はとにかく、何が何でも国の安全が守れる体制を作ることが第一であって、その他のことはその後に考えればよいというスタンスでいます。でも、それをあらゆる人に期待するのは少々無理がありますから、少しでも政治と生活の接着点を見つける努力から始めるほかない、と現時点では考えています。
少なくとも、国民が自分の関心領域に関して、政治との接点を自覚して、自分で情報を収集して、自分で考えるようになってくれば、マスコミによる世論誘導などできなくなってくるわけです。
迂遠ではあるとは思いますが、マスコミが自身のあり方を正せないのであれば、情報を受け取る側が一段高いレベルに移行して、マスコミを置き去りにすべきだと考えています。

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pierre